第11話
「あ、ルーテシア。どういう状況なんだ?」
城の門の前で、騎士甲冑の人と話しているルーテシアを見つけて声をかける。
「む? 何だ貴様! なれなれしい奴め」
ルーテシアを庇うように前に出て、兵士が槍を構えた。
「構わん。ジン、マズい状況なんだ……。力を貸してくれないか?」
その兵士の肩を掴み、ルーテシアは困ったように聞いてくる。
「城内に突然化け物が現れたらしいんだが、姫、ユーシア様がまだ中にいるらしいんだ」
「それは大変だ。早く中にはいらないと」
そう言いながら前に進む。
「ダメだ! 魔女の方が今は抑えてくれているが、われわれの武器は全く通用しなかった」
兵士が道をふさぐ
。
「魔女?」
疑問に思ってそう聞き返す。
「ああ、青髪――」
青髪と聞いた瞬間、俺は最後まで聞かないで兵士を押しのけて中に駆けこんでいく。
ルシア、無事でいてくれよ。
・・・・・・・・・・
「エアカッター」
玉座の間に差し掛かったところで、ルシアの声が聞こえてきた。
俺は急いでドアを開ける。
「フハハハハ! 効かぬ」
ドアの先には、二メートルはありそうな図体のでかい筋肉質の化け物の背中とシン・ユーシアを庇うように立つルシアの姿が見えた。
一番奥の玉座の前にルシアが立って、応戦していて敵は俺に気が付いていない。
チャンス!
「でりゃー」
敵の頭に兜割を決める。
決まった!
そう思ったのもつかの間、俺の体は宙に投げ出され、天井に叩きつけられた。
「虫でも飛んでいたかな?」
あざ笑うような声が聞こえる。
身体が痛い。
天井に体がめり込んで幸い落ちないで済んでいるがこのままではまずいな。
着地できるか?
それよりも、もう一度――
「これはどうだ化け物!」
天意を蹴って、勢いよく突きをくり出す。
「ふん!」
手ではじかれてしまう。
だがおかげで、ルシアの前にうまく着地できた。
「ジン! 大丈夫?」
「何とか。それよりルシア、足止めをありがとう」
二人に目立った外傷がなく、安心しながらお礼を伝える。
「いいわよ。嫌な予感がして、城に戻っただけだし」
それのおかげで死人がいないのは幸いだな。
「ところで、あの化け物……。バ・ルーダに似てないか?」
正面から見据えるとどことなく顔立ちが似ていたので、疑問を口に出す。
「そうなんです。ジンさん。突然、バ・ルーダが化け物になって暴れ始めたんです」
俺の疑問にシン・ユーシアが答えてくれる。
「どうなっているんだ? ルシア、何か分かるか?」
「そうね……。たぶんだけど、ビッシーマーに力を分けてもらったんじゃないかしら?」
「おい、先ほどから何をぶつくさ言っているのだ?」
俺達の様子に、化け物がそう言ってきた。
「お前、バ・ルーダでいいんだよな?」
「如何にも! 我こそは王国騎士団団長、バ・ルーダである~」
「何故その騎士が姫を、シン・ユーシアを襲うんだ?」
会話はできそうだな……。
刀を鞘に納めて、警戒しながら疑問をぶつける。
「ふん、その姫はこの国を売った。もはやこの国に不必要なのだ。我こそがこの国を守るのだ!!!」
突然頭を抱えて叫びだす。
「そんな! 私はこの国を売ってなんていません」
シン・ユーシアは立ち上がって、一歩前に出てそう訴える。
「黙れ! 国宝を共和国渡し、軍力縮小を勧めるこの国の毒めがぁぁ」
「それは、この国のためです。いまこの国に必要なのは国宝でも軍事力でもなく、手を取り合える国交なの。あなたもこの間の会議には参加していたではありませんか?」
「黙れ、黙れ、黙れー!」
さらに前に出て、訴えかけるシン・ユーシアに向かってバ・ルーダが跳びかかった。
「危ない!」
「きゃぁ」
シン・ユーシアを抱きかかえて、横に回避する
。
「ちぃ、外したか……」
「バ・ルーダ。すまないが化け物になった以上、斬らせてもらうぞ」
シン・ユーシアを下ろして、バ・ルーダに近づいて行く。
「ジン! ユーシアは任せて、倒しちゃって」
玉座の裏に隠れていたルシアがそう声をかけてくれた。
「ああ、任せたぞ!」
一気に斬りかかる。
「ふん、貴様の武器では我が身に傷はつけられるぬぞ」
腕で止められてしまう。
「これならどうだ、バ・ルーダ」
突然、ルーテシアの声が聞こえて、バ・ルーダに突きを食らわせた。
「ぐげぇぇぇぇ」
目に鋭い突き食らったバ・ルーダは醜い声を上げて、倒れて転げまわる。
「姫、今のうちに撤退します」
「でも、ジンさんが……」
「むしろ邪魔になります。任せていいな? ジン」
「ああ、ルシアの事も頼む」
「仰せつかった」
ルーテシアは二人を連れて、玉座の奥に姿を消す。
「ぐぅぅ! 小癪な」
片目を押さえながら、バ・ルーダは立ち上がる。
「力を貸してくれ……。エマ」
狙ったわけではなかった。
祈るように、願うように鞘に触れてそう呟くと、また光の糸が現れる。
それは線になっていて、バ・ルーダの首に続いていた。
「虫がぁぁぁー!」
渾身の拳が俺に向かってくる。
出も怖くない、当たらない。
この糸をたどり、ただ、構えていればいい。
「終わりだ、バ・ルーダ」
鞘から刀を抜き、一気に首に刃を当てる。
「バカが! 貴様に斬っるる」
左手で鞘を持ち刀にぶつけて、刃を押し込む。
「でりゃぁぁ」
「ばかなぁぁぁ」
雄たけびを上げながら、バ・ルーダの首は吹き飛んだ。
刀を振り、血を飛ばしてから鞘に収める。
終った……。
安堵して、大きく息を吐くのだった。
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