第11話 登校⑥【夏】

「おはよー。今日も暑いね〜」


「あはは、キミも暑いね〜って返すんだ。ほんとだよね〜、夏って"暑いね〜"以外の言葉が出てこないよね〜」


「けどさ、今日を乗り切れば夏休みだよ〜。⋯⋯キミ、どうせ自分は家でゴロゴロしているだけって思ってるでしょ」


「残念でしたー。キミは私と〜、プールに海に夏祭りッ! それから⋯⋯テーマパークッ! あと向日葵畑も見てみたいし、キャンプとバーベキューもいいよね〜。それに、音楽フェスも行きたいよね。ほら、キミの予定はもう埋まってて家でゴロゴロなんてさせないよっ。全力で楽しもうよっ!」


「そんなに時間もないし夏休みの宿題もあるだろう? そこは、ほらキミが頑張るんだよ?」


「うそうそっ! 嘘だから待って〜、置いてかないでよ〜」


「⋯⋯けどさ、───私がキミと今年も夏の思い出を作りたいのは本当だよ」


「へ? 勉強漬けの夏休みはどうかって、キミはドSかッ! さすがの私もイヤだよ〜。勉強もやるしキミと毎日いたいけどさ〜」


「そうそう、今年もお婆ちゃんの実家行くんだけどキミも来るよね? お婆ちゃん、キミも孫みたいに思ってて楽しみにしてるんだよね」


「夏の田舎っていいよね〜。縁側に座ってさ、風鈴の音を聞きながらゆっくりとさ、キミとスイカを食べたり蛍を見に行ったり。そんな時間が私も好きだよ。キミも好きだから毎年来てくれるんだよね?」


「良かった〜。家に帰ったらお婆ちゃんに連絡してもらうね。ほら、こんな時代だけどスマートフォンとかお婆ちゃんは持ってないからさ。───ありがとね」


「で、話は戻るけどさ、キミは他にどこに行きたい? 私が選択肢を挙げたんだから後はキミが選ぶだけだぞ?」


「お婆ちゃんの家に行った時に向日葵畑とバーベキューBBQ、あと週末の夏祭りならって、キミも若者らしくないよね。むー、私の水着姿とか見たくないのかな〜? すこーしだけ凹むんだけど」


「他の人に私の肌を見られたくないって、いやいや、それは恋人に言うセリフだから⋯⋯。って、もしかして遠回しに告白してくれてたの!?」


「ちょっと〜。はぐらかさないでよ〜っ! はぁ、キミってヤツは───期待しちゃうぞ」


「じゃあ、その三つは今年の夏に私とやること。約束だよ? ⋯⋯分かってるって、私も宿題をちゃんと終わらせるのを約束するよ。だからさ、今年の夏も二人でいっぱい思い出作ろうね」

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