第4話 下校②

「⋯⋯もう、またキミの方が遅い〜。私が今日は何分待ってたと思う?遅くなるなら遅くなるで連絡くれればいいのに」


「え、あれ?うそっ!私たちの日直、今日だっけ?ごめんなさい!ってあれ?⋯⋯キミ、なんで一人で日直の仕事を終わらせてるのかな?私の仕事でもあるんだから、それこそ教えてくれてもいいよね?」


「朝のことが嬉しかったからって?キミ、単純すぎない?まあ、そこも良いところなんだけどさ」


「もうっ、照れないの。とりあえず、ありがとね。⋯⋯だけど、二人でやった方が早く終わるし───そういう理由で待つのはイヤじゃないけど、キミと少しでも私は一緒にいたかったかな。それに放課後の教室に二人っきりなんてもうあと何回⋯⋯、ううん、何でもないっ」


「あー、夕陽が綺麗だね〜。絶好の寄り道日和だ。───ねえ、あそこの駄菓子屋覚えてる?キミ、いつも袋いっぱい買ってたよね」


「あははっ!ちゃんと覚えてるよ。キミのことなら私は忘れないよ」


「いや、さっきのはノーカンっ、ノーカンだよ〜。別に早く帰ってゲームするの楽しみにしすぎて忘れてたとかないから」


「朝に勉強を疎かにしないって自分で言っておいてそれかって?日直は勉強じゃないからっ!もうキミ、私が弱みを見せるとすぐに調子に乗るんだから。とにかく、ノーカンなんだからキミは忘れて、いいね?───私はこんな日もあったなって忘れないけど」


「大きくなって近くで見ると駄菓子屋さんって小さいよね。昔はお菓子の国みたいに思えていたのが嘘みたい。私が好きなお菓子、キミならわかるよね?」


「そうそう、この麩菓子ふがしだよ。流石キミだね。え、買ってくれるの?ありがとう〜」


「って、ちょっと!お婆ちゃんみたいってどう言う意味!?⋯⋯まあ、確かに、鯛焼きとかお饅頭、麩菓子に最中モナカとか私の好きな食べ物って少しだけ年寄りくさいかなともたまに思うけどさ」


「私といると老夫婦みたいで心が安らぐって意味って?⋯⋯はぁ、キミってやつは無自覚に告白すっとばしてプロポーズ、どころじゃないね。───っもう!私の負け!お婆ちゃんでいいよ。だからさ、お婆ちゃんになった私を見れるように頑張るんだぞ」


「っと、あれ?キミはもしかして麩菓子で誤魔化そうとしてる?鯛焼きもちゃんと買ってもらうからね?」


「太るって?そんな太らないよ〜。だって私太らない体質だし大丈夫、大丈夫。あ、見えてきたよ。⋯⋯キミ、そんなに財布の中を確認しなくても大丈夫だよ、私が頼むのは一番安いのだから」


「あのっ、鯛焼き 1つ下さい。はい、つぶあんでお願いします。───ありがとうございます」


「お金出してくれてありがとね。───はい。ん?何って半分こだよ。いくら私が太らないからってお腹は膨れるんだぞ、それに日直を一人でやってくれたお礼。ほら、熱いうちに食べよ」


「美味しいね〜。たまにお母さんが買ってきてくれる鯛焼きとは全然違うよ〜。焼きたてだからかな?それとも、キミと一緒に食べているからかな?⋯⋯なんてね」


「さ、お腹も膨れたことだし帰ろっか。⋯⋯お腹いっぱいで夕ご飯がすぐには入らないかもだけど、お母さんにはキミに鯛焼き奢ってもらう事は伝えてあるし、量を減らしてくれているはず、たぶん」


「無理して食べなくても良かったんじゃないかって?朝からの私の楽しみだったんだからその選択肢はないんだよ」


「もう家に着いちゃった。楽しい時間ってすぎだよね。───キミ、忘れてないよね?ここで別れた瞬間から私たちはライバルトレーナーだからね?」


「わかってるって。ゲームは勉強してから、でしょ?それじゃ、また明日ね!どこまで進んだか勝負しようね」


「こらっ!キミ、今、呆れたでしょ。───それじゃ、また」

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