第5話 登校③

「おはよー。あ、傘をちゃんと持ってるってことはキミも天気予報見たんだ。昼からかなり強めの雷雨になるってね」


「え、私なら相合傘して欲しくてわざと忘れてくると思った?全く心外だよ〜、だってほら、傘って本来は一人分の面積を想定してるから、二人で入るとどうしても肩とか濡れちゃうんだよね、そんなことしたらキミが風邪引いちゃうでしょ?」


「私は風邪引かないのかって?そこはほら⋯⋯、───キミ、今、凄く失礼なこと考えなかった?」


「はいはい、どうせ私はキミよりお馬鹿さんですよーだ。っふんだ、もう教えてあげない───どうせそうなったらキミは私を優先するんだから」


「ねぇ、そんなことより今日の数学、予習してきたんだけど公式の使い方がわからなくて」


「なるほど〜、そう、そうなんだ。⋯⋯やっぱりキミは頭いいね。凄いわかりやすいし、何だろう、キミに負けたくないから予習してきて、試しに聞いてみたら全部答えてくれるとかキミ、どこまで勉強進んでるの?」


「え、勉強なんて役に立たない?そんなことないよ。少なくとも私は助けられてるし感謝もしてる」


「信じられない?あ、私が感謝してるのは伝わってるんだ。はぁ、良かった〜。幼馴染ってだけでいつも助けてくれるキミが好きだよ」


「え?そんなに軽く好きとか言うな?⋯⋯ははん、キミはどんな意味で捉えたのかな?私は幼馴染としての好きって意味だけど───今はまだにね」


「少しだけ私の話を聞く気になってくれた?⋯⋯私と話をしていたら悩んでた自分が馬鹿らしくなったって?キミ、たまになかなか言うよね、まあいいや」


「あのね、万人受けする教科書を使った授業だけじゃ分からない私みたいな人もいるんだよ?キミは学んできたものをそういう人に伝える力がある。だからね、勉強が出来ること、もっと胸を張って誇っていいんだよ」


「元気でた?よろしい。ならば勝負だよ?将来、キミと私、どっちがより幸せになっているか」


「抽象的すぎるって?あははっ、やっとキミ、笑ってくれたね。やっぱり天気が良くないと気分も沈むよねっ」


「だけどね。この勝負に勝ち負けはないんだよ」


「どういう意味かって?んー、そんなのは自分で考えてね。キミ、勉強は役に立たないって言っていたけど、"自分で考えて行動する、それこそが勉強で学ぶべきことだ。"お父さんの受け売りだけど私はこの言葉が好き」


「キミもいい言葉だと思ってくれるんだ。うん、ありがとう」


「あ、けど私のお父さんって難しくてね。"社会人は勉強の基本ができていないと意思疎通が出来ない。だからそれはそれ、これはこれでテストは頑張れ"ってよく言ってくるんだ」


「えー、キミもそう思うの?けどキミと会話が成立していれば私は及第点だよね?」


「しょうがない、置いていかれないように私も勉強を頑張るよ。───これでも全力でやってるんだけどな〜、キミが遠いよ」

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