第135話 残りゆくものは、事実だけ。

 ある年の日本シリーズ。特に劇的な終わり方をした年のこと。

 どの年のこととか、対戦球団がどことかはどうでもいい。

 問題は、その最後の試合後を評した、ある書籍の著書の弁。


そこには、事実しか残っていなかった。


 おおむね、そんな趣旨の弁。

 うすら寒さのようなものしか、そこにはない。

 寂しい話のヘチマの、そんな情緒論の入る余地などない。

 寝言は寝て言えとか、そんなことを対手に返す要もない。


そう、そこには、事実しか残っていないのだから。


 それは、彼が評したその日本シリーズのことだけの話ではない。

 私の、あなたの、日々の暮らしで起こったことひとつひとつが、

 そう、事実として積み上がっていくだけなのだからね。


 テメエの浅はかな価値判断を入れ込む愚かさよ。

 テメエの浅はかな言葉で、勝手に地獄にはまる。


どうせ、そこには、事実しか残りえないのである。


 だが、そんなこともわからぬ愚か者どもは、今日もまた、

 てめえの感想のようなものをほざき、酒も飲まずに酔っている。

 ひどいのになると、それを使って人に絡む馬鹿もいる。

 ネットのカキコミにも、そんな馬鹿は決まって湧き出ている。

 かかる愚か者どもに与えられる言葉は、これ一択。


酔生夢死(すいせいむし)


 酒も飲まずに、自分の言葉に酔い、そして、死んでいく。

 なんと愚かしき人生であろうか。

 最後にもう一度、繰り返す。


そこに残っていくのは、今起きた事実だけである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る