第22話・カオス帝国の侵略2

-カオス帝国軍エア攻略本部にて-


カオス帝国軍エア攻略本部では、静かに中将とテイマー2名が席についている。

何故テイマーが攻略本部にいるかというと、テイマーはテイム済みの鷹の視界を自分の目に映すことができる。その鷹を戦場に放ち、リアルタイムに状況を把握し共有することが仕事だ。

テイマー2名は主戦場の監視と奇襲作戦をしているAランク冒険者アサシンの監視を行っている。


「バカな!」


1人のテイマーが吠える。


「なにがあった?」


中将が質問する。


「報告します、エアへの補給部隊へ奇襲をかけたAランク冒険者が殺されました」


「なに!あの補給部隊の護衛にはEランク冒険者しかいないはずだ!アサシンに命じたのは隠密を優先し、補給物資を焼き払えと命じておいたのだぞ!Aランクの隠密状態に徹したアサシンを、Eランク冒険者如きでは気づくことさえできないはずだ!」


中将がありえないという顔で憤慨する。


「鷹が視ていたものを報告します。アサシンは予定通り隠密状態で補給部隊に接近。その際に魔法使い1人が馬車を飛びだして魔法を放つと、アサシンは風魔法で斬られました」


「ありえん!Aランクだぞ。あのアサシンは物理攻撃や魔法に加えて、見えない攻撃でさえ回避する能力を持つのだ、そいつがなぜ魔法で倒される」


「あのアサシンは1回分の魔法に対しては、範囲魔法でも回避スキルを発動させて避けられると自慢していました。ただ、魔法攻撃1回ではなく魔法攻撃を同時に何回か放たれたことで避けられなかったのではないかと。そして、あのアサシンは隠密特化のため紙です」


「同時・・・その魔法使いはイーリス王国の名だたる人物か」


「いえ、見たことがありません。それに、Eランク冒険者しかいないという情報は確実かと。冒険者協会内通者からの情報です」


「くっ・・・、Eランク冒険者にそんな手練れがいるのでは、この作戦は通用せんな。補給部隊の情報を手にいれたからこそ、襲撃し混乱を引き起こせばエアを落とすことができると思っていたのだがな。だが、現在は我が軍のほうが有利だ、少しでもイーリス王国の戦力を削る!攻撃の手を緩めるなと前線へ伝えろ」


「通達します」


中将が、主戦場のほうを監視しているもう一人のテイマーへ連絡を促す。


「引き続き、悟られぬように補給部隊の監視を続け、なにかあったら報告しろ。


「は!」


EランクにAランクを1撃で葬ったものがいる。そいつが脅威にならなければよいが、と中将は考えていた。




「お前、なぜそこまで強いのにEランクの冒険者なんかやっている」


ゼロはアサシンと戦闘になっている間に、先行している補給部隊の馬車に追いつくために王国軍兵士と走っていた。


「装備に恵まれただけですよ」


「謙遜するな、装備に恵まれただけのやつが奇襲してきた敵を倒せる訳がないだろ」


そういえば、アサシンを倒した時にLVが上がった気がしていたため確認してみるとLV30になっている。人を倒してもLVが上がるのか。新しい魔法は~、


・ファイヤーボール

・ウォーターアロー

・ヘイスト


キターーーーーーーー!

ヘイストだ!俺が最初にほしいと思った魔法!移動速度と攻撃速度の上がる最強魔法だ。

当然取得する。


テンションも上がりに上がっているため、自分に即使用。


・・・少―しだけ足が早くなった。あと、クールタイムがないため連続使用可能(自分にヘイストを掛けた後、王国軍兵士にすぐかけれた)、効果時間は30秒程度。

これはひどい。

希望はすてない!LVを上げればこんなもんじゃないはずだ。


そして、もう一つディレイスペルで待機できる魔法が3つになった・・・

ん!10LVにつき1個増えるのか!ディレイスペルのネックレスやばくない?!



補給部隊の馬車に追いついて乗り込み、揺られながらエアの町へ行く。

アサシンが襲ってきた時ぐらいから、鷹がずっとこちらを見張っている。

一瞬だけエネミーサーチの範囲に入った時に敵判定がでていたため攻撃しようと思ったが、射程範囲外まで飛ばれてしまい対処ができていない。エアの町に超遠距離攻撃が使えるものがいればいいのだが。


エアの町に付き補給物資を供給する。

至る所で負傷した兵士達が手当を受けているのを頻繁にみる、ポーションを使えば簡単に回復できるんじゃないのか?と思ってしまうが、ないのだろうか。


突然怒号が聞こえてくる。


「エアの町にいる冒険者の諸君!現在、王国軍はカオス帝国軍に押されており戦線を下げざるを得ない状況だ。Eランクの冒険者でも、我こそはと思うものは力を貸してほしい!共にイーリス王国を守ろうではないか!」


ふむ、劣勢なんだな。

カオス帝国なんて怖そうな名前だし、強いのだろう。

俺も参戦しよう。


「Eランク冒険者魔法使いのゼロです。参戦したいです」


「おお、ありがたい。西に向かって道沿いを歩いて行くと最前線へ辿り着ける。

その場にいる王国軍に職業と冒険者ランクを伝え、配置を確認してくれ」


「分かりました、向かいます」


言われたとおり歩いていると、レイナを見かける。

手を振って呼びかける。


「レイナー!」


「ゼロ?来てたの」


レイナは神妙な顔をしている。

どうかしたのだろうか。


「ああ、補給部隊の護衛についてエアまで来たら戦況がおもわしくないっていうのを聞いて、最前線の役に立とうかなと」


「悪いことは言わないわ、帰りなさい。あそこで戦っているのはLV40以上の猛者ばかりよ」


「ごめん、帰ることはできない。俺は引くわけにはいかない」


俺の大切な人が住むイーリス王国を守る大義名分もあるし、大規模戦闘に参加できるなら参加したい!

レイナに睨まれるが引かないぞ!


「・・・はぁ、分かったわ。でも絶対に無理しないでね、ゼロに死んでほしくない」


「ありがとう。俺は無理をする気はないけどレイナは大丈夫なのか。Eランク前衛職では最前線は過酷じゃないのか?」


「ええ、でも私も引くことはできないのよ。命に代えてもやらなくてはならないの」


並々ならぬ決意があるのは分かる。だが、最前線で戦うのは無茶だ。

ここで止めれるなら止めたいが、俺の技量ではケガをさせずに気絶させるのは無理だ。


「分かった、だが約束してくれ。必ず生きて一緒に帰ると。死ぬつもりなら、ここで俺がレイナを止める」


「ふふ、私は死ぬつもりはないから大丈夫よ」


「分かった、だが戦争の最前線は魔法や矢など遠距離職からの攻撃が飛び交う場所だ。そこへ低LVの剣士が出ていったところで死ぬだけになる。必ず、最前線配属は避けて別のかたちで貢献してくれ。それがレイナにできる戦争の活躍方法だ」


「私が最前線で戦っても意味のないことくらい分かってるわ、大丈夫よ。心配してくれてありがとう」


「ああ」


レイナはどこか優し気な笑みを浮かべる。

こういう笑顔をするキャラクターは死ぬと相場が決まっている、それは必ず阻止して見せる!


レイナと最前線へ行くと王国軍が後退しながら凌いでいる姿が見受けられる。爆発や雷、氷や矢の雨など最前線は激しい戦いが起こっている。

王国軍指揮官らしき人のところへ行くと、配属先を任命された。

俺の役割は最前線の後衛ポジションで魔法を放ちつづけること。

そうそう!魔法使いはここが最高のポジションだ、当然前衛が崩れれば死ぬ事は必須だけど、前衛職も王国軍精鋭だろうし問題ないだろうと思っている。


懸念は別の配属先になったレイナだ。

正直あの遠距離攻撃の雨の中に立てば一瞬で死んでしまう。そんなことを許すつもりはないがどこに配属になったのだろうか。


「お前、冒険者か!助かった、カオス帝国軍前衛へ向けて魔法を放ってくれ。当たらなくても牽制になるからな。」


王国軍最前線後衛ポジションにいた魔法使い精鋭っぽい人に声をかけられる。


「一つ聞きます、殺していいんですね?」


「ああ。戦争はやるか、やられるかだ」


っし!牽制でもいいなんて言われるから時間稼ぎをしている可能性も?と思ったのだが倒してしまっていいらしい。

ダブルキラーウインド2つは待機済みだ。


爆風の杖が風を纏いだす。

エネミーサーチで敵影把握。目に見えないアサシンが何人もいて要所要所で静かに暗殺しているようだ。俺の獲物は硬い相手じゃなく、紙装甲の潜んでるやつだ。


「では、俺参戦!初手ダブルキラーウインド!」


「ガッ!」「ギィッ!」


最前線で姿を隠しながら移動しているアサシン2人を風で斬りつける。攻撃をくらった事で姿を現して2人倒れた。

目視できない場所指定の攻撃魔法のため、スキル以外で避けるのは不可能だろう。

爆風の杖というユニーク一歩手前の火力をもつ武器から繰り出される斬撃を紙装甲が耐えきれるはずもない。致命傷だ。そこを前衛にいた剣士が斬りつけて止めを刺す。


楽っしいー!!!!!!

そうだよ!対人戦ってこういうもんなんだよ!役割分担して、協力して全力で目の前の敵を倒す!

MMO時代のギルドバトルの記憶が蘇る、最高の思い出が。

攻撃したいがキラーウインドのクールタイムが邪魔だ!他にも隠れているアサシンはいるが、通常魔法では避けられるだろう。

なら、もういいか。


爆風の杖がいつもより激しい風を纏いだす。

「ディレイスペル起動。キラーウインドsix」


待機していたダブルキラーウインド3つが起動する。


「ぐふッ」「ギッ!」「「「「ッ!!!」」」」


6人のアサシンが風にぶった斬られ姿を現して、悶絶している。

速攻で全員を王国軍兵士がとどめをさした。

8人連続KILL!!!


「ふははは!どっかのバカが景気よく倒しまくっているらしい。それも同時にアサシン6人をやりやがった。あんな目立ち方されたら俺がもっと目立つしかねえな!」


赤い髪に上半身裸で大剣を持った男が息を全力で吸って全力で吠える。

「この俺が!虹の赤バーサーカーだー!!!お前ら全員血祭りだーーーーー!!」


ブワッと赤い闘気が一帯にあふれると同時に、カオス帝国軍が一気に吹っ飛び舞い上がる。


「ふはははははは!雑魚が!どいつもこいつもいきがりやがって死にやがれ!」


「バーサーカー!やっちまってくれ!」

「待ってたぜ!カオス帝国軍なんてぶっ殺してくれ!」

「カオス帝国びびってるぜ!」


「はあ、強者がいないからつまんねと言って適当に戦って苦戦していたのに、強者にあてられて戦場で大暴れって本当に王国軍最強部隊「虹」ですか・・・」

青い髪をした青年は一言愚痴り、戦線から撤退していく。

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