第8話 地中海海戦!フランス海軍ナポレオン艦隊VSイギリス海軍ネルソン艦隊
さて1796年の10月を目標として私を総指揮官としたアイルランド遠征の計画が立てられ、私は新型の装甲を施した
蒸気機関が煙を吐き出す煙突の付いた見慣れぬコルベットに乗り込む士官や下士官を募集したが、手を上げたものはやはりほとんど平民出身だった。
「君たちにはフランスの栄光が与えられるだろう」
現在トゥーロンの製鉄所および造船所、造兵廠はフル稼働し船体、大砲、砲弾、マスケット銃、ミニエー銃、銃弾、帆、ロープ、保存食などの軍需品の供給を行っていた。
またフリゲートに装甲を施し砲を新型に置き換えることも進めた。
しかし、この時代の主力戦闘艦である戦列艦にはあえて手を加えなかった。
正確に言えば戦列艦に手を加えて、その船をまともに運用できるほどの時間は与えられていないといったほうが正しいが。
小型のコルベットを早急に作っているのはコルベットは小型の船なので一隻を建造するためにかかる期間が3ヶ月程度とかなり短いので今からでも間に合うこと。
動かすために必要な水兵や搭載する砲が少ないので訓練人数が少なくとも運用できること。
建造するために必要な費用が少ないことなどだ。
戦列艦には乗員は1000人ほどいるがコルベットは100人位。
少人数の組織の方が伝達の遅延も少なく伝達ミスも少ないしな。
イギリスは人口の問題で慢性的な水兵や海兵隊の不足に悩んでいたが、フランスは逆に士官や下士官の不足に悩んでいた、そして以前は革命政府の政治家の口出しまで有った。
それでは勝てるものも勝てまい。
アイルランド侵攻の際の拠点は大西洋岸の大軍港ブレストであるのだがブレストでは戦列艦を作る職人への賃金の支払が遅れていて、船の造船そのものにも遅れが出ているが、その情報は意図的にイギリスに流している。
今までの革命戦争においてフランス海軍は1794年6月1日に起こったフランス側の呼称する”共和暦2年プレリアル13日の海戦”でも実質的にはイギリス海軍に敗北しており、同型で同数の船で普通にやりあっては勝ち目はないといっても良い。
フランスの軍船はイギリスに比べ決して船の品質では劣ってはいない。
例えばフランスの戦列艦の砲門数は最大で120門でありイギリスは最大100門だから火力では劣ってはいない。
問題なのは革命の時に貴族や王党派の士官、下士官などを多数粛正、処刑し、さらにはそれらが国外へ多数亡命した結果、熟練の士官・下士官が失われたことにより、練度が不足しているということで、その穴埋めは容易ではない。
これは射撃間隔がイギリスの毎分3発に対してフランスは2しか無いという実情が物語ってもいる。
だからこそ、今回は小型艦での少数精鋭で、イギリス海軍の撃破を狙うしか無いというわけだ。
今までもフリゲートやコルベットを用いた哨戒などで操帆や航海の訓練は行っていたが、それに加えて新型の砲の実射訓練や機関士の蒸気機関の制御の訓練なども陸上で進め、蒸気機関のスクリュー推進と帆の推進を両方残し排水量が500トン前後、砲は18門を搭載しているコルベットを10隻建造しこの時代では開発されたばかりの、ライフル砲やペクサン砲をつみ、工場にて蒸気機関を扱ったことがあるものを機関長として雇い入れて、蒸気機関の制御を行わせ、イギリス海軍との決戦に備えるのだった。
陸軍はすでにオーストリアへの戦闘を開始しているが、あまり順調とはいえない状況のようだ。
ライン川一帯の攻撃を行っているジャン=バティスト・ジュールダンとジャン・ヴィクトル・マリー・モローの軍はオーストリアに撃退されている。
北イタリアに駐留するオーストリア軍への牽制はルイ=ラザール・オッシュによりうまくいっているようだがね。
やがて目標の10月に準備は整い、アイルランド、バントリー湾への上陸作戦が開始される時が来た。
私の指揮する艦隊はトゥーロンから出港しブレストに向かうことになった。
私の艦隊は戦列艦12隻、改造フリゲート艦4隻、新造コルベット10隻、輸送船6隻。
そしてイギリス海軍提督ホレーショ・ネルソンの艦隊はトゥーロン沖で港湾の封鎖に当たっており、その艦隊との激突は避けられなかった。
「さて諸君、この戦いは我がフランスがイギリスに致命的な打撃を加えるための前哨戦である。
またこの戦いに失敗しアイルランドの共和制を望むものを見殺しにすればフランスに続くものはいなくなるであろう。
祖国のため総員の奮闘を期待するものである」
「はっ!」
私は従来通り戦列艦を縦列に並べ戦列を組ませながら、その間に新型の艦砲を搭載したフリゲートやコルベットをおいた。
「敵艦見ゆ!」
観測員の報告に艦内にざわめきが広がる。
「総員戦闘配置!」
ネルソン艦隊は”ネルソンタッチ”と呼ばれる、戦列のど真ん中などに飛び込んで乱戦に持ち込む戦術を取ってくるだろう。
しかしその戦術ではこちらへの接近中は艦への砲火に対して反撃することができない。
戦列艦の砲は横に向いて並べられているからな。
「戦列艦の間の改造フリゲートとコルベットのライフル砲にて迎撃せよ!」
戦列の中央に突進し戦列艦をまず潰そうと突撃してくるネルソン艦隊の戦列艦の前に出る形で、コルベットや改造フリゲートが突撃してくるネルソン艦隊の先頭へライフル砲で砲撃を行う。
「敵艦構わず突っ込んできます」
まあ、途中で進路変更も出来まいしな。
「ならばこちらも再装填し撃ちまくれ。
敵艦が接近したらペクサン砲を放て」
鋼の量産により高温になっても砲を放つことはこちらは可能だ。
しかし相手の前装式で銑鉄か砲金のカノン砲ではそんなに早くは発射は出来ない。
「敵艦へ砲弾命中、大破を確認」
接近してくるイギリスの戦列艦に砲が命中し、木を突き破ってばらまかれる破片が相手の水夫を多数殺傷しているであろう。
しかし、そう簡単に戦列艦は沈むものではない。
「敵艦のカノン砲の射程に入りました」
「戦列艦にも応射させよ」
「了解しました」
結果としてはイギリスの艦隊の接近を完全に阻止することはできなかったが、狙撃兵が敵高級士官と思われる人物を狙撃したことで相手は統率された行動を取れなくなり、敵艦の半数を拿捕するに至った。
そして狙撃された人物がネルソンであることがわかった。
「運が悪かったな、本来であれば有効な戦術だったはずだ」
こうしてネルソン艦隊を打ち破りネルソンを倒した私は損傷した船と拿捕した船をトゥーロンに送りながら、本隊はブレストの艦隊と合流し、艦隊は17隻の戦列艦、13隻のフリゲート艦、10隻の新型コルベット、その他輸送船など14隻の艦から構成される大艦隊となった。
そして戦列艦、フリゲート艦、輸送艦に上陸するための兵士を載せて艦隊はブレストを出港する。
そして、ユナイテッド・アイリッシュメンのために、野砲やマスケット銃等の援助の軍需物資も積み込まれ、2万の兵のアイルランドへの上陸は無事に成功したのだった。
アイルランドはイギリス王国からの離脱を宣言し、アイルランド共和国の設立を宣言した。
「ふむ、これで大きく歴史も変わるだろう」
イギリスはフランスにちょっかいを出す余裕もなくなるはずだ。
しかし、アイルランドは貧しい国故にフランスの支援が当面必要ではあろうな。
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