第3話

歩夢は汗でシャツが微かに透けていて、俺はドキッと胸を弾ませ思わず視線を逸らす。


*「おまたせ〜!!」


祖父「そんな汗かいて…ここに座れ…」


じいちゃんは歩夢にそう言って奥の部屋へと戻って行った。


*「ほらこれこれ!おばあちゃん家にあった僕と隼人の写真!」


そこには嬉しそうな顔して歩夢に抱きつく俺と変顔をしてふざけている歩夢が写っていた。


「歩夢変わんないねw」


*「そう?隼人だって変わんないw」


「だねw 歩夢はいつからこの街にいるの?」


*「僕が中学になってからかな?おばあちゃんの具合が悪くなって家族でこっちに引っ越したんだ。」


「そっか…ウチのじいちゃんのとこには時々来てたの?」


*「僕、中学の時から牛乳配達のバイトしててね?おじいちゃんの家に牛乳を毎日配達してるんだけどそれが縁でたまに家へ遊びに来てたんだ。でも、ある日の朝、箱を見ると前の日の牛乳が入ったままで不思議に思ってさ…でも、早朝だったから声かけるのもなって思って昼前にまた、この家に来たの…そしたらおじいちゃんが倒れてて…僕が救急車呼んでそれから心配でおじいちゃんの入院してた病気に毎日、顔出すようになったの。」


「え…じゃ、じいちゃんを助けてくれた親切な男の子って…歩夢だったってこと?」


歩夢は…俺の命の恩人であり…じいちゃんの命の恩人でもあったんだ…そう思うと益々、歩夢への好意が強くなっていく。


*「親切ではないよ?当たり前のことをしただけ。」


そう言い切る歩夢の横顔があまりにも綺麗で俺は見惚れてしまいそうだった。


「ウチの身内では話題になってたよ?」


*「えぇ?話題?」


「イケメンだってw」


*「なにそれやめろよ…////」


そう言って照れて目を逸らす歩夢の横顔にまた、俺の心臓がドキッと返事をした。


自然と俺の手が歩夢の頬に導かれる…


そんな表現があっているのかどうかも分からないけど…


これだけは分かる…


俺…歩夢に恋してる…


20センチ…


10センチ…


5センチ…


少しずつ歩夢のぷっくりとした頬に近づいていく俺の手…


あともう少し…


もう少しで…


正直すぎる俺の心臓が暴れ出した時…


祖父「スイカ切ったから食え!!」


そう言ってじいちゃんがスイカを持って来ると思わず俺は伸びた手をサッと隠した。


スイカを食べ終えるとほっぺにスイカのタネを付けた歩夢が俺の顔を覗き込む。


*「なんか元気ないね?どうした?」


「いや…別に…」


*「そう?あ!そうそう!明日さ?近くの神社でお祭りあるんだけど隼人、一緒に行かない?浴衣着て一緒に行こう?」


「でも…俺浴衣ないし…」


祖父「甚平ならあるぞ…」


俺たちの話を離れた所で聞いていたじいちゃんがそう言った。


*「いいじゃん!絶対に甚平似合うよ!一緒に行こう?」


「でも…じいちゃんが…」


祖父「ワシは大丈夫だから行ってこい。」


そうして、俺はじいちゃんの後押しもあり歩夢と夏祭りに行くことになった。



つづく

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