第7話 デジレとの結婚とアイルランド遠征計画
さて、1795年のヴァンデミエールの反乱鎮圧の成功により私は「ヴァンデミエールの将軍」と呼ばれるようになった。
そして、私はトゥーロン軍港の運用に関してほぼ全権を掌握し、いちいち中央政府へお伺いを立てなくても済むようになった。
もはや政府は軍なくしては立ちいかないという状態に陥っているからだな。
フランス西部のヴァンデの反乱もルイ=ラザール・オッシュが軍司令官として赴任すると、農民兵の王党派からの離脱を勧めることでほぼ鎮圧できている。
また英国を中心とした第一次対仏大同盟もバーゼルの和約にて1795年4月5日にプロイセン王国が、7月22日にスペイン王国が、8月28日にヘッセン=カッセル方伯領がフランス共和国との間に講和条約を締結している。
残るはオーストリアとオーストリア領ネーデルラント、英国、ナポリ王国とサルデーニャ王国のイタリア組などだな、まあこの頃のイタリア半島は小国が群雄割拠する混沌とした地域なわけだから事実上オーストリアとイギリスが主力なわけだが。
「スペインが対仏同盟から脱落したのは助かるな。
これでトゥーロン軍港の整備も楽になるというものだ」
いままではスペインとイギリスが両方敵であったがスペインが敵でなくなったのは結構大きい。
まあ地中海の制海権自体は未だにイギリスに奪われているし、ナポリやサルデーニャの船も動いているのだが。
また1793年に建設を開始していた製鉄所の高炉及び転炉、圧延設備などもようやく完成に至った。
そして、地中海艦隊総指令兼国内軍司令官の地位を手に入れた私は、以前から婚約していたデジレ・クラリーと正式に結婚することにした。
これは先方の家族がやっと私と彼女の結婚を認めてくれたということでもある。
彼女がしみじみと言った。
「あなたが貧乏士官の時は結婚に反対されて、その後にあなたが逮捕勾留された時は婚約を破棄しろとも言われたけど、フランス軍地中海方面海軍総司令になったら父も手のひらを返すように結婚を認めてくれたわ」
私は頷いた。
「人間というのはそういうものだよ。
だが私の君に対しての愛に変わりはないよ」
「嬉しいわ、私もよ」
私たちは教会で華やかに結婚式を上げた。
さてこれで少し落ち着くかと思ったが、実際には造兵廠での新型の艦載砲であるライフル砲やペクサン砲、新型銃器である紙製薬莢で後装式ボルトアクション銃のため装填速度が恐ろしく早いシャスポー銃や前装式ライフル歩兵銃でマスケットの3倍から5倍の射程のミニエー銃の開発を行ったり、フリゲートやコルベットの舷側に鋼の装甲を施したり、蒸気機関でスクリュー推進する機帆船及びそれに必要な蒸気機関とスクリューの設計をする作業もあり大変忙しかった。
早く有能な設計者にフランスに来てほしいものだ
そして1796年の春、総裁政府は軍事目標として、フランスの自然国境を回復することを決めた。
ライン川一帯を獲得しようとしているフランスの最大の障害はオーストリアで、総裁政府の軍事を担当するカルノーはオーストリアを三方向から攻撃することにした。
まず、マイン河の谷に沿って進撃するジャン=バティスト・ジュールダンの8万。
次にドナウ河沿いに進撃するのはジャン・ヴィクトル・マリー・モローの兵力8万。
最後に北イタリアに駐留するオーストリア軍への牽制はルイ=ラザール・オッシュの兵力3万6千。
これに加えて私はアイルランド遠征軍司令官となり、ユナイテッド・アイリッシュメンと呼ばれるイングランド王国の支配に抵抗するアイルランド人とともにアイルランドを攻撃せよと命令された。
「アイルランド遠征か……もう少し時間が欲しかったが仕方ないですな」
アイルランド遠征は1796年10月に予定された。
私は与えられたアイルランドおよびブリテン島のコーンウォール侵攻作戦を進めることにした。
そのために蒸気機関のスクリュー推進と帆の推進を両方残し排水量が500トン前後、砲は18門を搭載しているコルベットを10隻建造しこの時代では開発されたばかりの、ライフル砲やペクサン砲をつみ、工場にて蒸気機関を扱ったことがあるものを機関長として雇い入れて、蒸気機関の制御を行わせ、イギリス海軍との決戦に備えるのだった。
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