第10話 サルディーニャ、シチリア、ナポリ制圧による地中海の制海権の確保

 さて、コルシカとマルタを制圧しそれぞれ6日間で法整備を行った後に1日の休息を取って全部で7日間で行ったのは、キリスト教における神が世界を6日で創造して7日目を休息日としたという教えに対する皮肉でもある。


 だがそのくらいに短い期間で整備が整えられる程度の人口であったということでもある。


「では諸君、サルディーニャを落としにゆこうではないか」


「はっ」


 マルタ島を出発した我々の次の目標はサルディーニャ島である。


 サルディーニャ島はコルシカのすぐ南なのだがコルシカの次にマルタを優先したのは政治的配慮と言うやつである。


 コルシカを最も優先したのは地理と状況もあるし私の生まれ故郷だからだ。


 サルディーニャ王国またはピエモンテ王国の領土は、サルデーニャ島に加え、フランスと隣接したピエモンテ、サヴォワなどで、王国の本拠はサルデーニャ島ではなく大陸のピエモンテにあり、首都はトリノである。


 今回の我々の目的はサルディーニャ島の占領であるがマルタに比べれば相手の戦力は大したことはない。


 すでに北イタリアに駐留するオーストリア軍への牽制を命じられたルイ=ラザール・オッシュによって大陸におけるサルディーニャの領土は我がフランスの占領下であるので、サルディーニャ王国の残りの領土はサルエディーニャ島だけだ。


「よしサルディーニャを攻略する」


「おお!」


 サルディーニャはマルタより統率は取れている。


 だが、持っている艦船は戦列艦が一隻にフリゲートが2隻。


 我々は敵の艦船をあっという間に無力化させると、上陸を敢行し守備隊を蹴散らした。


 サボイア家は降伏して事実上サルディーニャ王国はフランスの衛星国となった。


 ここでも守備隊の残した野砲やマスケット銃を鹵獲した私はその一部を船に積んであとは防衛戦力として島の守備隊に再配備しコルシカやマルタと同じ様に政治の改革を実行しようとした。


 しかし、私の生まれ故郷であるコルシカや小さな島であるマルタに比べると地中海ではシチリア島に次いで2番目に大きな島であり、この島の改革には時間を要した。


 それでも粘り強く政治改革を進め一ヶ月ほどでほどでフランス本土と同等な人権宣言を宣言、人間は生まれながらにして自由であり、権利において平等であるとして、今までの全ての貴族的封建的な領主権などの特権や奴隷制度を廃止、民法と家族法を構築し地方自治体を作り出して行政区分を明確にし、行財政を作り公正な税制度をこの島でも定めることに成功した。


「やれやれおもったより時間がかかったが次はシチリアだな。

 シチリアへ向かうぞ」


「は、了解いたしました。」


 シチリアはイタリア半島のブーツのつま先、西南に位置する地中海最大の島で、面積はコルシカの3倍ほどある。そして人口も多い。


 現在の統治者はスペイン・ブルボン家の分家であるブルボン=シチリア家。


 スペイン本国はすでにフランスと講和を結んでいるのだが、シチリアはまだフランスと敵対的であった。


 とは言え軍事力は当然スペイン本国には遠くおよばず、サルディーニャと同程度で、持っている艦船は戦列艦が一隻にフリゲートが2隻。


 我々はまたしても敵の艦船をあっという間に無力化させると、上陸を敢行し守備隊を蹴散らした。


 ブルボン=シチリア家はナポリに逃亡した。


 もちろんここでも守備隊の残した野砲やマスケット銃を鹵獲した私はその一部を船に積んであとは防衛戦力として島の守備隊に再配備しコルシカやマルタ、サルディーニャと同じ様に政治の改革を時間をかけて実行していった。サルディーニャと同じく一ヶ月ほどでほどでフランス本土と同等な政治改革を行い終えた私は今回の遠征の最終目標であるイタリア半島南部のナポリ王国へ向かうことにした。


 ナポリはトゥーロン封鎖の時にイギリスやスペインとともに加わったこともある国であり、地理的にシチリアとあわせて地中海貿易における要の場所でもあっった。


「さあ、諸君。

 トゥーロンの包囲のときの恨みを晴らしに行こうではないか。

 勝利は迅速果敢な行動にあり!」


「おお!」


 ナポリの戦力もサルディーニャやシチリアと大差はない。


 もしこれらの王国が団結して我々に対抗しようとしたならば、多少は手こずったかもしれないが現状の戦力差は10:1である。


 ナポリは非常に歴史が古代ギリシャ人により紀元前5世紀頃に造られた植民都市でネア・ポリス(ネア=新しい、ポリス=都市)からナポリと呼ばれた。


 ギリシャがローマ帝国に制圧されるとその支配下に置かれ、その後にシチリアの晩禱という住民暴動が起こり、シチリア王国が二分されイタリア半島南部がナポリとなった。


 最初は灯台のこちらのシチリア王国と呼ばれていて、王もシチリア王と名乗っていたのが、いつしかナポリ王、ナポリ王国と呼ばれるようになっていたという、面白い過去を持っている国で、私の名前であるナポレオンやナポリオーヌという名前がナポリと関係があるのは言うまでもないな。


 その後スペインに支配され、オスマン帝国に占領され、フランスの統治下に入り、オーストリアの支配下に入り、サルディーニャのサヴォイ王家が統治しスペインブルボン家が統治するに至る。


 我々はナポリ王国の艦船をあっという間に無力化させると、上陸を敢行し守備隊を蹴散らした。


 ブルボン=シチリア家とブルボン=ナポリ家はオーストリアに亡命した。


 こうして私は地中海の制海権をほぼ手に入れるに至った。


「後はジブラルタルか」


 地中海に入り口のジブラルタルはイギリスの海外領土であり地中海の行き来をする船にとっては厄介な存在だった。


 一方大陸では神聖ローマ帝国の末裔であるオーストリア及びプロイセンとの戦闘は膠着状態にあるようだが、イギリスはアイルランドへの対処に追われて身動きが取れていないようだ。


 ジブラルタルを落とすなら今しかないな、しかし、現状では戦力が不十分であろう。


 私はトゥーロンに戻りやはり船の整備補修やフリゲート艦の新型艦船への入れ替えを行い、士官や水兵に地中海の海上での演習を行わせることにした。


 こうしてイギリスとの決戦の日が近づいてゆくのである。

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