第3話 くろ妹:後ろ来てる!

『配信可能です。モニターのスタートボタンをタップで配信開始。配信終了。音量も画面で調整可能。自分の声を聞くか聞かないかの選択も可能。ステータス名をアバター名に変更済み』


 俺の前に厳つい見た目のドローンがそこそこ大きなモニターをぶら下げて飛んでいる。


 そこには家で目が死んでいる状態の俺の映像とコメントとその他ボタン等々の機能、それに……。


「これ……とんでもないクオリティなんだけど。というかまんまぬるぬるアニメじゃん」


 俺のアバター、戦いに赴く3Dだけど2Dっぽい見た目をしたキャラクターがいた。


 耳にかかるくらいの銀髪でイケメン、細身で青と緑のオッドアイ、ザ・アニメ顔。


「うーん。とりあえずこれは美味しいネタだよな……。物は試しって言うし、配信スタートしてみるか」


 配信用に気持ちを作る。

 これをしないと配信が美味いこといかないんだよな。

 なんせ配信の時の俺は……。


「お・ま・た・せっ! 無所属無属性現魔法を封じられた魔法使い! 無夢霧白夜でーすっ! いやぁ、ちょいっと配信空いちゃったけど元気してたか? 俺はリフレッシュして元気も元気! もうビンビンよっ! あっと……下ネタじゃないからな! これ! あははは! じゃ、ふざけんのも大概にして今日何やるか発表と行きますか!」


 陰りを見せない陽キャ、軽めの性格。


 ネットでウケるように狙いに狙ったキャラ。

 親にこれを見せるのはちょっと……いや、大分しんどい。


―――――

■チャット↓【同時接続5人】

くろ妹:マジ引退覚悟してたわ

あのこのP:久しぶり~、ってなにこの技術!?

イケメン戦国は人生:マジのダンジョン?

くろ妹:個人勢でこれって……スタジオ買った?

あのこのP:白夜は大富豪だった!?

―――――


 早速コメントが流れる。

 いつもの面々もこの状況にかなり驚いているみたい。


 何か変な誤解されてるけど……一先ずは無視してやっぱ初見ゲーム実況みたいな感じで一緒に進めるのがいいよな。


 情報は惜しみなく公開してくか。

 これでどうかなるわけでもどうかしていくわけでもないだろうし。


「実はこれ俺のスキルなんすよ! そんで今日からはこのスキルを使ってレベル1から始めるダンジョン攻略をしてこうと思いまーすっ! てなわけで、まずはステータス!」


―――――

名前:無夢霧白夜

職業:未選択

HP:10

レベル:1

攻撃力:5

防御力:5

敏捷性:3

会心威力:10

スキル:ヘイトテイカー、VR身体

スキルポイント:0

―――――


 よっわ。

 改めて自分のステータス確認したけど、どんなRPGでもこの数値は低いって。


 ダンジョンのシステムがゲーム仕様ってのは知ってたけど、これ難易度はベリーハードかそれ以上の基準じゃないか?


 誰だよ、こんなダンジョン作った奴。


「うーん。俺が思ってた以上にステ低いっすねえ、これ。今日はモンスター倒せるまで耐久になるかも」


 っていうかテンション上がって気にする余裕なかったけど、これ死なない?


 いや普通にまだまだスライムがトラウマなんだけど。


―――――

■チャット↓【同時接続5人】

くろ妹:ひっく

あのこのP:ひっく

イケメン戦国は人生:ひっく

イケメン戦国は人生:露骨にテンション下がってて草

あのこのP:まずはヒット&アウェイがいい感じか?

くろ妹:がんばれ

―――――


 他人事だと思って……。


 まぁ楽しんでくれてるみたいだし、ちょっとは頑張るけど。


 流石に見苦しいもの見せることになるなら配信ぶちぎり――


「ぷぺぺ!」

「ぺぽ!」

「ぷひ!」

「やっば。もう来た」


 岩陰からスライム。しかも3匹。

 そういえば俺まだあのくそスキル持ってて……。


「取れ高あるのは嬉しいんだけど、そうじゃないんだよなあっ!! 空気読めよスライム!」


―――――

■チャット↓【同時接続5人】

くろ妹:逃げて!

あのこのP:いきなりで草

イケメン戦国は人生:迫真

くろ妹:後ろ来てる!

―――――


「え?」


 チャット欄に書かれたコメント。

 それを読んで振り返ると、俺の背後には既に攻撃を仕掛けようとするスライムが。


「ぷぺっ!」


 目一杯の力で放たれる体当たり。

 それを避けることは不可能。


 当たった。

 最悪死――


「――んでない。死んでない。痛くも、ない……」

『スキルによって本体がダメージを負うことはありません。ただし、アバターは一定の攻撃を受けると一時使用不可となります。そしてデスペナルティとして本体レベルが1減少します。アバターの耐久値がステータスに追加されました』

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