第11話・宿舎おばちゃんの頼み事

----9日目表世界----

チュンチュン


「んー、ん?」


起きて横を見るとレイナがいる。どした?


「どうしました?」


「・・・ごめんなさい」


「なにがです?」


「昨日、飲み代支払ってくれたんでしょ。それも私の事、宿舎に運んでくれたんでしょ、ありがと・・・」


顔を赤くし、恥ずかしそうに語る。

うん、いいね。


「全く気にしないでください。男の甲斐性を見せるところですし、寝顔もとっても可愛かったですよ」


「!!・・・」


「でも、そのことを言うために起きるのを待っていてくれたんですか?」


「当然よ!大失態して介抱してもらって無視なんてありえないでしょ・・・」


「ふふ、レイナさんとの飲み会楽しかったですよ。また行きましょうね」


「ええ、ありがとう。どこかで埋め合わせするわ」


「気にしないでください。今日も元気に狩りにいきましょう」


レイナは、申し訳なさそうな笑顔で手を振りながら狩りに出かけた。


俺は宿舎おばちゃんことイーナさんにご飯を用意してもらい食べる。


「ゼロは、レイナちゃんと仲良くやっているようだね」


「そうですね、少しずつですが仲良くなれてると思いますね」


「ふふ、尖ってるレイナちゃんと仲良くなるなんてできた男だね」


「ありがとうございます」


褒められて嬉しくない人はいないよな。


「ねえ、ひとつお願いがあるんだけど聞いてもらえないかい」


「どうしました?」


「実は、隣町にある雑貨屋に薬を取りに行ってもらえないかい?

本当は、前日に届くはずだったんだけど配達の人がモンスターに襲われたらしくて届かなくて困ってるのよ。冒険者協会クエストとして発注するからお願いできないかい?」


「分かりました。受けますよ」


イーナさんには色々世話になってるし、よく考えれば全然クエストもやってない。多分クエストをクリアしておかないと、好感度やら協会でのランクとか色々あるだろうし本腰いれないといけないかもな。


「隣町っていうのは、エアってところで西門から道沿いに行くとあるのよ。朝から歩けば昼には着くらしいんだけど、モンスターが出現するから護衛がいないときついらしくてさ。出現するモンスターはワイルドドッグ程度だって聞くから、ゼロなら余裕なんだろ?マリから聞いてるよ」


マリさん個人情報漏洩では?


「まかせてください。いつもお世話になっておりますので」


「ありがとう、じゃあお願いするね。無理を言ってるし報酬は金貨3枚でどう?期限は明日までに薬を持ってくること。後、マリに聞いたんだけど毎日分割払いがあるんだろ?その分も明日まとめて2日分払ってくれればいいって言ってたからね」


個人情報という言葉は、この世界にはないらしい。

報酬の金貨3枚は、ダンさんとサティさんに2日分を払える額だ。さすがイーナさん助かる。


「雑貨屋の人には、イーナの薬を取りに来ましたっていえば通じるから。お金も払ってあるし、薬だけ受け取ってきてくれればいいからね」


「色々とありがとうございました。では行ってきます。あ、西門ってどこにあるのですか?」


「あんた、そんなことも知らなかったのかい」


この国の名前さえまだ知らない状況だが、とりあえず問題はないだろう。

西門の場所を大まかに教えてもらい、正門から街を出る。


壮大な草原が広がる、風が気持ちいい。

見渡す限りの草原は、アニメとかのファンタジー世界そのものだ。

さて、朝から昼までかかるというから3~4時間くらいかな?長い道のりだ。


道沿いと言っていたが、分岐する道で迷ったりしないのかな?と思ったが広い道は一本しかないから一目瞭然だ。

1時間近くあるいただろうか、遠くに小さい人影のようなものが見える。

だんだん近づくにつれ人ではなく、定番の緑色の肌にスキンヘッド、武器が棍棒といえばゴブリンだ。

5体ぐらい見え、向こうも気づいたのか走ってくる。

ワイルドドッグより足は早くない。

まあ、序盤ででてくる敵の代名詞だし問題はないと思うが検証だ。


「ダブルウインドランス!」


「ギ・・」


風の槍2本はゴブリン2体を光の泡にする。


「ダブルウインドブレイド!」


「ギャ・・・」


続けて、風の大振りの刃がゴブリン2体をぶった切り光の泡へ。

最後の一体は逃げ出した。


「まじか!逃げ出すのは初めてだ」


走って追いかける。

ウインドカッターで倒せるか試すまではしないと。

射程に入った!


「ダブルウインドカッター!」


ゴブリンは2つの風の刃に切られ、光の泡になった。

ふむ、HPもワイルドドッグ程度なのだろうか。

LVが16になった。魔法は~?


・ファイヤーボール

・ウォーターアロー


LV15になった時にでていたエネミーサーチがない!

スキルポイント的な仕様だろうな~、エネミーサーチ欲しかったな~。

さて、気を取り直してゴブリンのドロップ品はなにを落としてるかな?


リンゴ2個、銅貨1枚。


「リンゴて!」


これ食べれるのか?本当ならテロップとか出現するところだろうけど、この世界名前表記は出るくせに説明はでてこない仕様だもんな。

でも、ゴブリンが落とすリンゴって普通に腐敗か毒入りリンゴにしか見えん。

まあポーチにしまっといて、知っている人に聞こう。


歩いているとスライムも現れた、お決まりと言ってもいい展開。

強さはゴブリンとそう変わらず、魔法でほぼ1確だ。


スライムのドロップ品は、

スライムの液体が2箇所で地面にへばりついている。


地面に広がってるのは、緑色の液体。粘度が高そう。

確かにゲームとかで出てくるのはこういうアイテムだよな、だけど俺がこれを触ってポーチにいれないといけないのか。

嫌だな・・・ゲームのキャラ達はこんなものを躊躇なく拾ってたな。尊敬するぜ。

とりあえず、手で掬ってみる。


ねちゃぁ。ってなるよな・・・触りたくなかったー!ただ、液体だが粘度が高いため掬えないほどではない。

ポーチに無理やり入れてと。

ふー。

汗をぬぐう仕草をする。

あのスライムを触ってた時は手がねちゃねちゃだったが、今は乾いている。

ゲームだなあ。


気を取り直してどんどん行こう!

その後もゴブリンやらスライムは数体でてきたが余裕を持って倒し歩いていたら、前に人影がみえる。

またモンスターって展開もあるが、どうかな?


「そこの人―!」


こちらに向けて手を振ってるが、そこの人ー!って叫ぶ人いるか?


叫んでた人が近寄ってくる。

髪の毛は紫色でイケイケの兄ちゃんって感じの人だ、手に杖を持っている。


「そこの人、もしかしてエアの町に行く予定?」


「ああ、エアの町に向かう予定だけど?」


「よかったー!俺、エンリルからエアの町に向かってたんだけどさー、道に迷ってて連れてってくれない?」


めちゃめちゃ馴れ馴れしいが、それ以上に気になることがある。


「すまん、エンリルとは?」


「エンリル知らないの?イーリス王国の首都エンリルに決まってるじゃーん」


首都ってことは城がありそうだな、もしかして俺がいた場所が首都か?


「エンリルって初心者の森にいける冒険者協会がある場所?」


「そそ!知ってるじゃーん!」


俺がいた場所はイーリス王国の首都エンリル。向かっている町はエア。

覚えておこう。


「待て待て、エンリルからエアまで一本道だし迷うことなんてないだろ」


「いやー、エンリルからもう5日は経ってるんだよね!結構近いって聞いてたのに、騙されたっぽいのよ」


こいつ極度の方向音痴だな。


「まあ、一緒に行くのはかまわないけど」


「ありがとー!俺はレンだ、よろしく!」


「俺はゼロという。よろしく」


握手を求められたので返したが、握手したのなんていつ振りだろう。


「レンは魔法使いなのか」


「そうだよ!水魔法がメインなんだけどー、ネクロマンサーに転職したくてがんばってんだよ」


なに!ネクロマンサー!

俺は昔からゾンビ映画大好きだし、ネクロマンサーとか闇魔法が大好きだ。

憧れるけど風魔法がなんだかんだ気に入ってるから、ネクロマンサーに転職はないな。


「なにー、ネクロマンサーに興味あるのー?俺と一緒に目指さない?」


こいつ、この性格でネクロマンサー志望ってギャグにしか思えんが。

だが、レンとは気兼ねなく話せそうだ。

ネクロマンサーに転職したら、ギルドバトルとか一緒にやれたらいいな。

ギルド員の職業が多彩なのは、間違いなく有利になる。


「転職先についてはまだ考え中。でもネクロマンサーってかっこいいよな」


「だよなー!魔法使いになったら、ネクロマンサーを目指すのが基本だよなー!」


そんな基本はないし、ちょっと抜けてそうだが悪い奴じゃない。

世間話をしていると、エアの町がみえてくる。

よくアニメとかででてくる西洋の田舎って感じの風景だが、暖かみが感じられそうなのどかな町だ。


「ゼロ!ありがとな!次は一緒に、狩りに行こうな!」


「ああ、その時はよろしくな」


レンはエアの町に消えていく。

俺もとりあえず雑貨屋へ行って薬をもらいにいってくるか。

雑貨屋の場所を周辺の人に聞いて辿り着き、さっそく入る。


「すみません、イーナさんに依頼されて薬を取りに来た冒険者ですが」


「んー?ああ、イーナの薬かい。ほれ、これだよ。」


雑貨屋はおばあちゃん率高いな。


「ありがとうございました」


薬は手に入れたから帰るだけなんだけど、期限は明日まであるし周辺にいい狩場があるといいんだけどな。

剣を背負った冒険者っぽい人がいたから声を掛けてみる。


「すみません、この辺りでLV15ぐらいの狩り場あります?」


「そうだな~、この道を真っすぐいくとダンジョンがあるぞ。

洞窟みたいな入口だからすぐ分かると思う。後は、奥に行くにつれてモンスターが強くなるから注意しろよ」


「ありがとうございました」


とうとうダンジョンか、初心者の森はダンジョンではなかったという事だな。

そういえば、あの人洞窟みたいな入口って言ってたな。洞窟じゃないのか?洞窟みたいな入口なんて表現するか?

なんて考えながら歩いて行くと、洞窟の入り口だけが見える。

ただ、山や洞窟があるわけではない。草原にぽつんと洞窟みたいな入口だけがある感じだ。

この世界では、ダンジョンはこういう感じの入り口なのかな?

看板が立っており、「ゴブリンの巣窟」と書いてある。

巣窟って怖!

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