第5話 修学旅行

「すごーく久しぶりに大吉引いちゃった。頑張って清水谷の方まで行って良かったー。この大吉、どこに飾っておこうかな」//はしゃいでる感じで


「それでこのおみくじになんて書いてたのか? んー、おみくじで凶を引いた君には内緒。まぁ、私のことを幸運の女神として崇め奉っても良いんだよ?」//いじわるそうな感じで


「多分君は運を使いすぎたんだね。そう、この私と一緒に京都を回るためにね」


「友達が欲しくてもできない君となぜか友達ができにくい私。この運命的状況のおかげで最高の修学旅行が完遂されるんだから」


「先生やみんなの目線が、まるで道端で段ボール箱に入っている一匹の猫が拾われたような安堵の目だったね」//可哀想に


「まぁまぁ、そんなに深刻な顔しないでよ。誰も友達がいないことがダメだなんて言ってないでしょ」//励ます感じで


//SE 頭をなでなでする音


「ずっと私が側にいますからねーよしよし」


「お、あそこにいちごあめが売られてる。……仕方がない、今回は私がおごってあげよう。気分が良いからね」


//SE 小走りする足音

近くから遠ざかる感じで


//演技 少し遠いところで


「すみませーん、いちごあめ二本ください————ありがとうございます」


//SE 小走りする足音

遠くから近づいてくる感じで


「お待たせ。はい、どうぞ。もうちょっと下ったところの日陰で食べよっか。足も結構疲れてきたし小休憩にしよ」


「え? あそこに売ってるきゅうりの浅漬けも食べたい?」


「んーっ、よし、買ってあげよう! あーなんて優しくて太っ腹な彼女なんでしょうか」//自画自賛


「というか君、私から幸運じゃなくて金運を吸い取ろうとしてない?」


「気のせい? ん-じゃあ買ってくるからこのいちごあめ持ってて」


☆ ☆ ☆


//SE 手のひらを合わせる音


「せーのっいただきます」


「……どうしてきゅうりの浅漬けを一本しか買ってないのか? いやー、なんというか別にそこまできゅうりが食べたいってわけじゃなかったからお試しでちょっともらおうかなーって思ってさ」


「つまり? もう、察しが悪いなー。つまりこういうことだよ」


「あーむっ」


//SE きゅうりを食べる咀嚼音


「カリコリカリコリ。ん-っ! このきゅうり結構いけるね! さっぱりしててめっちゃおいしい! はい、君もどうぞ」


「これってもしかして……みたいな顔してるけど、君が考えてる通りだよ。はい、口開けて? 食べさせてあげる」


「こんなに大勢の前で? 当たり前でしょ、私たち付き合ってるんだからこういうことしないと」


「ほら、間接キスとあーんを同時に楽しめる絶好のチャンスだよ。ほれほれ、本当にいらないのー?」


「食べるからきゅうりを動かさないでくれ? おやおやそんな簡単に私のきゅうりを食べれると思ったら大間違い——」


//SE きゅうりをかじる音


「あぁ食べられちゃった」


「そんなに私と間接キスしたかったんだ」//ニヤニヤしている感じで


「きゅうりが食べたかっただけ? まぁまぁ照れるなよー。ていうかきゅうりをかじる音、結構良いよね。味はどう?」


「すごくおいしい? それは良かった。それじゃあデザートのいちごあめを食べよう!」


「ではでは、あーっむ」


//SE いちごあめを食べる咀嚼音


「カリッパリパリ。おっ、ジューシーでおいしい! しかもこの食感、お口とお耳が癒される~。あっそうだ、きゅうりのお返しとして君のいちご一つちょうだい」


「どうしてって? 私が買ってあげたんだし、四つも棒についてるんだから一つぐらいもらっても良いでしょ? ……はい、勝手に食べちゃいます」


//近づいてくる感じで


「あーっむ。ん~おいしい」


「え? これ食べかけのいちごだった? ……ってなんで一口で食べなかったのよ!?」//動揺


「咀嚼音を楽しんでたから? で、でもきゅうりで間接キスしたわけだし。特に問題ないというか意識なんてこれっぽっちもしてないし」//恥ずかしい


「実は俺の食べかけが欲しかったのか? は——はぁぁっ? そんなわけないでしょ!」//ムキになってる感じで


「……何よそのしてやったり顔。も、もうそろそろ移動しよ。足の疲れも取れたことだし」//自分を落ち着かせる感じで


「さぁ、この京都美人にも引けを取らないはんなりの同義語である私とめいいっぱい京都を満喫するわよ!」//自信満々に


「どこがはんなりなのか? 初めてね、君が私に喧嘩を売るなんて。もちろんその喧嘩、買うわ。これでもくらえ! こちょこちょこちょこちょ!」


「やめろと言われてもやめてあーげない」//子供のような感じで


「全然休んだ気がしない? 私が楽しいからいいの!」

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