特別な2人組 5
最後の挨拶の後、私と直央ちゃんは、自分たちの命と周りの人たちの安全のために、指示以外の技を絶対にやるな、と徹底的に絞られ、教室に戻るように言われた。次の地理の授業に間に合うかギリギリだったので速攻で着替えて必要なものを机の上に取り出た直後、号令がかかって授業が始まる。地理の先生は厳しいことで有名なので、スマホで連絡を取ったり、手紙を回したりしようものなら容赦なく叱られる。
悶々とした気持ちで北方領土や南の鳥島なんかの話を聞く長い長い地理総合に耐えた私は、授業が終わってすぐ瀬那と美羽音に声をかけようとした。
「ごめん、体育の先生に呼び出されちゃって」と2人はそそくさと教室から出て行った。
体育の授業のあと、説教の対象になったのは私と直央ちゃんだけではなかった。先に私と直央ちゃんを残らせて、昼休みに瀬那と美羽音、戸部さん、武藤さん、C組の
リモンの通知でも確認しようとスマホを手に取る。誰からも、どのルームからも新しいメッセージはなかった。あまりに手持ち無沙汰になって、クラスのルームの人数でも見ようと、メンバーの一覧を開いた。
クラスのメンバー数は40人。
すぐさま私は教室中を見回した。ざっと数えただけだけれど、机の数は41。
あ、自分は表示されないのかと思ってスマホを見ると、恥ずかしながら一番上に自分の名前が表示されていた。
どういうこと? と思ってクラス女子のルームも見てみると、1人足りないくて、当然自分の名前は一番に表示されていた。
「アイカ?」
覗き込むように声をかけられて、「うわあ!」とのけぞった。瀬那と美羽音がいつの間にか戻ってきていたのだ。2人はいぶかしげに私のことを見るも、「席、ありがとね」と瀬那は自分のお弁当を取り出す。
「何かあった?」
美羽音が聞いてきたけれど、「ちょっと驚いただけ」とスマホをポケットにしまう。
「それより、2人はどうして呼び出されたの?」
瀬那と美羽音は顔を見合わせると、先にご飯を食べちゃおう、と言った。
しばらくして、うつむきがちな2人の箸が止まった。
「この前の体育でさ、まず3人で組んで、余った人がいたらジャンケンしてその人と組めばいいじゃん、って言ったじゃん?」
覚えている。3人で約束した。けれども、私はまた破ってしまった。
「今回アイカは悪くないの。だって別のクラスの人と組まなきゃいけないんだから、C組の人を探しに行くのが当然なんだよ」
美羽音がまっすぐ私のことを見た。しおれる私のことを見てか、怒ってないよ、と言っているようだった。
「先生にも言われたけど、どっちかって言うと、悪いのは私たち。
私は部活が一緒の子とか同じ中学の仲いい子とかいなかったから、クミちゃん、と3人で組んでいたの。結局誰もあぶれることはなかったから」
クミちゃんこと宍戸久実は、美羽音と同じ委員会の子らしい。
薄々感づいてはいたが、瀬那と美羽音がもう1人C組の子を入れて3人組を作っていたわけだ。
「まあ、呼び出しの理由は、休みがいるのがわかっているのだからわざわざ3人で組まなくていいでしょ、ってわけだけれど……」
瀬那と美羽音は顔を見合わせた。
「F組の女子は23人だからどうしても余るのは仕方ないって言われたけど」
「今日は44人しかいないんだから2人組しかできないのわかってるでしょって」
わけもわからないと困り顔の瀬那と美羽音が、私をそろって眺めた。
「そうなんだよ!」
私は立ち上がってスマホのクラスルームを見せた。
「だってウチのクラスって、41人だよね? さっき席の数を数えたから間違いないはずだし。でも、うちのクラスのルームには40人しかいないの。
もしかして、リモンに入っていない人がいるんじゃない?」
2人も立ち上がって、教卓に向かった。言わなくても、座席表を見るために。
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