第13話 副将軍辞任
空想時代小説
前回までのあらすじ
小田原・石垣山にて政宗の影武者が秀吉を殺める。その後、秀吉軍は崩壊し、北条家が巻き返す。政宗は佐竹を攻めると見せかけて反転し、宿敵相馬氏を倒す。以後、北の南部氏、越後の上杉氏を降伏させる。上杉氏に従属していた真田氏も降伏してきた。その真田氏の上州の領地を欲した北条氏と戦い、これを滅ぼす。ここに政宗の東国支配が決まる。10年後、西国を支配した徳川家康が幕府を開き、政宗は副将軍となり、家康とは不干渉同盟を継続することとなる。だが、家康が亡くなり、秀忠の時代となると不穏な動きが見られ、信州と小田原で戦が起きる。秀忠は家臣の勝手な行動と主張するが、虚偽であることは明白だった。そして政宗は反撃を開始する。水軍の活躍もあり、秀忠を隠居に追い込むことに成功する。
年があけて1618年、3代将軍家光(13才)の将軍宣下の式が京都伏見城で行われた。蟄居している秀忠も前将軍として参列しているが、覇気はない。政宗(51才)も副将軍として最上位に位置している。京都守護職の秀宗(27才)も政宗の近くに座している。宣下の式が終わって、家光は政宗を呼んだ。政宗には嫡子の忠宗(18才)が連れ添っている。将軍への顔見せである。
「上様、この度はおめでとうございます」
「なんの、これも全て政宗殿のおかげじゃ。礼を申す」
「もったいないお言葉、恐悦至極に存じます。上様は、大御所さまに似ていらっしゃる。ぜひ、大御所さまのまつり事を学ばれるとよいと思います」
「うむ、わしもじじのまつり事が好きだ。正直、父上はせこかった。母にも弱かったしな」
「そんなことはありませぬ。ただ、先が見えなかっただけのこと」
「先を見るとは?」
「それは、日の本の平安でございます。大御所さまとわたしめの大きな約束は、すべてそのためでございました」
「不可侵同盟だな」
「そうでございます。いくさがあれば、人々が困ります。人々が困れば、我ら武士も困りまする。平安であれば、皆が豊かになり、我ら武士もまつり事がやりやすくなります」
「であるな。父は、そのことが見えていなかったのだな。わしはじじを見習って不可侵同盟を守ろうぞ」
「ありがたく存じます。これで日の本の平安が守られます。ところで、今回、上様にひとつお願いがありまする」
「願いとは、何なのだ?」
「実は、隠居いたしたく、副将軍を辞任したいと思っております」
「なに、隠居とな! まだ、そんな年ではないだろうに。お主には副将軍として、助けてもらわねばならぬ」
「いえいえ、拙者も年でござる。信長公の50才を越えてしまいました。大御所さまが長生きだったのです。副将軍には、この忠宗を任命してくだされ。若い者同士、話があうでしょう。拙者にようなじじいが出る幕ではないのです」
「うーん、勿体ない話だ。お主を頼りにしていたのだが・・・」
「実は、拙者にはしてみたいことがあります」
「何なのだ?」
「実は、異国へ行ってみたいのです」
「異国とな?」
「まずはルソンへ。先のいくさでルソンから多くの水夫を連れてまいりました。その者たちを帰国させなければなりませぬ」
「そうか、異国か。派手なことが好きな政宗殿らしい。わかった。隠居を認めよう。忠宗殿、副将軍のつとめよろしく頼むぞ」
「ははっ!」
忠宗は、年下とはいえ既に威厳を漂わせている家光に恐縮していた。
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