第13話・受付嬢の追求中にやらないか?

「ッ!ゼロさん!このリンゴはなんですか!」


「いやぁ、エアの町周辺にあるゴブリンの巣窟に行ってきて狩りをしたんですよ。あ、リンゴって売れないものです?ゴブリンからドロップしたものですし、価値もなかったりします?」


「言いたいことは色々あるのですが、1つずつお話しいたします。ゴブリンがドロップしたリンゴですが、非常においしくて人気があります。1つにつき銅貨3枚で買い取らせていただきます」


お、結構な額だ。ゴブリンからのドロップもおいしいことに驚きだ。


「そんな事はどうでもいいのです」


どうでもよくなくない!?


「ゼロさんは、初めてゴブリンの巣窟へ行ったんですよね?あそこはモンスターの数も多くLV10ぐらいの魔法使いがソロなんてしたら即死ものです」


確かにレンは即死しそうだったな。


「ゼロさん!そんな場所で狩りをしてリンゴ100個はおかしいんですよ!なぜ100個がおかしいかというと、パーティーなら山分けが基本のため100個という数はソロ狩りかつ圧倒的火力で倒し続けないと100個なんて不可能なんですよ!あなたは魔法使いなんですよ!」


そうです、私は魔法使いです。

そんな事言ってる場合じゃない!マリさんヒートアップしてるし、やばい!マリさんの言ってることもおかしくなってる!

こうなったら逆に中二病キャラで行くか!


手を目に当て、

「マリさん、私には隠された力があるんですよ。ゴブリンの巣窟なんて黒い魔法で敵」


「そういうのいいんで」


めっちゃ冷たい声だ。


「はい・・・」


「ゼロさん、あなたが悪いことに手を染めているとは思えません。ですが、状況が状況なだけに理由を知りたいのです」


ど、どうする?どうする?と悩んでいると後ろから声を掛けられる。


「おー?お前さん俺とやらないか?」


いやもうどういう展開?

マリさんの追求に頭をフル回転しているところに意味の分からないことを言われ、頭がくらくらする。


「おう、俺の魅力にくらくらしているようだな」


マッチョなおっさんがほざいている。色々おかしいと頭に手を添える。


「協会長!変な声の掛け方したらダメですよ!」


マリさんが協会長に進言しているらしい、ん?協会長?


「あっはっはあ、いい男にはこうやって声を掛けるのが流行りなんだよ」


大きな声で話すおっさんは、協会長らしい。女装はしていない。


「マリ、そいつに不信感を持っているらしいが気にしないでやれ。協会長命令だ」


「なっ!協会長、なにか知ってるんですか!」


「まあ、いい男には秘密くらいあんだよ。特例になるが、そいつに協会としての深入りは厳禁だ。これは協会長命令な」


「ぅーーーー!・・・協・会!としては深入りが厳禁なんですね!」


「ああ、個人的に聞き出すなら俺は知らんしな。あっはっはあ」


協会長はカウンターの中へ消えていく。


「協会長はゼロさんの何を知って・・・精算させていただきます」


渋々マリさんが精算してくれる。

協会長は俺の何を知っている?特例扱いする意図はなんだ?

だが、とりあえず触れなくて済むならそれでいいか。


「よろしくお願いします」


「ワイルドドッグの牙27本、リンゴ100個で銅貨435枚と指名依頼の報酬の金貨3枚になります。

但し、今回は2日分の支払いを精算しますのでダンさんへ銅貨80枚、サティさんへ銅貨200枚、協会仮登録で6枚のお支払いとなりまして銅貨449枚お渡しします」


「ありがとうございます」


「そして、ゼロさんおめでとうございます。あなたは正式に冒険者となりました。

冒険者協会はあなたの事を最大限バックアップいたします。なにかお困りごとがあればなんでもご相談ください。

尚、ランクについてはFランクになりました。ランクはF~SSSまであります。

クエストは該当ランク以下のものしか受けられない規定になっており、ランクを上げるにはクエストを高評価で何度もクリアすることで、ランクアップ対象となります。

ランクアップするクリア回数や評価については、冒険者協会が独自に決めますのでご了承ください」


協会長がカウンターの奥から顔を出す。


「マリ、ゼロはEランクスタートにしてやれ。協会長命令な」


「な、そんなこといいんですか」


「ゼロはゴブリンの巣窟で狩りしてたんだろ?そんなやつは、Eランクでいいんだよ」


と言い残しカウンター奥に引っ込む。


「ぐ・・・はぁ。ちょっと特例だらけで頭が混乱しておりますが、ゼロさんをEランクにいたします。クエストをなるべく多くクリアしていただけると、冒険者協会としては助かりますのでよろしくお願いします」


ふー強烈な追及に、やらないか?と誘われたり、Eランクスタートとか、この数日間は異常な展開が多い。

とりあえず次の狩場候補について聞いてみよう。


「分かりました。マリさん、話は変わりますが狩り場について教えてほしいのです。

ゴブリンの巣窟地下2階にはゴブリンメイジがいることはご存じですか?」


「ええ、あそこは物理攻撃と魔法攻撃が混在するのでパーティー必須の狩場ですね」


「そうなんです。魔法で戦うには厳しい狩場でして、俺の要望としてはHPが高くて物理攻撃の経験値が高い的なモンスターいません?」


「やっぱりソロで狩りをしてるんですよね?」


「マリさん、協会長が許してくれてるので黙秘します」


「もう!ゼロさんのいじわる!」


可愛い顔で怒られる。

これは和む。


「ゼロさんの希望する狩場についてですが、東門を出て道沿いを歩いていくと池があります。その池にかかってる橋を歩いて行くと大きい家があり、玄関がダンジョンの入り口になっております。そこに出てくる敵ならゼロさんの希望通りのはずです」


「ちなみにダンジョンまでどれくらいかかりますか?」


「そこまで遠くないと聞いております」


「ありがとうございました」


マリさんに聞いた狩場に行ってみよう、ちゃんと東門の場所も聞いた!

ただ敵の数が少ない狩場は稼ぎが悪くなるのも基本だ。分割払いしている代金を払えないのは非常にまずいので、ポーチに入っている銅貨の枚数を数えてみる。


ポーチに何枚入ってるか確認すると、銅貨918枚と出る。

「そんなにあるの?!」


確かに狩りでの報酬はほぼ黒字だった気がするけど、こんなにたまってたんだ。

まずは、MPポーションを買いに行こう。

もし俺の考えているような敵の場合、最高効率を出すにはMP消費魔法を連打するだろうからMPポーションが必須になるはず!


雑貨屋のおばあちゃんから50本買った。銅貨200枚を支払った。この世界のポーション高すぎない?


準備も整ったし、新しいダンジョンに行こうかとおもったけど外の景色は14時~15時ぐらいな感じがする。うーん、時間が遅いから今日は断念してコボルトリーダーでも倒しに行ったほうがいいかな。


初心者の森最奥にてコボルトリーダーは全力で向かってきたが、戦い方を完成させたプレイヤーにボスは勝てないのだ。

宝箱は木箱で、銀貨5枚とボロ切れ。

ボスドロップでいいものを簡単に引けるのは小説だけで、現実(MMO)ではいいものなんて全くでないのが仕様。

その後はワイルドドッグとコボルトを狩った。


今日の成果は、ワイルドドッグの牙15本、ボロ切れ4枚、銅貨10枚、銀貨5枚。

日没だ。



今日は疲れたし、精算しなくていいかな。宿舎に帰ろう。

ルーティンをこなし、部屋に戻る。


「お疲れ様」


「お疲れ様です」


ああ~、2日間会ってないだけだけどレイナに癒される。

美人で、努力家、そしておかしくない人ってことがこれほど魅力的に感じるとは。


「ゼロ、私にも一声かけてくれればよかったのに」


「??なにをです?」


「エアの町にいったんでしょ?」


「行きましたね」


「私もせっかくだから一緒に行ってもよかったのに。あ、あそこにはゴブリンの巣窟があるでしょ!」


顔を赤くしている。コボルトリーダーを倒したらゴブリンの巣窟で狩りたいなんて、本当に狩りへの情熱を感じるな。いい人だ。


「すみません、イーナさんに依頼を受けましてすぐ発ってしまったもので。でも、ゴブリンの巣窟はいい狩場でしたよ。ゴブリンとゴブリンナイトが山ほどいるので経験値とリンゴの宝庫でしたね。レイナともタイミングが合えば、行いきましょう」


「ありがと」


小さい声でそう聞こえた。

そうだ、せっかくだし硬い(HPや防御力が高い)モンスターが相手ならレイナとペアをすればおいしい狩場になるかもしれないし、誘ってみよう。


「そうだ、レイナは東門から出て道沿いを歩いてくと、池にかかった橋を渡った先にあるダンジョン知ってますか?」


「聞いたことあるわ。確か硬くて攻撃力が高いモンスターがいるダンジョンじゃなかった?」


「そうらしいです。そこで最高効率のLV上げをするには倒すスピードが重要になると思います。だからレイナと一緒に行きたいなと思ったのですが、前衛の正当なタンクではないのでどうかなと」


「そうね、私では引き受けられないかもしれないけど、一度見てみたいわ」


「ですね、じゃあ明日一緒に行きましょうか」


「分かったわ、私は朝ポーションとか買ってきたいの。だから、ゼロがご飯食べた後ぐらいには帰ってくるから待っててくれる?」


「分かりました、では今日は寝ましょうか」


「おやすみなさい」


「おやすみ」




----10日目裏世界----

チュンチュン。


ふー。

レイナとデート(狩り)か。楽しみだな。

ここ数日変な人ばっかだったし、もうお腹いっぱいだよ。

ではお待ちかね、硬い敵がでるというダンジョンへ行くか!


東門から出ると西門とは違い、荒野が広がっている。西部劇に出てきそうな風景だ。

西門と景色が違いすぎだろと突っ込みを入れたい。


でも一本道で分かりやすいから助かるな。

歩いて行くと、剣を装備した骨2体が襲ってくる。スケルトンという名前だ。

うーん、まあとりあえずウインドランスからいってみるか。


「ダブルウインドランス!」


風の槍2本がスケルトン2体をバラバラにし光の泡に変える。

とりあえず、ウインドランスで1確だな。

最初の街周辺に、強いモンスターはいないと思っていけど、やっぱりいないな。その後も数体のスケルトンと戦ったが、ダブルウインドカッターで1確だった。

ドロップ品は、骨1本。定番っちゃあ定番か。

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