第21話・カオス帝国の侵略1

「レン、俺とルリさんは狩りに戻る。絶対についてくるなよ、ついてきたらウインドブレイドを頭に叩き込んでやる」


「えーーーー!なんで!!!」


抗議するレンとアヤトを残して、ルリさんのLVを9まで上げた。

日没だ。


協会へ帰って来てルリさんが精算する。


「ゼロさんどうぞー」


マリさんに呼ばれて向かう。


「お疲れ様でし・・・た?」


「お疲れ様です。精算をお願いします」


「・・・」


マリさんの目線を追ってみると俺のネックレスに目がいっている。

この展開は・・・


「ゼロさん!」


「はい!」


「そのネックレスはなんですか!まさかディレイのネックレスなんていいませんよね!」


「そうです・・・」


今日のドロップ品だし・・・


「昨日は見ませんでした、どうしたんですか?」


「デンジャラスドッグを倒しました」


「な!!!デンジャラスドッグって初心者の森のレアボスですか!」


「そうらしいですが」


「1年経ったんですね。

それにしても大丈夫でしたか?レアボスは、適正LV帯では遭遇すれば全員死んでしまいます。そのため、適正LVより上の人がパーティーを組んで狩るのです。で、ゼロさんはソロで狩ったのですか?」


「はい・・・」


「もうめちゃくちゃですね。ゼロさん、あなたは異常すぎます。私が暴走してしまうのも大目にみてくださいね」


暴走するのを大目にみるってどういうことだ?


「訳すなら、私に真実を教えてくださいという事です」


「すみません、協会長に許されているので黙秘します」


「もーう!次!私が暴走したら受け止めてくださいね!」


いや、受け止めるのはおかしいだろ。

受け止めたらゴールインじゃないのか?


「では精算します。悪魔の心臓120個、骨35本、クエスト報酬金貨1枚で金貨13枚と銀貨7枚ですが、ダンさんとサティさんへ金貨3枚の支払いとなりますので、金貨10枚と銀貨7枚のお渡しです」


「ありがとうございます。」


そういえば、MPポーションがあと1個しかない。

100個ほど調達しておこう、金貨4枚を支払った。

雑貨屋のおばあちゃんから、男前になったねと言われた。なにか変わっただろうか。


宿に帰って寝る準備をする。

今日はユニークのドロップ嬉しかったな~。

昔にレア品をドロップしたときの感動が蘇るぜ。

裏世界での性能チェックが楽しみでしょうがない。


----15日目裏世界----

チュンチュン。


今日も今日とて爆風の森だ。間違えた、悪魔の森だ。

爆風の杖が印象に残りすぎて間違えますわな。


さて、とりあえずディレイスペルのネックレスだが、ウインドブレイドを待機させてみよう。クールタイムを待つ。もう一度ウインドブレイドを待機させる。クールタイムを待つ。それ以上は待機できず、2つまでが待機させられる数だ。さあ、準備は整った。


後に色々と使える魔法が手に入れば、ディレイスペルの使い方も千差万別になるんだろうけど、今は最高火力を出してみる。


スケルトンウォーリアーだ。


「くらえ!ダブルウインドブレイド!」


大型の爆風の刃6本が全てを消し飛ばすかのように飛んでいき、スケルトンウォーリアーを跡形もなく消し去る。


言葉が出ない。

これは過剰火力だ。考察すると、待機させる魔法もダブルマジックが適応される。

そして、ウインドブレイドは俺の魔法の中で最高火力だと思う。

それを、6本同時に放てば、おかしいダメージが出るのは間違いない。

LVは1上がってLV29。LVの上がりも順調だ。


日没だ。

MPポーション12本使用!徐々に消費が大きくなっている気がする。


今日の成果は骨30本、悪魔の心臓117個。




----16日目表世界----

チュンチュン。

カンカンカンカンカンカン。


なんの音だ?


コンコン。

「ゼロさん、起きてますかー?」


「今起きました、ルリさんなにかあったのですか?」


ルリさんは食堂でご飯を食べながら話しましょうと言ってくれた。



「カオス帝国が襲撃してきたのです」


「カオス帝国?」


「ええ、実は西にカオス帝国という王国に並ぶ国土を保有した国があります。

その国は、イーリス王国へ度々戦争を仕掛けてきているのです。そして、主戦場は西の町エアを越えたあたりとなり、戦闘となっております」


まじか!朝起きたら戦争になっていたとか、すげーな。


「そして、冒険者はこの戦争に参加するかしないかを決めることができます。

説明いたしますと、冒険者協会は国ごとに支部があります。そのため冒険者協会は国同士の戦争には中立の立場をとるため、関与しない事になっております。但し、冒険者が自主的に参加する場合には問題がないので、ゼロさんが冒険者協会へ行き戦争に参加すると言えば、参加できるのです」


「そうなんですね、ルリさんは参加するのですか?」


「いえ、申し訳ないのですが戦争への参加はEランク以上という事になっております」


「そうでしたか、ルリさんはLVがまだ低いので心配になっただけです。戦争に参加しなくて、ほっとしています」


こんな、LVの低いアーチャーなんて戦争に出たら一瞬で死にそうだもんな。


「ご心配いただき、ありがとうございます」


「すぐに冒険者協会に行きます」


「参加するのですか?」


「はい、私もイーリス王国を守るお手伝いはできるかなと」


この戦争は絶対に参加するぜ!こういうイベントは参加が絶対だ。


「いってらっしゃいませ」


「今日は、ルリさんのLV上げができないかもしれません」


「父には言っておきます」


「よろしくお願いします」


ルリさんと別れ、冒険者協会に入る。

とっても人が多い、戦争で殺気立ってる感じがするな。


「マリさんすみません、戦争と聞いたのですが」


「そうなんです。現在、カオス帝国がエアの町へ向けて侵攻しており、そこを王国軍が迎撃しています」


マリさんが戦況を説明してくれるが、ルリさんは詳細をどこで手にいれたんだろうか。


「そうなんですね、俺も参加できませんか?」


「ゼロさんも参加していただけるんですか?」


「はい、正直LVも低いのでなにができるか分かりませんが」


「ここから先、冒険者協会は一切のサポートができません。国からお願いされている指示をそのまま伝えます、Eランクの冒険者にはエアの町へ届ける補給物資の護衛をお願いします。王国の補給物資護衛馬車へお乗りください」


「ありがとうございます、行ってきます」


「ご武運を」


よし!対人戦だ!ギルドバトルより先に戦争をすることになった事にビックリだけど、個人的には是非参戦してみたい。イーリス王国を守ってみせる!


護衛用の馬車に乗り込む。

そこには数人の冒険者と王国軍の兵士がいた。

王国軍の兵士が冒険者達に説明する。


「冒険者の皆さんには、補給物資を積んだ馬車の護衛をお願いしたいです。

万が一、補給物資を狙ってカオス帝国が襲ってきた場合には迎撃をお願いします。

エアの町に補給物資を送り続けないと、戦線が維持できなくなってしまいますので」


おお、ちゃんと低LVにも戦争参加時の役割があるじゃないか。

護衛任務って事は襲ってくる可能性もあるってことだろうから、キラーウインド2つを待機させておくか、詠唱しておく。


「俺に任せとけ!カオス帝国の野郎なんかボコボコにしてやるぜ!」


元気よくほざいているが、騒ぐやつほど弱いやつが多いよな。

レンとかな。

他の冒険者達は戦争ということもあり、ピリピリしている。


まあ、現実に戦争にいくという事になったらこうなるよな。ゲームだからいいけど。

馬車に揺られて結構時間が経ったと思う。


エネミーサーチに敵が引っかかる。1人だがものすごいスピードで走ってくる。

エアの町を越えて襲ってくるとは、カオス帝国はやり手だな。

それも、Eランク冒険者なんて高ランク冒険者がきたら一瞬で全員お陀仏だろう。


「敵がきましたので、殲滅してきます」


と俺はすぐに馬車を飛び降り、走ってきている方向へ走る。


「おい!本当なのか!」


と王国軍の兵士から聞こえてくるが説明している暇はない。


爆風の杖は風を纏いだす。

敵がいる方向を見ると草原が広がっており、敵影もみえない。

だが、もう見える位置にはきているはず。

近寄ってくる。


隠蔽スキルか、アサシンか?

それが、ここまでこれた理由か。

だが、俺のエネミーサーチは風で敵を判別する。

アサシンだろうと風からは逃れられない。


さあ、キラーウインドの出番だ。

インプ戦で、目視したものを攻撃するのではなくエネミーサーチで判別した敵の位置を斬るという芸当は散々練習した。

そして、ディレイスペルでダブルキラーウインドが2つある。

あのアサシンは単独で襲撃してきたってことは手練れだろうから、ダブルキラーウインド1撃ではなんらかのスキルで避ける可能性も考慮して攻撃する。

さあ、狩りを始めよう。


俺の初手はキラーウインド6回でアサシン周辺を斬る。逃がさない!

見えてはいないが、すごいスピードで突っ込んでくるのは見えている!

くらえ!


「ダブルキラーウインド!」


ディレイスペルを含めたキラーウインドの計6回がアサシン周辺を無作為に斬る。


「がはっ!!!」


爆風が、アサシンをエグいぐらいに胴体を斬った。致命傷だろう。


但し、アサシンの動きはおかしかった。

俺のキラーウインドは指定した場所を斬るはずなのに、それを避けるスキルかなにかで避けたとしか思えない動きだった。

俺は相手の位置を中心に斬ったので、ずたずたにできるはずだったが胴体を斬ることしかできなかったのだ。世の中には色々なスキルがあるのだろう。

倒れている敵に近寄る。虫の息だ。


「ぐ、なぜだ。俺の直感スキルは見えない魔法だろうと予測し、避けれたはずだ・・・何故・・・」


息を引き取る。

アサシンという職業もやはりあるのか。

これはいい情報だ。

そして、キラーウインドは対人戦で猛威をふるうな。指定した場所を斬ることで、避けるのは不可能に近いし、ディレイスペル込みなら高火力にもなりうる。


「おーい!大丈夫かー?」


馬車にいた王国軍の兵士が遠くから走ってくる。


「大丈夫です。この倒れているのがカオス帝国のアサシンです」


「よく倒せたな。

ここまで単独で攻め込んでくるってことは、そうとうに高LVだったかもしれないのに」


「火力と範囲攻撃には自信のある風魔法なので」


「風魔法は低火力で有名だが、そこまで強いものなのだな」

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