第17話 登校⑨【未来】

「はぁはぁ⋯⋯。キミ〜、確かに私が先に行っててって言ったけどさ、ちょっと先に行きすぎじゃないかな?」


「きゃっ! 冷たいなー、もうっ! って、りんごジュースだ。ありがとう〜」


「⋯⋯そうだね。懐かしいな〜、そういえばさ、購買で買ったりんごジュース、あの時は投げて渡してきたよね? そういうのあんまり感心しないな〜。まあ、若さ故ってやつなんだろうし、今はこうして手で渡してくれるからいいけどさ」


「そりゃ、キミとの思い出だもの。いつまでも色鮮やかなままだよ。───何年経っても、こうやってキミと二人で登下校してたことも忘れないよ。もちろん今日の、この特別な登校もね」


「この歩道橋も懐かしいな〜。競争のゴールにしたこともあったっけ。あの時のキミ、ズルしてたよね? まあ、ゲームセンターで仕返しできたからいいけどさ」


「あの手紙、本当に将来のプロポーズで驚いたよ〜。で、ちゃんと成人して落ち着いたら迎えに来てくれた。キミが忘れてなかったの嬉しかったな〜」


「あっ! 学校に繋がる桜並木が満開だよ。私たちの入学した時と同じだね。あの子にもこんな色々な思い出が出来るといいね」


「そうだね。私たちの子どもだもんね。こんな幼馴染がいなくても、あの子なら大丈夫」


「うわー、ひっどいっ! こんなってのはキミだよ? キ・ミ! この味覚音痴ッ!」


「なにを〜〜〜っ! ───あはは! ま、あの子はあの子で楽しくやると思うよ」


「それじゃ、久しぶりの学校へ到着でーす。入学式、緊張しないでってのもこれはムリかな」


「そうだっ! 勝負しようよ。今夜のお寿司のネタを賭けてさ。勝ったらウニ、負けたらプリンに醤油だよ。どっちがより緊張してたかの判定はあの子にしてもらうってことで」


「あの子のためにシャキッといこう〜! 緩くなるのはまた帰りね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る