第13話 登校⑦【秋】
「ふぁぁぁ〜⋯⋯、おはよ。はい、これ返すね」
「あはは⋯⋯。うん、今日の私は絶賛寝不足中だよ。やっぱりキミはわかるか〜。キミに借りたそのライトノベルがすっごく面白くてさ、先が気になる〜って、展開の連続でついつい読み続けちゃったよ」
「キミ〜、この流れで面白かったかって聞くかな? 返事は〜⋯⋯うんっ! めっ〜ちゃ面白かったよ! 貸してくれてありがとう」
「んーーー。読書の秋って感じで充実したかな」
「ライトノベルは立派な読書だよ。興味もない活字にむりやり触れさせるよりもよっぽど有意義だと思うよ」
「ねっ。今なら誰もいないよね」
「んっ、少しだけだから」
「えへへ〜、キミと手を繋いで登校できるなんて夢みたいだよ」
「だってキミ、ヘタレじゃない? あんなに私がアタックしてたのにさー。ま、いいけど。夏祭りで告白してくれたし、今もこうして横にいてくれるんだもん」
「そこの角を曲がる前には手を離すね」
「私の方がヘタレだって? そうかもね。けどいいーんだよ、私を理解してくれてるキミがいるから」
「はいっ! さ、⋯⋯って、キミ、まだ手を繋いでいたいの? ───続きは帰りだよ」
「ね、帰りといえば今日はさ、私、栗きんとんが食べたいな〜」
「ふふっ。キミ、わかってるじゃないか。⋯⋯お待ちかね、今日の勝負の内容は〜、美術の授業です」
「今日は校外学習で神社まで写生しに行くし、お互いに描いたものを見比べて勝負しようよ。勝敗は〜、これは負けたなと思った方の負けで」
「いやだよ、第三者に勝敗を委ねるなんて。私たちの勝負は神聖で、勝敗はお互いが納得しないと。でなきゃ罰ゲームにも納得できないじゃん」
「私はね、心の底から負けました。とキミに思った時には奢ってあげたいし、キミが私に負けて納得してないのに奢ってもらったって嬉しくないんだよ。お互いに全力で勝負して、その結果としてのキミからの褒美が欲しいんだ。───だから、ちゃんと私の心を打つ絵を描くんだぞ」
「さ、それじゃあ。今日も一日頑張ろうね」
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