第19話・新しい武器とオッサンとの出会い

「ゼロ、お前覚えとけよ・・・」


「いや、俺がなにしたっていうんですか・・・」


俺、本当になにもしていませんよ!


「ここへ来たってことは手紙見たんだろ?」


「はい、見ましたよ」


「やっぱそうだよな!じゃあ風の杖を返すってことだな」


とりあえず、武器を新調するにあたり風の杖の支払いがなくなるだけでもありがたい。


「はい。ダンさんに風の杖を売っていただいたおかげで、今の俺がいると言っても過言ではないです。ありがとうございました」


風の杖をダンさんへ返す。


「そんなことを言ってくれるなんて、嬉しいね!じゃあ次の杖はこれだ!爆風の杖!ダブルマジックと同じレアリティのレアだ!」


杖の先端に風の模様がでっかく描かれていて高級感がある。

いかにも上級の風魔法使いが装備してそうだ。

でも、レアリティがダブルマジックと一緒ってことは相当な品じゃないのか?


「これ、相当な品ですよね?」


ダンさんがすごいにやける。


「俺もつい最近手に入れたんだけどな、風魔法使いはユニーク武器を手に入れるまでは、爆風の杖を装備しとけば問題ないと言われている装備だ」


ユニーク武器が手にはいるまでって、高LVの狩場までほぼ余裕では?


「そんなに強いんですか?」


「ああ、保証するぜ」


これは、やばいものだろう。

レアのダブルマジックも、魔法使いにとっては絶対に欲しい装備のひとつだろう。ということは爆風の杖も同じように強いという事か。


「まあ、爆風の杖は50LV以上で真の力を発揮するらしいからがんばれ」


「その詳細は知らないんですか?」


「知らん!」


武器屋がそれでいいんかい!


「さて、こっからはお金の話だ。サティからダブルマジックを大金貨10枚で売ってもらったんだろう?なら同じ支払いにしよう。大金貨10枚で売る!但し、ゼロも強くなったから50日間、毎日金貨2枚を支払う契約でどうだ?」


「俺は、どんな条件を提示してこようが買おうと思ってました」


「粋な事言ってくれるね!無理な事を言い出してたら、どうしてたんだ?」


「ダンさんは、そういうことは言いません」


金貨2枚相当である銅貨200枚を支払う。金貨に換金しとけばよかった・・・


「さすがゼロだな!応援してるぞ!」


「ダンさん、わたくしも武器が欲しいのですが」


「・・・」


ダンさんはなにかルリさんとあるのか?


「わたくしも武器が欲しいのですが」


「分かった分かった、弓だろ!」

カウンターの中から弓を取り出す。


「ほら、狩りの弓だ。お前のLVならこれぐらいで十分だろ」


「ありがとうございます」


ルリさんはニコッとしているが裏ではなにがあったんだろう。


武器屋を出て、ルリさんと初心者の森へ行く。


「ルリさん、今日はワイルドドッグを狩ってみますか」


「はい、ですけど私は範囲攻撃も回避スキルも持っていませんが大丈夫でしょうか?」


「とりあえず、ワイルドドッグが出てきたら2体は俺が倒しますので1体をまかせようかなと」


「分かりました。お任せください」




「ダブルウインドカッター」


2体のワイルドドッグは一瞬で光の泡になる。爆風の杖からめちゃめちゃ火力を上げときました!と伝わってくる。いいね。

ワイルドドッグ1体は、ルリさんに向かう。


「スナイプ!」


ワイルドドッグの足を的確に射抜き怯ませて、


「ダブルショット!」


2つの矢が頭を貫き光の泡に変える。


うーん、狩りの弓には動物補正があるのかもな。


「やりましたよ!ゼロさん」


「ばっちしですね!このまま狩りをしてみましょう。強くなってきたら、ワイルドドッグを同時に2体相手にしてみましょう」


「はい」



ルリは、LV5になった。スキルは集中を手に入れた。

集中を使ってみると一定時間、視力強化、動体視力強化、攻撃力強化が手にはいるらしい。

自己強化スキルも羨ましいな~。

日没間際でLV6になった。


冒険者協会に帰ってきて精算をする。

今日は、ルリさんと食堂へ降りていく前に精算アイテムをポーチに詰め込んだから忘れてないよ!

ルリの精算が終わり、俺の精算の番になる。


「ゼロさん、順調ですか?」


「はい、順調です」


「それはよかったです。いきなり長期のクエストをお願いしてしまったので、心配しておりました」


このクエストのおかげで、ルリさんと知り合えたし俺としてはありがたい限りだ。

ルリさんのLVを早急に上げて、身内で狩りに行きたいな~。


「では精算いたします。あ、悪魔の心臓196個・・・ゼロさん聞いてもいいですか?」


「はい、なんでしょう?」


「ゼロさんは、ルリさんに付き添って丸1日狩りに行っている。で間違いありませんね」


その次からの言葉は分かる・・・

そして、冒険者協会の転移陣で悪魔の森へ行ったゼロさんをなんたらかんたら。

「そして、冒険者協会にある転移陣から悪魔の森へ行ったゼロさんを見ておりません!」


やっぱり。


「ゼロさん!どうなってるんですか!もう、言い逃れはできませんよ!状況証拠も挙がっているんですよ」


「マリ、落ち着け。とりえあず精算して頭を冷やすんだ」


協会長が裏から出てきて抑え込んでくれる。

初めて協会長がちゃんとした人にみえる。


「ふー。失礼いたしました。では、悪魔の心臓196個、骨45本、クエスト報酬の金貨1枚で報酬は金貨21枚と銀貨5枚になります。ただサティさんへの支払いが金貨1枚ですので金貨20枚と銀貨5枚です」


お金を受け取る。銅貨での支払いは銅貨9枚以下の場合に変えてもらった、金額も多くなってきたしな。


「ゼロさん、もう私は抑えられません!私と今日一緒に寝ましょう!寝かせませんから!」


ぶっ!!


冒険者協会にいる全ての人間がぎょっとした目で振りむく。


「マリさん!そんな大きい声で、そんな表現したら誤解されますよ!」


「いいえ!もうなりふり構ってられません!私はゼロさんの事が知りたくてたまらないのです、結婚でもなんでもしますから教えてください!」


マリさん、暴走しすぎでしょ!

協会長も個人的な話をしているようだな、うんうん。みたいに頷いてるけどその対応は絶対おかしいからな!


「マリさん、疲れて頭がおかしくなってしまってるんですよ。今日は早めに」

「おかしくなってません!」


うわー、収集つかねー!こんな展開は全く想像してないから対応もできん!


「ゼロさん、今日は用事があるんですよね?」


とルリさんがウインクしてくれる。助かった!ありがとうルリさん。

涙が出てきそうだ。


「マリさん!ごめんなさい、用事があるので失礼します!」


ゼロさーん!って後ろで聞こえるけど無視して冒険者協会を出る。


「恐ろしい方ですね」


「とってもいい人なんですけどね、今日は疲れでおかしくなってしまったのでしょう」


ルリさんと笑い合う。


「おい、ゼロとか言ったな」


ん?振り返ると剣を背負ったオッサンがいる。


「お前、マリさんを誘惑しやがって許せねえ!叩き潰してやる!」


ここにも頭がおかしくなった人がいるんですけど!

協会長が冒険者協会から出てくる。

助けにきてくれたんだと思って期待の目で伺うと、うんうんと頷く。

どういう意味だよ!


「俺と決闘しろ!負けたらマリさんから手を引け!」


手を引くもなにも手を出そうともしてないんだが。


「あっはっは!ゼロ、決闘受けてやったらどうだ。決闘場はこの近くにあって、そこで死んでも死なない仕様になっているから、対人戦の練習にぴったりなんだ」


それは助かるが、なぜマリさんを掛けて決闘しないといけない!

ん?よく考えれば、俺はオッサンに吹っ掛けてもいいのでは?


「オッサン!俺が勝ったら金貨10枚いただくぜ、それでも受けるか?」


「オッサンじゃねえ!Dランク冒険者のジーだ!」


「じゃあ決闘場へ行こう、オッサン」


「こいつ、ぶっ殺してやる!」


決闘場はテニスコートぐらいの広さで壁に囲まれている。HPが0になると一瞬死んだような状態になるが無傷で復活するらしい。

賭け事をしている場合、必ず履行されるとの事。

俺は、マリさんに手を出していない状態で手を引くという訳の分からない条件になっているのだが。

そしてオッサンは俺より上のDランク。

ただ、俺の手に握られるのは爆風の杖。

これの性能を知るにはちょうどいい相手だ。


「ゼロさーん!がんばってくださーい!」


ルリさんから声援が来る。

周りの野次馬共から罵声が来る。

もう、どうなっとんねん。


「いくぞ、ごらー!」


Dランクのオッサンは剣を持って走ってくる。足装備に移動速度を上げるものは履いていないようだ。

まあ、とりあえず観客が受けそうな一撃から見舞ってみるか。


「ダブルサドゥンウインド!」


「びゃkごあl―!」


周りのものが全て吹き飛びそうな猛烈な風がオッサンに襲い掛かり、オッサンはレーザービームかのように壁に叩きつけられて倒れる。


・・・


まさか、もう終わったのか?

【ゼロwin】と決闘場にホログラム的に投影される。


「「「うぉー!」」」」


観客が大盛り上がりする。

「なんだあの魔法!」「強すぎだろ、1撃だったぞ」「風魔法は火力が薄いじゃないのか?」「Eランクって聞いたが」「今度は俺がヤリたい」


うーん、なんかいつも変な言葉が混ざってる気がするが。


「ゼロさん、お疲れ様でした。さすがですね」


「いや、俺としては様子見で放ってみたんですけどね」


「さすがゼロだな、お前は宮廷魔法使いにも劣っていなさそうだな」


宮廷魔法使いか、なんLVぐらいなんだろう。

というかそのLVぐらいがこの世界のある程度強いランクになるんじゃないか?


戦ってみて思ったが、対人は最高だな!

昔は、対人戦で勝つためにLVを上げるのが楽しくてしょうがなかったくらいだしな。


「そろそろDランクにしてやっても、よさそうだな」


今は、冒険者協会のランクは気にする必要がないので適当でいいですよ。

そして、金貨10枚がポーチに入ってきたのが分かる。

おいしかったな。


でも、この世界でも対人はある。王城を守る宮廷魔法使いもいる。

多分、ギルドバトルもあるだろうし、王城があるってことはファンタジーな戦争もありえるかもしれない。

これは、俺が一番楽しみにしていた事だ!

やはり当初の計画通り、俺がギルドを作って世界最強の称号と最強ギルドを作ってやる。

昔に挫折した俺を超えてみせる!

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