第38話 東アジア各国への対処

 さて、フランスから清や日本などの東アジア諸国に使者を送ってから2年が経ち、ようやく派遣した使者が戻ってきた。


「ふむ、で、清や日本の対応はどうであったかな?」


  私は東洋の国々へ送った使者の持ち帰ってきた返書に目を通す。


「はい、清についてはやはり自由に皇帝に敬意を表してよいという返答を得たのみであります。

 そして広州における交易の支払いは銀での支払いのみを認めるとのことです。

 日本に関しては今まで通りオランダの船のみ交易を許すと」


 まあ、予想通りの解答ではあるのだが、予想通りすぎであった。


 東アジアの君主たちは自らの国が世界の中心であり、周りは貢物を持ってくるのが当然であるという考えを今でもしている。


 もはやタタール人がユーラシアを統一する一歩手前であった時代ではないのであるのだが、なんとも時代遅れなことである。


「そうか、やはりな」


 そもそも清は茶、陶磁器、絹織物や生糸の一大生産地であるのだが、砂糖や綿の大量生産地でもある。


 故にアヘン戦争以前のイギリス側から輸出できるものは時計や望遠鏡のような富裕層向けのごく限られたものしかなかった。


 イギリスは本来は綿の衣類などを売り物にしたかったようだが、綿は清本国でも生産されていたため必要とされていなかったのであるのだな。


 またアヘン戦争以降も結局はアヘン以外に特に売れるものはなくイギリスは清との貿易は大幅な赤字であった。


 それにより日本に対しては日本国内の不満分子に武器弾薬を提供し、日本における立憲君主である天皇を表舞台に立たせることで、不満分子側に大義名分を与え、そういったものたちに政権をとらせることで、日本という島の工業化や茶の栽培などのプランテーション農業などの近代化を促進させて、主に紡績用機械や発電機などを売りつけ、鉄道を整備し、清に代わる生糸や茶、陶磁器の生産地として仕立て上げたわけだ。


「イギリスと同じことをすれば無論日本を間接的に支配することはできるであろうが奴らと同じことをするというのは気にくわぬな。

 とは言えロシアへの対処も考えれば日本にはもう少し協力的になって欲しいものではあるのだがな」


 すでに船舶や砲、銃器の技術格差はアヘン戦争当時もしくはそれ以上にフランスと東アジア諸国の間でついているのは明白であるうえに清は内部不敗もひどいから、清の軍と戦って勝利をおさめるのは難しくはないではあろう。


 しかし清という大きな人口を抱える国を武力で植民地化しようとしても、ナポレオン戦争でのスペインの二の舞になるであろうし、それではおそらく採算も合わないであろう。


 ならば、中国大陸そのものを植民地とするのではなく、まずは広州にフランスに友好的な勢力を作り出したほうが良いのかもしれないな。


 ベトナムの阮朝もフランスに友好的であるし、石炭や水の補給先の港を作らせてもらうようにするべきであろうか。


「まあ、いずれにせよ現状では東アジアに関して通商外交の優先度は高くないが東アジアの支配者たちには友好的態度だけではなく恐怖を見せつける必要もあろうか」


「おそらくそうであると思われます」


「ではまず、装甲フリゲート八隻を用いてベトナムの阮朝に対し石炭と水に関しての補給港を

 設立させるとしようか。

 その後はフィリピン、日本の順でいこう。

 そして防寒装備を十分整えて日本の北の樺太を抑えてしまうのだ。

 清は最後でも良い。

 フィリピンはスペインの領土であるから石炭や水の補給港に関しての建設をスペイン王に許可を得てから東アジアに向かってくれ」


「かしこまりました」


 いずれにせよ東アジア諸国との友好的な関係を結ぶのはロシアの領土拡大対策には必要ではあるし、ロシアのアラスカ経営にも関係してくるが、現状では欧州におけるイングランドやプロイセンへの対処のほうが優先だ。


 東アジアの民衆への悪感情を植え付けないようにしつつ、友好関係を結んで交易の拠点を確保し、交易で利益が上がるようにしなければ、資金を投じて港湾などを整備する意味が無いからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る