第4話 まずは工業の発展を図ろう、それに人材育成も急務だな。

 さて、地中海方面海軍司令となりトゥーロン軍港とフランスの地中海艦隊を預かる立場になった私が一番先にやるべきことはなんだろうか。


「まあ、やるべきことは色々あるがな」


 この時代、フランスの最大の敵国であるイギリスは産業革命で工業化の最先端を行っていた。


 綿や毛織物を工場で作り製鉄の技術を進め、旋盤、フライス盤などの普及をおこない、蒸気機関の発展のちょうど途中である。


 そして我がフランスは工業力でも2番手であった。


 しかし、産業革命の先をゆくイギリスと未だに農業中心のフランスでは技術力に差がかなりあるのは間違いがなかった。


 ナポレオンが行った大陸封鎖が失敗したのもイギリスに代わってフランスが工業製品などを供給する事ができなかったからだ。


 結果としてそれによりロシアを敵に回して、ロシアで大敗した大陸軍グランダルメはその精鋭をほとんど失い、機動戦に対応できなくなっていく。


「ならばやはりまずは工業化、そこから手を付けるべきか」


 無論、地中海方面海軍司令だからといってなんでも私がやっていいわけではない。


 なので、オーギュスタンやバラスにトゥーロン軍港の防備と設備の強化を申請して許可をもらうことにした。


 オーギュスタンには理を持って、バラスには袖の下を握らせることでそれぞれ話を通してもらい、ある程度の権限を移譲された。


 まずは沿岸砲台を強化してから、製鉄所などを建設しよう。


 後に造船・製鉄・艦船修理・近代的造兵廠による砲や銃、弾丸などの武器製造なども行うとしても鉄鋼の生産と旋盤やプレス機などのマザーマシンの製造は重要だからな。


 まあ、イギリスの艦艇に壊されては意味が無いからまずは防衛用の要塞と砲台の構築が優先だが。


 フランスでもすでに重火器の大量製造は行われているが、戦闘艦艇に鋼鉄の装甲を取り付けたり、蒸気機関を搭載するならばより多くの鉄が必要でもある。


「工業設備に関しての建築整備には時間が掛かるではあろうが5年間もすればかなり整備も可能であろうな。

 そして製鉄所、艦船の修理ドック、造船所、武器工場、武器庫、弾薬庫というところはまずは揃えなくてはな。

 そう言えば江戸幕府の日本人は恐ろしい速度で造成を進めたが手伝いに来てはもらえないものかね……まあ無理か。

 国交もまだ無く、フランスもそれどころではないしな。

 しかし、そろそろロバート・フルトンがフランスに渡ってくる頃か」


 計画書を提出し許可を得て、工兵を集めて入江の山上の要塞を強化し砲台を設置し、それが終わったら製鉄所等の設計、施工に取りかかる。


 同時に現状私の指揮下にいる海尉の中から優秀な人物を選出し、コルベットやフリゲートと言った小型高速の艦艇の艦長に任じて、積極的に地中海の近辺海域の哨戒、マルセイユなど地中海の他の軍港との連絡、商船の護衛などを行わわせ艦船の操作の習熟に取り組むことにした。


 また1793年8月1日に国民公会が発布した度量衡の新しいシステムであるメートル法を徹底させることにした。


 これも地味に重要だからな。


 大型木造帆船の戦列艦が時代遅れになるのもそう遠くはないだろし、戦列艦の運用には800人から1000人もの人数がいるがコルベットなら100人、フリゲートでも300人ほどで運用可能だ。


 フランス革命で士官の不足は致命的なまでだが海軍の人員と練度が圧倒的に不足している状況でもあるし、コルベットやフリゲートでは戦列艦に対抗できると考えられても居ないから、海上で少しずつ艦艇を運用していてもなんとかなるだろう。


 後は保存できる食料の確保のため瓶詰や缶詰の制作を出来るようにもさせないとな。

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