第22話 日直当番
教室に着くとアヤ先生が開口一番に挨拶をくれた。
「おはよう、柊君。ふぁあ・・・」
「おはようございます、アヤ先生。なんだか眠そうですね」
「昨日はあまり寝付けなくて・・・でも大丈夫ですよ、授業をすると元気になれますから。それより柊君にお願いしたい事があるんですけど・・・」
「何でも言ってください。どんな事でも手伝いますよ」
「じゃあ、これを渡すよ。学級日誌です。日直の仕事を頑張ってこなしてね」
「そうか・・・とうとう回ってきてしまったのか・・・」
面倒ごとを掴まされ、ため息が自然と溢れてしまう。
「こら、ため息をつかないの。日直当番は平等なんだから」
「分かりました。なるべく最善を尽くせるように頑張ります」
「それでは、頼みましたよ。柊君」
そう言い残しアヤ先生が去っていった。学級日誌をペラペラとめくり今日のスケジュールを確認していると、不敵な笑みを浮かべたあかりがふらりとやってきた。
「今日の日直のシュウ君、黒板が汚れていますよ。早く綺麗にして下さい」
「特に黒板が汚れている様子は見当たらないけど・・・」
「心の目で見たら汚れているよ。それともシュウが日直の仕事をサボっていますとツッキー先生に報告すればいい?」
「こいつ、人の弱みに漬け込んで・・・」
完全に自分をからかって遊ぶつもりなのに不思議と嫌な気分ではなかった。渋々、黒板消しを手に取りチョークの跡を拭き取ると背後でクスクスと聞き慣れた笑い声がしたが、無視を決め込んだ。淡々と仕事を行っていると再びアヤ先生に声を掛けられる。
「柊君、ここまで黒板を綺麗にしてくれて本当にありがとうございます」
「いえ、日直としての仕事をしたまでです。やっぱり黒板が綺麗だと気持ちよく授業に進めますから」
「その調子で引き続きよろしくお願いします。日直さん」
2人のやり取りを不服そうに見つめ、膨れっ面をした奴がいる。もちろんそんな人物はあかりの他にいない。あかりの悪ふざけに一泡吹かせて気が清々した。そして程なくアヤ先生が登壇し朝礼が開始された。
「そ、それでは日直さん、朝の挨拶をお願いします」
「き、起立、礼、着席」
「えっと、本日の連絡事項ですが_」
初日は緊張して、言葉も詰まることが多かったアヤ先生も、今では自然な表情で話せるようになっていた。柳原先生はアヤ先生をずいぶんと心配していたが、きっと取り越し苦労に終わるだろう。その考えが浅はかだと気付いたのは、もう少し時間が経ってからのことだった。
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