第14話 下校⑦【秋】

「お待たせ〜、待たせてごめんね。それと、これから私が遅くなる時は先に帰ってくれても大丈夫だよ、⋯⋯って言ったところでキミは待っててくれるんだよね」


「授業中にうとうとしちゃった私が悪いんだけどさ、文化祭の実行委員にそんな私を指名するとか先生は何考えてるんだろうね。⋯⋯キミも実行委員に立候補してくれたのに却下とか本当に許せないよ」


「え? 先生は私たちの関係を知った上でそんな暴挙にでて、私に期待している。って言ってたの?」


「 ⋯⋯そっか、社会に出たら何かあった時にキミが側にいない場合の方が多いもんね。キミが納得したことなら、実行委員をやり遂げるのは私に必要なことなんだね」


「うん。私頑張るよ! それじゃ帰ろっか」


「まだ残暑が厳しいけど、夕方は少しはマシだよね〜。はぁ、和菓子屋さんはもう閉まってるだろうし栗きんとん残念だけどお預けか〜」


「え? キミ、って、ここコンビニだよ? 何か買うの?」


「あっ! コレってCMでやってたコラボ商品の栗きんとん! もしかして、代わりになるもの探してくれてたの!? すっごい嬉しいよ、ありがとう〜」


「ん〜〜〜っ! 美味しい〜! 幸せだよ〜〜〜!ね、 栗きんとんってさ、お値段が高いのにはワケがあってね、栗を潰してぎゅーってする分だけ栗をいっぱい使ってるんだよ? だから濃厚で、これは栗って感じのお菓子になってるの」


「そういえばさ、キミ、写生であの絵はないんじゃないかな? どうして風景の中に私まで描いてるのさ。素人が人物まで入れたらそりゃ絵のバランスも悪くなるよ〜」


「どうしても私を描きたかったって、───バカ、そんなんでキミの授業の評価がもし落ちたら私は怒るからね?」


「栗きんとん食べたら喉乾いちゃった。ねぇ、ジュースは私が奢ってあげるからあの公園に行こうよ」


「ほら、キミは先に座ってて。ちょっと買ってくるね」


「はいっ! ───あははっ! 変わりもの好きなキミでもこの新作のグレープレモンアップルミルクティーにはそんな顔をするんだ」


「どう? 美味しい? え、意外とアリかもって、⋯⋯じゃあ、私もちょっとだけ飲んでもいいかな?」


「⋯⋯うん、これも新作。よかったらキミも飲んでみて⋯⋯」


「⋯⋯アリ、だね。くどそうに思ったけど、レモンと林檎が効いてて思ったよりはさっぱりしてて、葡萄の酸味が⋯⋯って何を言わせるんだ、キミは」


「あはは、まあ、何ごとも挑戦だよねー。ただ、コレが当たりだっただけで他のメーカーの同じ商品が美味しいとは限らないだろうけどね。ある意味、闇鍋ジュースだもん」


「さ、そろそろ帰ろっか。ただでさえ遅かったからもう暗くなるし」


「あはは、まあ。寄り道も私が言い出したらことなんだけどさ、キミも楽しかったよね?」


「ならよしっ! もちろん、私も楽しかったよ」


「ねぇ、もう下校してる生徒はいないしさ──────」


「⋯⋯バカ、転ぶと危ないからって」


「ん、ありがとう」


「⋯⋯こんな時間がいつまでも続けばいいのにね、もう家に着いちゃった」


「今日もありがとう。私、文化祭頑張るから応援しててね。それじゃ、キミ、またねー───あ、そうそう、私もキミのこと好きだぞ。⋯⋯だから、いつでもモデルになってあげるね。それじゃ改めて、またねー」

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