第18話

「なるほどな……。ありがとう、ジン。だいたいの状況は、分かった」


用意してもらった夕食を食べた後、ルーテシアに帝国での話をした。


「いえ、俺は何もできてないです。それより、どうして皇国が帝国を襲うでしょうか?」


「そうか、ジンは皇国の歴史を知らないんだな?」


「はい。恥ずかしながら」


世間知らずで申し訳ない限りだ。


「いや、恥ずかしくなんかないさ。私もそこまで詳しくはないしな」


そう言って、テーブルの向かいに座るルーテシアは豪快に笑う。


「もう、笑い事じゃないですよ? 仮にも姫騎士なのですから、国の事は知っておいてもらわないと。あ、ジンさんはいいんですよ?」


ルーテシアの横に座った、ユーシアがそう苦言を呈する。


「すまない。説明を頼めますか?」


「はぁ、いいですよ。まず、帝国の皇帝陛下ブビンガですが、一つ下の弟がいるんです。その弟が作ったのが皇国です――」


そこでカップに入った紅茶を一口飲む。


「元々自分勝手だったブビンガは国民に嫌われていましたが、圧政でそれを黙らせました。それを見かねた弟のブルストが抗議した結果、国を追放されて皇国身をおきました。ですが、ブルストは天性のカリスマと努力で軍人から皇帝まで上り詰めたんです」


「つまり復讐ということですか?」


「そうですね。おそらくはそれが理由だと思います」


俺の結論に同意してくれる。


「だが、魔導国も加わってきな臭くないか?」


「確かにそうですね……。魔導国といえば、非魔力者を家畜にしていると噂ですし」


ルーテシアの言葉に、ユーシアは考え込む。


「つまり、手を組んでる可能性があるのか?」


「それは低いと思います」


「それはないだろうな」


二人から否定されてしまう。


「どうして言い切れるんですか?」


「魔導国が国交を開いたなんて聞いたこともないからです」


「ジン、さっきほど話にも出たが、アイツらは我々を同等に見ていない」


「つまり動物と手を組むはずはないと?」


「そうです。私達王国が共和国に加盟するのも魔導国への抵抗のようなものもあるんです」


確かに連合を組めたら、魔導国とはいえ手を出しにくいだろうな。


「ここは考えても仕方ないだろう。夕刻の報告で、帝国が落ちたと報告を受けた。これからは皇国も我が国の脅威になるだろうな」


「確かにそれは少し面倒なことになりそうですね……。そう言えばジンさんは、この後はどうされるのですか?」


「俺は魔導国に行こうと思います。ルシアを取り戻さないと」


ルシアとは色々と話し合いたいと思っている。


「私としては騎士団に入ってほしいが、止められそうにないな」


ルーテシアはそう言って、「残念だ」と呟く。


「ごめんなさい。明日にはもう出ます」


椅子から立ち上がって、深々と頭を下げる。


「頭を上げてください」


「そうだぞ、ジン。君は帝国からこの国を救ってくれたんだぞ? 胸を張って進んでくれ」


「ユーシア、ルーテシア本当にありがとう。二人と出会えてよかった」


「それは、私達のセリフです」


「褒美としてはあれだが、ウマを一頭連れていくといい。魔導国までは遠いからな」


「助かります。絶対にルシアを連れて、また王国に戻ってきます」


「ああ、約束だぞ。何時までも待っているからな」


ルーテシアと握手を交わす。


「わ、私。何時までも待ってます。絶対にまた会いに来てください」


涙ぐみながら、ユーシアはハグをしてくれた。


「はい、必ず」


ユーシアの頭をやさしくなでる。


こうして、最後の夜は更けていくのだった。

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