第14話・下々のダンジョン

1時間ぐらい歩くと、池が現れた。

確かに橋が架かっており、その先にデカイ家がある。

玄関まで歩いて行くと扉がありインターホンもある。

インターホンって、ダンジョン入るのにインターホン押せばいいのか?


ピンポーン。


「はーい、下々のダンジョンですが入られますか?」

インターホンから返事がある。


「誰?!」


「入られますか?」


「入られます」


ガチャ。


「扉の鍵を開けましたのでどうぞ」


誰やねん。裏世界に人はいないはずだから、人じゃないってこと?

それに下々のダンジョンって名前おかしいだろ。


ダンジョンに入るとリビングがあり、別の部屋へ通じるドアが4か所ぐらいある。右のドアを開けてみるか。

中に入ると、どでかいリビングの真ん中に1人立っている。

身長160cmぐらいで太った体形で、ところどころ腐ったゾンビらしきものがいる。

目をこらすと食い逃げ犯って名前がでる。


食い逃げ犯って。

あまりの名前に一瞬惚けてしまう。

食い逃げ犯なんて名前のついたモンスターいるか?部屋には1体しかいない。

それも襲ってこないという事は、近寄るか攻撃するまで襲ってこないタイプだろう。


硬いという情報は手に入れてきたから、全力でいこう。

危なくなったら、サドゥンウインドとウインドシールドでなんとかできるはず。


「ダブルウインドブレイド!」


ゴーっと音をさせながら、大型の風の刃2つは食い逃げ犯を思いっきり斬りつける。


「僕は!食事をしたかっただけなんだー!」


斬られて怯みながら、野太い声で叫ぶ。

なんだその言い分。


「ダブルウインドカッター!」


「ゲェー」


風の刃が切りつける。

食い逃げ犯は怯みから復帰し襲ってくる。

もう一回怯ませる!


「ダブルウインドランス!」


「ガァ!」


2つ重ねた風の槍は食い逃げ犯に真っすぐにあたり、たたらを踏む。

速攻だ!


「ダブルウインドカッター!」


「ゲェー!」


またも風の刃で切りつけられ、食い逃げ犯は泣きそうな顔をしながら走ってきて拳を振り上げる。

泣きそうな顔になったってことは、HPが少ないんだろうけど、ウインドカッターは間に合わない。


「ダブルサドゥンウインド!」


「ゲェ・・・」


ゴーっとすごい突風が吹き、食い逃げ犯は風がすごすぎて、倒れないように踏ん張っている。


「ダブルウインドカッター!」


食い逃げ犯は風の刃に切られて光の泡になった。



ふー、なんとかなった。倒したところにドロップ品がある。

それを確認すると、銀貨1枚と罪状が落ちている。

罪状には、レストランで1万円ほど飲み食いしたにも関わらず逃げ出したとある。

どうしようもないやつだ。この罪状は絶対に必要ないから捨てておこう。


この狩場の構造は、リビング1箇所につき扉が4つあり扉に入ると、次のリビングが現れるというダンジョンらしい。

リビングが広すぎるため、食い逃げ犯を倒しきる時間よりも違う部屋へ移動する時間のほうがかかるとは思わなかった。違う部屋にたどり着くと食い逃げ犯が1人いる。


さっきと同じように全力で魔法を叩きこみ倒すと罪状のみドロップした。

こいつ銀貨1枚確定ドロップじゃないのか・・・ひどすぎる。

罪状には、ラーメンを食べて全力で逃げ出したとある。

全員違う犯罪者か。ひどいな。


魔力が尽き欠けているのが分かり、MPポーションを飲む。

食い逃げ犯2人につき1本か、ポーション代がかさむな。

MP消費系の魔法を連続して放ったことがなく、疲労がすごいので休憩しながら狩りをする。



狩りを終わってみると4LV上がっており、22LVになっている。

エネミーサーチの魔法が出現しているが、今は必要ないため保留とした。

下々のダンジョンは、LV上げとしては優秀な狩場だ。

休憩しなければもっと上げられたと思う。MPポーション13本消費した。

まだ15時ぐらいの時間だと思うが、疲れたから帰って寝よう。

今日の成果は銀貨13枚、骨3本、銅貨2枚。




----11日目表世界----

チュンチュン。


あの下々のダンジョンやべえ。犯罪者と戦っているためか疲労が残っている。

だが!今日はレイナとデートだ。盛り上がっていこう!

部屋から出て食堂で朝食を食べていると、イーナさんから声を掛けられる。


「ゼロ、あんた20LVこえたんだろ?」


「ぶっ!!」


「そう驚くことじゃないんだよ、私には20LVより上かどうか分かるスキルがあるんだ」


「そ、そうなんですね」


びっくりしたー、この世界ではLVの把握ができないはずなのにイーナさんはそういうのを超越した神的な存在かと。


「なぜこのスキルを持っているかというと、冒険者協会宿舎規定のためさ」


「あ、そういえば20LVまでが宿舎の利用可能でしたね。忘れてました」


「そうなんだよ、だけどお金ももらっているし今日まで泊まっていいよ」


「いいんですか?」


「協会長からも多少は目をつむれと厳命されているからね」


協会長は俺という存在についてどう思っているんだ?


「冒険者は基本、宿とかに泊まるから冒険者協会で色々聞いてみたらどうだい?」


「そうですね。今日までお世話になります。あ、あとレイナさんには20LV超えていることは内緒にしてください。俺が自立したいという理由で宿舎を出ていったことにしてください」


レイナは自分よりもLVが下だと思っているだろうから、非常にまずい。


「分かったよ。私はゼロの不利になることは言わないよ」


「本当にありがとうございます」


「ゼロ、お待たせ」


レイナが帰ってくる。


「レイナ、準備は大丈夫ですか?」


「ええ、待たせたわね」


「いえいえ、さっそく行きますか」


レイナと東門を抜けて歩いて行く。

とてもいい時間が流れてる気がする。

レイナの左手を見ると、力の指輪を小指にしている。なんか嬉しいな。


「今はどこで狩りをしているんですか?」


「私は、ワイルドドッグ4体とコボルトの場所で狩りをしているわ。ゼロもそうでしょ?」


「そうですね・・・あはは」


じー。


「ゼロって誤魔化すの下手よね」


「な、なんのことを言っているのか分かりません!あ、スケルトンです!」


「まあ、いいわ。倒しましょう」


スケルトンごとき敵にならず、道を歩いていくと下々のダンジョンの玄関についた。


「本当にインターホンがあるわね。押してみるわ」


「どぞ」


「はーい、下々のダンジョンですが入られますか?」

インターホンから返事がある。


「!すごいわね。まさか本当にダンジョンが喋るなんて」


最初はびっくりするよな。この展開。

レイナは入りたいわ。と答え下々のダンジョンに入る。

中には冒険者が結構いる。


ほとんどの部屋で冒険者パーティーが食い逃げ犯と戦っており、空いている部屋がなかなか見つからない。こんなに人気の狩場だったんだな。

何部屋も跨ぎ次の部屋の扉を開けると、食い逃げ犯が一人だけでいる。


「レイナ、今回も俺の作戦で戦いませんか?レイナを守る手は用意してあるので」


「いいわよ、コボルトリーダー戦での指示は的確すぎるぐらいだったから」


「はい、では説明します」


レイナに一通り説明する。


「では始めましょう!」


レイナは俺の掛け声と同時に食い逃げ犯に走り出す。


「ダブルウインドブレイド!」


「後で払うつもりだったんだー!」


また意味のない言い分を言っている。

大型の2つの風の刃が食い逃げ犯を斬ることで怯む。


「ライジングスラッシュ!」


「ゲェー!」


レイナは瞬間移動したかのように一瞬で食い逃げ犯に接敵し、大剣を振り下ろして斬った。


「ダブルウインドカッター!」

「ミラージュスイング!」


追撃の風の刃を放つタイミングで、レイナは剣を頭上に高く振り真っすぐに振り下ろす動作と、右から左へ剣を水平に振り抜く動作と、左から右へ剣を振りぬく動作が同時に行われたように見えた。


以前のレイナのミラージュスイングは1度の動作から2回攻撃だったが、3回攻撃になっている。めちゃめちゃかっこいい!

レイナは俺が指示していたとおり攻撃後、即後退する。

食い逃げ犯は復帰後に、レイナ目掛けて拳を振り上げて攻撃するが空振る。


「ダブルウインドランス!」


裏世界と同じように、風の槍で食い逃げ犯はたたらを踏む。もちろん顔は泣き顔だ。

レイナはダブルウインドランスが当たった瞬間に走って詰め寄る。


「ミラージュスイング!」


「ギャアアアア!」


レイナのミラージュスイングが、食い逃げ犯に叩き込まれ光の泡となる。


「ふー、さすがね。

ゼロ、完璧な作戦だったわ」


「いいえ、びっくりしましたよ。ライジングスラッシュも有用なスキルですし、ミラージュスイングも3人同時攻撃なんて超強くなってるじゃないですか!」


「ふふ、ありがとう。そんなに褒めてくれると嬉しいわ」


ミラージュスイングが3人同時攻撃になったという事は、スキルは成長すると強くなることが確認できた。俺の魔法も火力が高くなったりしているのかもな。


「でも、硬い硬いと言われている割には、二人で余裕だったのだけどどうなっているのかしら」


まあ、普通は食い逃げ犯と接敵してタンクが耐えるんだろうけど、怯むタイミングとか考えずに戦えば、攻撃力の高さにタンクは大苦戦をしいられて、タンク以外に飛び火すれば大事故もありうる。4人、5人で攻撃しまくってもHPの高さからタンクが死んでしまうなどもありうるのかもな。あ、もしかしたら食い逃げ犯にはまだ攻撃スキルがあって致命傷もありうるのか、怯ませて倒す俺の作戦では使ってこなかったが気を付けないといけないかもしれない。


「ゼロ?ゼロってば、ゼロー!」


「あ、レイナごめん。食い逃げ犯の考察をしてたら自分の世界にいってました」


「自分の世界ってなあに?」


レイナはおもしろそうに笑ってくれる。本当に笑顔が可愛いな。


「レイナは可愛いね」


「え!な、なにいきなり!」


「あ、いや思ったことが出てしまっただけで、他意はないんです」


「・・・」


「・・・」


レイナは顔を真っ赤にしてうつむく。


やっば!訳の分からない展開にしてしまった、ここは話を流そう!

「レイナ!ドロップ品があるよ!ただ、ここの敵は渋くて銀貨1枚落としてくれればいいとこ、後はゴミが落ちるんだよ」


「?、ゴミってあれのこと?」


「そうそう罪状とか言うふざ・・・?」


銀箱が落ちてる!


「まさか!低LV帯のモンスターでも、運がよければアンコモンやレアもでるっていうのか!」


「運がよかったわね」


「ね!レイナは幸運の女神だ!」


「そ、そんなことないと思うけど・・・」


レイナは恥ずかしがりながら、答える。


「レイナ、せっかくだから宝箱を開けてほしい!レイナが開けてくれれば、いいものが出るかもしれない!」

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