第21話 国家の権力を手に入れたならまずは軍事と内政の改革につとめようではないか

 さて、シエイエスが首謀者であったブリュメール18日のクーデターで私は結果的には第一執政コンスルというフランスにおける最高権力を握った。


 フランスの共和制は名目上継続しているが事実上私の軍事独裁政権になったわけだ。


 ただしこれは単なる軍隊という暴力による支配ではなく、私に期待する兵士の多くの出身である農村や武器製造や造船で潤っている都会のブルジョワジーの支持というフランス国民の多数の支持を背景にしているものだ。


 いままでの総裁政府などがあまりにもおのれの欲を満たすことしか考えていなかった反動ではあるのだがね。


 そしてそんなことをしている間に年は代わり1800年となった。


「さて、とりあえずは東側の敵のオーストリアをまずはどうにかせねばならぬか」


 私は早速フランスの軍事組織の改革に取り組んだ。


 フランス革命の国家総動員制度により軍隊の兵数は徴兵により今までより桁が1つ多い10万単位の兵となっている。


 その大人数の戦闘部隊を動かすためには今までの師団では対応しきれないため師団の上に軍団という、同格の指揮官の横でのいがみ合いなどを減らし、最高指揮官の仕事をその下の師団の指揮官に分散して行わせることで軍隊の命令系統を統一化することにした。


 またそれに合わせ今までは軍人の階級には最高位は将軍という階級しかなかったがその軍人階級を増やした。


 ちなみに元帥と言うのは本来は軍人の階級ではなく栄典であって、特別な武功を立てた将校に授与されるものだ。


 階級としては


 大元帥:フランス陸海軍のトップ つまりは私のことだ


 元帥:方面軍長 方面軍は 2個からから4軍団ほどで編成される。


 人数としては10万から20万ほど モローやオッシュなどだな。


 ここまでは名誉階級


 大将:軍団長 軍団の指揮官 通常歩兵2から4個師団、騎兵1個旅団、大砲40門ほどで編成される。


 人数としては5万から10万人ほど


 中将:師団長 師団の指揮官 師団は2から4個旅団から編成される。 おおよそ2万から4万人ほど。


 少将:旅団長 旅団の指揮官 旅団は3個連隊から編成される。 おおよそ1万人ほど。


 大佐:連隊長 連隊の指揮官 連隊は3個大隊から編成される。 おおよそ3千人ほど。


 中佐:連隊副長


 少佐:大隊長 大隊は基本的な最小の戦闘単位で6個中隊で編成される。 おおよそ千人ほど。


 大尉:中隊長 1個中隊は4個小隊で編成される おおよそ125人ほど。


 中尉:中隊副長


 少尉:小隊長


 ここまでが士官


 准尉 下士官の最高位

 曹長 一個中隊に1人

 軍曹 一個小隊に1人

 伍長 一個小隊に2人


 ここまでが下士官


 兵士 一個小隊約40人 一個中隊約120人


 しかし、フランスの軍全てに本格的な軍団制度を導入するのは残念ながらまだ難しかった。


 現状私の権力や軍事力はフランス国内で飛び抜けたものとなっている訳ではなく、陸軍は総裁政府の下で地域ごとに軍閥化していたためだな、中でもライン方面軍のモローはこの計画に大反対した。


「ライン川方面軍長としては海軍大元帥である第一執政の提案に反対である」


 モローの断固とした反対に私はフランス全軍の改革は諦めざるを得なかった。


「ふむ、まだ時期尚早であるか」


 ライン川方面に関してはモローの奮戦に期待するしかなさそうだ。


 結局、さて私は軍政改革に賛同してくれた、この世界ではまだ死んでは居ない、オッシュにイタリアの戦場を任せ彼に試験的に軍団制度を導入し、ランヌやヴィクトールなどをその下の指揮官の座につけてみた。


 かれは戦争の達人でありきっとイタリアのオーストリア軍を撃退してくれるであろう。


 同盟を組んでいたロシアやオスマントルコはすでに第2次対仏大同盟からは脱落しているしな。


 また軍事改革と並行して内政面にも改革を試みた。


 今までマルタ島などで行ってきたようにフランス民法典を制定し、民法と家族法を構築し、各地に残っていた種々の慣習法、封建法を廃止して、「フランス国民の万人の法の前の平等」を確立し、行政区分を明確にし、行財政を明確にして全国的な公正な税制度を決めた。


 また裁判官を指名し公正な裁判を行うものとした。


 更に公共教育法を制定しすべてのフランス市民が受けられる、初等教育を行う小学校と中等教育中学校などの学校を新たに設立し、公教育を確立させた。


 その中には陸軍士官学校や幼年学校、海軍士官学校や幼年学校も当然含まれる。


 またクリミアのナイチンゲール式の戦場医学を教える軍医及び衛生兵の育成機関も創立した。


 また、度重なる虐殺などで壊滅的な打撃をうけた地方の産業全般の復興と振興にも力をそそいだ。


「そう言えば鉄道網の整備はできそうかね?」


 私はフルトンに聞いた。


「はい、蒸気機関車と鉄道の制作は順調ですよ。

 ただ、フランス全土全てには難しいですが、

 まずはパリとトゥーロンやリオン、マルセイユなどのイタリア方面などをつなぐ鉄道網を計画しております」


「うむ、早急に進めてくれたまえ」


「はい」


 交通網や腕木通信などの通信網の整備も当然行っているぞ。


「まあ、鉄道は私に反抗的なモローよりも友好的なオッシュに先に使ってもらおうではないか」


 鉄道ができれば物資や人員の輸送能力は飛躍的に上がるはずだからな。


 そして、軍事での功績があれば出自に関係なく階級は上がり、政治などでも王党派・ジャコバン派などの前歴を問わず人材を登用することで政治や行政に於いても融和をはかった。


「フーシェ、国内の治安に関しては任せたよ」


「はい、おまかせください」


「もしも君が私を裏切って王党派につこうとしても彼らは君が王の処刑に賛成して投票をおこなったことを彼らは忘れていないことも覚えておいたほうがいいぞ」


「……はい」


 そのかわり現在の体制を暴力などで覆そうとする者には容赦をせずに逮捕、弾圧した。


 私が第一執政となった時から暗殺未遂事件が増えていたのだ。


 それは主に王党派によるものであったが。


「テロリズムで私を倒したところで、絶対王政の時代には戻らんのだがな」


 もはや市民が銃を取れば貴族の私兵でも倒せることは証明されている。


 甲冑を着た騎士が一般庶民相手に無双をできる時代ではないということだ。


 であればこそ、スペインの市民を敵に回し、ロシアで兵を失ったナポレオンのてつはふむまい。


 イギリスのように海外の特産品がある場所をなるべく押さえていくのがこれからの時代の強者であろうから。


「タレーラン、オーストリアとの和平はうまく行かぬか?」


 タレーランは頷いた。


「残念ながら、いまはオーストリアの軍部の士気をくじかねば難しいでしょうな」


「ではオッシュやモローが勝つことに期待するしか無いか」


「はい、今のところはそうですな」


 停戦協定を結ぶにせよ戦うより、停戦したほうがメリットが有ると思わせねば無理ということか。

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