第5話
どこを見渡してもあたり一面、風に揺れるマリーゴールドが見える。
「やば…めっちゃ綺麗……」
*「だろ?このマリーゴールドを隼人に見せたかったんだ…」
少し日が傾き紫色に染まりはじめた空と生い茂る緑…
そしてそれに良く映える綺麗な黄色のマリーゴールド…
あまりの美しさから俺は思わず息を飲む。
*「……隼人……もうすぐ帰っちゃうんだよね…」
綺麗なマリーゴールドに見惚れていると、ぼそっと小さな声でそう歩夢が呟いた。
ゆっくりと歩夢の方に目をやると夕陽に照らされて歩夢が紅く染まっている。
ゆっくりと手を伸ばし…
歩夢のその頬に触れると…
俺の心が…震えた。
「好き…俺…歩夢が好き…」
*「え……」
少し驚いた顔をした歩夢を見つめて俺はその紅く染まる唇を塞いだ。
初めてのキスなんてどうすればいいか分からない。
だけどなぜか不思議と身体と手は勝手に動き、無我夢中で息が止まりそうなほどのキスをした。
息をする暇を惜しむほどお互いに求め合い触れ合う。
*「…隼人に…抱いてほしい…」
息を切らしながら少し目に涙を溜めた歩夢がそう言った。
「でも浴衣が……」
*「隼人に見てもらうためだけに着たから…お祭りは口実…ダメ?」
「…でも…俺はじめてで…うまくできるか…」
*「大丈夫だよ…」
そう言った歩夢はやっぱり俺よりも年上で…
俺を1本の木にもたれ掛からせるように座らせて俺をリードする。
「ここで?誰か来たら……」
*「こんなとこ…だれも来ないよ…」
ひと気の全くないマリーゴールド畑…
響くのは自然の騒めきと俺たちの淫らな息遣いだけ…
歩夢は俺の上に跨り浴衣をはだけさせて俺を誘う。
吐息まじりに歩夢に呼ばれる自分の名前に身震いするほど身体が反応した。
木々の精霊達は俺たちのイケナイ営みを監視してどんな罰を与えるのだろうか…?
そんな罰さえも怖くないと思えるほど…
俺はこの時…
歩夢という1人の人間に溺れていたのかもしれない。
汗が混ざり合い気持ちを確かめるように唇を重ねては吐息を漏らす。
「………歩夢好きだよ……」
*「…僕も……」
俺たちは言葉と共に身体でお互いの気持ちを確認し合った。
つづく
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