入学式

「生徒会長、あいさつ」

 そう呼ばれて、壇上であいさつをされたのが、先輩だった。


 左右のおさげ髪に、メガネ。

 堅苦しいあいさつがまだ続くのかと思われた時、

「新入生の皆さん、ようこそ。

 生徒を代表して、皆さんを歓迎致します」

 先輩の声が、講堂を包み込んだ。


 先輩は、校舎裏の山の頂上から見る景色の素晴らしさを語った。

 そして、この恵まれた環境で3年あるいは6年間を過ごせるわたし達を祝福した。


「皆さんも、ぜひ、山に登ってみてください」

 そういって、あいさつは、締めくくられた。

 この時、わたしの胸中に、薄紅色の風が吹いた。


 まるで、桜の花びらが風に舞ったかのような

 あたたかな風が。


 新入生であるわたしの不安を打ち消した、

 先輩の堂々とした姿。

 凛としたまなざし。


 その語りかけるような口調に、

 わたしは、引き込まれていた。


 先輩の姿を、いつまでも目で追って……














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