第6話 下校③

「わっ、天気予報通りの凄い雨だね」


「そういえば今日はキミの方が早いんだ。ふふっ、いつも待つ人の気持ちが分かったかな?」


「うんうん、わかればいいんだよ。って、その顔は何?」


「馬鹿なことやってたからだろ?って、キミ、私が遅かった理由を知ってるなら手伝ってくれてもよかったよね?てるてる坊主は片付けて帰りなさいって先生に言われてたんだからしょうがないじゃん」


「率先して周りを巻き込んだやつがよく言うって、⋯⋯そう言う割にはキミは付き合ってくれなかったよね?あー、寂しかったなー」


「棒読みって、棒読みしてるんですー」


「あ、あの女の子、傘忘れてるみたいだね。ってキミ、あの子に傘を貸すつもり?───まあ、キミだからね。そうなるとは思ったけど、ここは私の傘を貸してくるよ。だからキミは待ってて」


「お待たせ。⋯⋯私、ちょっとだけキミに言いたいことがあるんだ」


「キミ、この後は私と相合傘して帰るつもりでしょ?それに関しては問題ないよ、⋯⋯むしろ嬉しいし。だけどね、どうせキミは私を家まで先に送ってから帰るだろうし、傘を持つのもキミがやろうとしてたでしょ」


「ならあの子には私が傘を貸してあげた方がいいよね?───それにこれがきっかけでキミへの恋敵になると困るし」


「ひゃっ!雨が降る傘に当たる音も凄いね。⋯⋯その、キミ、やっぱり肩が濡れてるね」


「やっぱりってのはね、朝の答えだよ。私は風邪を引かない理由。こうやってキミが私が濡れないように真ん中から私の方へずらして傘を指してくれるってわかってたから」


「そんなの当たり前だろって、キミ、⋯⋯はぁ。そうだよね、当たり前だよね。だってキミ、だもんね、知ってたけどさ。───ありがとう」


「あっ!ごめん、靴、大丈夫だった?⋯⋯私は大丈夫だよ、水溜りが浅かったから。───きゃっ!⋯⋯こほん、今、結構近くに雷落ちたよね」


「キミは平気そうだね、なんかズルいなー」


「あはは、そうなんだ。⋯⋯そっかー、キミが雷平気なのは私のためかー。ふーん、───ふふっ」


「何でもなーいっ!よしっ、もう大丈夫。ありがとね、キミ」


「あ、キミ見てよ、あそこに紫陽花が咲いてるよ。青や紫の花が雨に濡れて綺麗だね」


「私が生き生きしてるって?ま、まあ。私だってお花は好きだし?⋯⋯ただすぐに萎れちゃうから自分で育てられないけど」


「"覚えておく"ってキミ、そんなこと言われたら期待しちゃうぞ?」


「送ってくれてありがとう。あ、キミ、ちゃんと家に帰ったらシャワーを浴びて暖かくしてね。じゃないとキミが濡れたこと許さないから」


「それじゃ、また───」


「そういえば今日は勝負って言わないのかって?今日はキミの勝ち。何の勝負かは秘密だけど、私は負けを認めるよ」


「い い か ら 、早く帰って!私の大敗になる前に!」


「それじゃ改めて、またね」


「───キミの方が私が風邪引かないように大切にしてくれたんだから、今日は私の負けだよ」

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