第20話・チャラ男が連れてきたデンジャラスドッグ

----14日目裏世界----

チュンチュン。


「おはようございまーーーーす!」


元気爆発だ!

昨日の対人戦で俺のスイッチが完全に入った!

MMOの狩りは作業だと俺自身思っている。第三者から見たらそれのなにがおもしろいの?ってなるのだ。

だが、その作業がLV上げと金策に繋がって、対人戦でその人の価値が決まる。そしてその価値を自分で認識して、上を目指さそうとさらに作業を繰り返す。

これがMMOだ。

ということは対人戦をしないと、自分の立ち位置も分からない訳だ。

Dランクのオッサンより強いことが分かってしまったのが嬉しすぎる!


ということで、悪魔の森へ突入しよう。

今日は新しい武器である爆風の杖を試せるから、楽しみでしょうがない。

オッサンは弱くて、全く性能が分からなかったからな。


インプちゃんは、奇襲戦法をしてくるけどエネミーサーチで攻略済み。

ここで気になるのは、スケルトンウォーリアーだ。

スケルトンウォーリアーが草むら出てきた!

とりあえず、性能を確認する意味でウインドカッターを当ててみよう。


「ウインドカッター!」


1つの風の刃がスケルトンウォーリアー目掛けて飛んでいく。が、風の杖で放つウインドカッターより圧倒的に早い。

スパン!

スケルトンウォーリアーはウインドカッターに切り裂かれて光の泡になる。

ああ~まじか。

ウインドカッター1確か、ヌルゲーだな。


1Lv上がって28LVだ。もう俺は止まらないぜ、格上ども待ってろよ!

MPポーション20個消費。


今日の成果、骨35本、悪魔の心臓120個!




----15日目表世界----

チュンチュン。


オッサンを倒したことによるモチベーションのブーストが維持されている。

とりあえず、裏世界のドロップ品を精算するように持ってと。


コンコンとノックされる。


「ルリさん、おはようございます」


「おはようございます。ゼロさん今日も、ワイルドドッグでいいですか?」


「そうですね、目標はソロでコボルトリーダーですからね!」


お金も入ってきているし、ルリさんの装備を買ってあげてもいいな。

カイのLV状況とかも聞いて、必要なら育成もはじめないとな。

レイナはソロで厳しいとか言っていたけど問題はないと思うけどな。

レンはどうしているだろうか。


「ゼロさ~ん?」


「ああ、すみません」


「また考え事ですか?」


「そうですね、今後のことを考えてました」


朝のルーティンをこなして宿を出る。

目の前にDランクのオッサンがいる。


「おうおう!お前の事を待ってたんだよ、ゼロ」


「お断りします」


「まだなんにも言ってないだろ!」


どうせこういう輩は面倒事を持ち込んで、人様に迷惑をかけるんだ。


「ゼロ、お前の強さは本物だ。俺らのギルドに入れ」


ほら、面倒なことを。


「すみませんが、お断りします」


「何故だ!俺らのギルドは、アットホームなんだぞ!」


オッサンの誘い文句がアットホームって。

どこの冗談だ。

まあ、せっかくモチベーションをオッサンにもらったし啖呵でもきっておくか。


「オッサン!俺は近い未来にギルドを作る。そしたらすぐにオッサンのギルドを越えてやるから覚悟しとけよ」


「なにぃ!!ゼロ!それは本気で言ってんのか!」


「当然だ。俺は最強、最高を目指す!」


「ちっ!かっこいいこといいやがって、雑魚軍団だったら全力で笑ってやるかな!覚えとけよ!」


まあ、オッサンはいいやつなのかもな。あっさり引き下がったし。


「ゼロさん、ギルドを作られるんですか?」


「はい、作りたいとは思ってます。ただ作るための条件を全く知らないので、まずは冒険者協会で聞いてみないといけないのですが」


ルリは笑顔で手を合わせる。


「そうでしたか。ではわたくし、ゼロさんのギルドメンバーに立候補いたします」


「ありがとうございます、そう言っていただけると大変嬉しいです。是非加入してほしいのですが、ギルドの作り方さえ知らないので待っていてくださいね」


「はい!」


少数精鋭のギルドもかっこいいけど、大人数のギルドもかっこいいよな~。対人戦で輝くためにLVはもちろん、武器と防具、アクセサリーの全てを揃えていかないとな。


初心者の森奥の、ワイルドドッグ4体が出る場所で俺が2体を受けつ。

ルリさんは集中が手に入ってから、ワイルドドッグ2体同時に戦っても倒せるようになった。


スナイプ以外に怯ませられるスキルはないので、複数体同時は無理なように見える。

だが、集中を行う事で動体視力が増し、スナイプじゃないスキルであるショットやダブルショットでも怯ませる事が可能になった。

順調に強くなっている。あと、狩人の弓のおかげかだいぶ火力が上がったと思う。やはり動物特化じゃないかと思っている。


「ダブルショット!」


ルリさんのLVが8に上がった。いい感じだな、このままあげていこう。


「ゼロー!助けてくれー!」


なんか聞いたことのある声が。

振り向くと後ろから、レンとアヤトが走ってくる。

その後ろからワイルドドッグの巨大になったものが追いかけてくる、2mぐらいあるぞ。

さすがに大型犬以上の大きさの犬に追いかけられるのは怖っ!

名前は・・・デンジャラスドッグ。危険すぎでしょ。


「ガァヴァヴァ!!!!」


「「ひぃぃぃ!」」


レンとアヤトは食べられる寸前だ。

爆風の杖が風を纏い出し魔力を伴う。


「ダブルキラーウインド!」


突如、デンジャラスドッグの右胴体横を爆風が斬る。大型の刃で切ったような切り口を残す。


「ギャアアン!」


デンジャラスドッグは思いっきり斬られたことで、転がりながら悶える。


「ダブルサドゥンウインド!」


森の木々がすっぽ抜けるんじゃないかと思うほど、爆風が吹き荒れデンジャラスドッグは踏ん張って耐える。

固いな、この犬。

レンやアヤト、ルリは茫然としている。

まあ、今の俺ならコボルトリーダーも余裕だろうし、こいつも敵にはならんだろ。


「ダブルウインドランス!」


すごいエネルギーを貯め込んだ風の槍が出現する。もう槍というより、でかい杭の規模だ。

それを放つ。


「ギャァァァヴァァ・・・・」


風の槍に当たると光の泡となって消える。

まあ、こんなもんか。

ウインドブレイドさえ使用せずに勝ってしまった。


弱すぎて、冷めたような気持ちになっているが俺は知っている。

おかしくなるぐらい強くなってしまった場合は、高揚しすぎて冷静になるのだ。

ふっ最高だ。的な。


「ゼロ!強すぎだろー!こいつ、レアボスのデンジャラスドッグだぞ!」


レアボス?とぼんやりしているとレンが答える。


「そうだよ!初心者の森にはコボルトリーダーがいるだろ?それは通常のボス!そのボスとは別にフィールドを徘徊する死神と呼ばれているのがレアボスなんだ。出現頻度は1年に1回ぐらいしか現れないが、通常ボスより圧倒的に強い!」


「ゼロ、あなたはなにものなの?」


アヤト、俺もお前に言いたい。なぜセーラー服なんだと。


「ゼロさん、あなたの強さは本物です。

Eランクのあなたが、こんな簡単にデンジャラスドッグをあしらうなんて信じられない強さです」


・・・ルリさんはデンジャラスドッグを知っていたのか?


「ルリさん、それは武器のおかげですから俺がすごい訳ではないですよ」


「いえ、これまでもソロ狩りをメインにしていることで状況を打開する力を手に入れている。そして稼いだお金で武器や防具をご自身で用意している。この状況下で、あなた以外のなにがすごいことになるのですか?」


さすがにそこまでしっかり言われてしまうと、照れるな。


「ありがとうございます、ルリさん。がんばります」


「ええ、応援してますので」


笑顔で応援される、色々がんばってきてよかったなと思うな。


「ゼロー、銀箱が落ちてるぜ?」


「なに!!銀箱だと!」


バッとドロップ品の方を見る。とうとう俺も銀箱を引いたか!金箱じゃないのが悲しいが。


駆け寄って銀箱を開ける!ドン!

宝箱に入っているアイテムから天へ向かって光が登っていく。

そのアイテムを確認する。


「ディレイスペルのネックレス?」


赤い宝石が入ったシンプルな形状だけど、異様な雰囲気を放つネックレスだ。

これは当たりじゃないか?ディレイスペルって定番でいえば魔法を準備しとける的な。


「本当にディレイスペルなの?・・・」


アヤトが呟く。


「アヤトさんは知っていますか?」


「うん、ディレイスペルは魔法を詠唱状態で待機させられる。それを好きなタイミングで放つことができるんだけど、LVによって待機数が変わるらしいの。魔法使いで最強を目指すなら必須装備と言われているわ。そして、その異常な性能なのは、ユニークだからよ。」


「なに!」


周りも驚愕の顔だ!俺もビックリだ!頭真っ白になりそう。


「でも、ユニークって銀箱にも入ってるものなんですか?」


「今回のデンジャラスドッグは、1年に1回のレアボス。金箱ならゴッズまで可能性はあるわ」


まじっかーーーーーーー!やった!初ユニークゲットだぜ!それも、最強を目指すには必須らしいよ!


速攻装備する。

うわー、ユニークと思うだけでテンション上がるー!


「いいなー、めちゃめちゃうらやましー!」


レンが言う。


「よかったですね、ゼロさん」


「ルリさん、ありがとうございます。トラブルもありましたけどLV上げを再開しますか」


「ちょ!ゼロ!俺らに事情やらなんやらを聞いてくれないの?」


こいつと関わると、ろくなことがないんだよな。

前も、自殺志願者のレンを守りながら必死で狩りをして、アヤトにはレンの本命だと思われるなど本当に疫病神的存在なのだ。

本当に事情を聞きたくないが、聞いてほしそうだもんな。


「レン、なにがあったんだ」


「ああ。俺さ、アヤトと初心者の森にデートに来て、最後まで行こうと思ったんだ」




ん。

こいつ?

いや、俺と同じで狩りのことをデートと呼んで?いや男ってのは知っているはずだ。

男とデートなんていうか?そして最後ってなんだ・・・ボス戦の事を言っているのか?

ここ初心者の森だぞ?モンスターが出る場所だぞ?

死ぬかもしれないところでは盛り上がる的なやつか?


・・・やめよ、あほらし。真剣に何考えてるんだ。


「ゼロ!私だけのレンよ!」


本当にこいつらマジで疫病神だ!好きにやってくれ!

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