第26話 王党派によるクリスマスの爆弾テロ
さて1800年も、もうすぐ終わりのクリスマスイブ。
今年は王党派によるナポレオンの爆薬による暗殺未遂テロ事件が起こるはずだ。
具体的には「
まあ、この時代にはまだ機械的な時限爆弾はないのだが。
そしてそのテロのリーダーとなるのはヴァンデの叛徒と手を結んだ、
このカドゥーダルという男は一見ただの粗野な田舎者にしか見えないのだが、小集団の指導者としての力量は一流である。
当時、革命政府はカドゥーダルを逮捕するために莫大な懸賞金をかけたが、全く効果はなく、ヴァンデには彼の手下や崇拝者が多数いて、手下たちは軍や警察が動く前にそれをカドゥーダルに教えて彼は捕まることなく逃げ続けた。
王党派がなぜ私をテロで倒そうとしたかについては私がプロヴァンス伯ことのちのルイ18世に対して彼をフランスに戻して権力の座につける気がまったくないことを示したからと、それに結びつくカトリックはプロテスタントを優遇する私をアンチキリストとよんでいるからだな。
キリストの誕生日にアンチキリストが死ねば、神はお喜びになるだろうと、まあそういうわけだ。
何れにせよ私は愚かな王室関係者に権力を譲り渡すつもりもカトリックの聖職者に特権を再び与えるつもりはなかったし、彼らも現状の私の政権が続くかぎり王政復古の見込みはないと判断しただろう。
私さえ死ねば王政復古は簡単だと思っているのだろうが実に愚かなことだ。
カドゥーダルはルイ18世の支持者でありピエール・ロバノー・ド・サン-レジャン、ギロチンにかけられた王党派貴族の息子で侍従のピエール・ピコ・ド・リメラン、ヴァンデの反乱に加わった経験のあるフランソワ-ヨーゼフ・カルボンを使ってナポレオンを爆殺しようと計画した。
私もルイ18世となる男の手紙を拒絶した以上おなじことが行われるのであろう。
「フーシェ、王党派による私の暗殺計画が進められているようだ。
調査をして報告を」
「は、では早速調査を開始します」
ジョゼフ・フーシェという人物は警察を動かすために生まれてきたような男である。
彼は情報こそがすべてを動かすと信じていたし勤勉で常に客観的に物事を見る人物である。
そして彼は早速王党派のテロリストの動きを察知した。
彼らはランバルという名前のパリの穀物商から荷車一台と一頭の馬を買付けそれを水運び用の馬車のように見せかけた。
其処で彼らは大きいワイン樽に火薬を詰め込み、私がクリスマスイブにオペラ座へ向かう際に、馬車がテュイルリー宮殿を出るのを見て、長い導火線を使い爆弾に、点火する男に合図を送るように計画した。
さらに彼らはペンソルという名前の十代のパン屋の娘に12スーを払い、馬車の手綱を引いて馬を抑えておくように頼んだ。
「さて、フーシェ、そろそろ君の出番だよ」
「はい、おまかせください」
計画が本来の歴史通りに行われなければ私やフーシェの準備は無駄に終わるところだが、計画通りに終われば彼らを捕まえるのは簡単なことだ。
彼らは一網打尽にされ、わけも分からず手綱を引かされていたパン屋の娘も死なずに済み、私の後続の馬車の家族たちにも何もなかったのは僥倖というものであろう。
私は予定通りにオペラ座へ向い、ヨーゼフ・ハイドンのフランスでの初演である堂々とした
そして翌日、今回の爆弾テロ未遂事件の関係者はすべて逮捕された。
そしてそれにはカドゥーダルに金銭的援助を行っていたイギリスの工作員も含まれていた。
フランスの第一執政を爆弾テロで殺そうとした王党派とイギリスに対してフランスでは強い批判が起きた。
「王党派を倒せ!」
「イギリスを倒せ!」
私は宣言をした。
「もはやフランスの治安を乱すのは自らの特権を取り返したいだけの無能な特権階級と彼らに支援を行うイギリスであることは明白である。
私はイギリスの海軍をすべて打ち倒すであろう。
彼らが自らの愚行を悔やむのはこれからである」
私の演説を聞き終わった聴衆は熱狂的に喝采する。
「おおー!」
もはやフランスにおける王族の栄光は過去のものとなったのだ。
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