第14話 エジプト攻略作戦・アレクサンドリア制圧
さて、私は東方遠征軍司令官の辞令を受け、陸海軍の兵を率いてエジプトをフランスの勢力下に治めよと命じられた。
ただし与えられた戦力は十分とはいえない。
総裁政府としても私の名声が高まりすぎても困るのだろうな。
「理想もなく自分たちの保身のみが目的の輩がいまのフランスの政府そのものというのは困ったものだがな」
そう言っても私がフランスという国家の最高権力者になるのはまだ難しいだろう。
年齢的に考えても総裁に選出されることはないうえに、カルノーを追放した総裁政府は私とオッシュを警戒しているからな。
フランスの民衆も現状軍事独裁政権の樹立など望んでいない。
当然今まで敵対していた王党派の支持はないし、ジャコバン派に支持されているというわけでもない。
「まあ、焦ることもあるまい。
真打ちは最期に登場するものだ」
さて、現状オスマントルコに間接統治されているものの、エジプトは奴隷出身軍人のマムルークが実質的に支配している。
エジプトは、スエズ陸橋に運河をほれば海運に大きな影響が出る場所なのは間違いない。
その他にも農産物や金などの鉱物資源があり、エジプトをフランスの植民地にすれば先に失ったインドや西インド諸島などに匹敵する富を得られるはずである。
またマルムークはいまだ騎馬による白兵戦を主な戦術としており銃剣の付いたマスケットを持った歩兵が勝つのは容易いと考えられている。
しかし服装などは考えなくてはならない。
エジプトはヨーロッパに比べれば暑いからな。
「まあ、シャスポー銃への切り替えも進みつつある。
普通にやれば勝てるだろう」
ジブラルタルとその駐留艦隊を失ったイギリスも現状は地中海に艦隊を送り込めるほどの余裕はないし、オーストリア海軍も今のところ動く様子はない。
エジプト遠征軍は総勢4万5000その中には考古学者なども含まれている。
そして私はエジプトで着ていても大丈夫であろう亜麻の軍服を作成させて兵士に支給する。
本来は羊毛の軍服でエジプトに遠征したために兵士は暑さに倒れるものが続出したからな。
そして1798年の6月、戦列艦10隻、フリゲート10隻、コルベット10隻を護衛艦隊とした250隻の大輸送船団がツーロン港を出帆した。
途中マルタ島で水と食料を補給してエジプトのアレキサンドリアに向かう。
クレタやロードス、キプロスについては今回は放置だ。
兵数が多ければこういった島も攻略してもなんとかなるだろうが、今回はそれほど兵士に余裕もない。
やがて我々はアレキサンドリアに到着した。
しかし海が荒れていてすぐには上陸できそうではない。
「ふむ、焦ることもあるまい。
天候が回復したら上陸を行うぞ」
「は、了解しました」
本来であればネルソン艦隊に追われていたナポレオンはアレクサンドリア上陸を強行し、海の時化と陸兵の船酔いによって多くの溺死者を出すことになるのだが、ここで無駄な損害を出したくもないしな。
翌日、天候も回復したので兵を上陸させる。
「司令、
「歩兵で方陣を組み射撃で対処せよ!」
「はっ!」
こちらに突っ込んできたベドウィン騎兵は射撃によって追い払らった。
「よし市街に突入せよ、目標は太守の館だ」
「了解いたしました」
我がフランス軍は大した抵抗を受けず、さほど損害も出さずにアレクサンドリアを占領することに成功した。
私は艦隊を呼び寄せアレクサンドリア港で補給を行わせつつ、次の作戦に備えた。
「次に攻略する目標はカイロである」
「はっ!」
「守備隊や戦列艦などを残しナイル川を船で登る。
輸送船の出港準備を行い不足分は徴発するようにせよ」
「はっ!」
夏のエジプトの砂漠をカイロまで行進するのはきつい。
昼間は酷暑でと夜は寒いからな。
だが、水位が上がっている現在のナイル川ならなばそれなりの大きさの船も運用可能だ。
ならば船を使わぬ手はないというものだよ。
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