第10話・女剣士と酒場、ソロでコボルトリーダー戦

ボスも倒したし、レイナと飲みにいく仲にもなった!本当にいい日だ。

舞い上がり終わると冷静になってくる。

さ、切り替えていこう。飲みに行くのは楽しみだが、裏世界でコボルトリーダーをソロ討伐という目標はまだ残っている。

いつもの狩場にいってウインドブレイドを試してみよう。


コボルト2体が前から歩いてくる。

ウインドブレイドの火力を検証できるチャンスだ。


「ダブルウインドブレイド!」


コボルト2体へ大振りの風の刃が飛んでいく。コボルト2体とも風の刃で真っ二つになり、光の泡になって消え去った。

ウインドカッターはカマイタチっていうイメージだったけど、ウインドブレイドはごつい刃ってイメージ。クールタイムはウインドランスより長めか?

コボルトリーダーとの闘いで、ウインドシールドやサドゥンウインドの有用性は分かったし撤退も問題なくできそうだから、裏世界に行ったら挑もう。


もうすぐ日没だ。

今日は、はやめに切り上げよう。

今日の成果はワイルドドッグの牙20本、ボロ切れ6枚、銀貨5枚、銅貨10枚。


一旦、宿舎へ行って保管箱から裏世界のドロップ品を取り出して協会へ。


「マリさん、精算お願いします」


「はい、かしこまりました。

それにしても、ワイルドドッグの牙の納品本数が40本を当たり前のように超えだしましたね」


「ペアで狩りをしてくれる人がすごいのですよ」


・・・


「ゼロさん、そろそろ教えてくれてもいいのですよ?」


マリさんは、にこやかだった。

怒気が滲み出てるような気がするが、気のせいだと必死に言い聞かせる。


「マリさん、なにをいってるんですか~。

俺が色々教えてほしいほうですよ」


「尋問の仕方とかですか?」


・・・


「あはは、では精算をお願いします」


「ゼロさん。

ここは引いてあげますが、分かっていますね」


「はい・・・」


すごい笑顔なのに怖い。


「今回は、ワイルドドッグの牙51本で255枚になりますが、ダンさんへの支払いが40枚、サティさんへの支払いが100枚、仮登録の支払いが3枚で銅貨112枚お渡しです」


「ありがとうございます」


貨幣を受け取った手をガシっと両手で握られた、ビクッとなってしまう。


「ゼロさん、くれぐれも!お願いしますね」


「は、はい・・・」


うーん、マリさんにはどう話そうか。もし、ドロップ品を人から強奪するような犯罪者だと思われたら困るけど、正直に話をしたら嘘をつかないでくださいってなるだろうしな。

思いつかない!後の事は、未来の俺に丸投げしよう。


レイナと初飲み会か、というか初外食なのでは?宿舎が家なのかという話はあるけども。

宿舎に着くとレイナが部屋から降りてきた。


「イーナさんにはご飯はいらないと話を通してあるからいきましょう」


「ありがとうございます」


レイナに連れられて宿舎を出て通りを歩いていくと、酒場が見えてきた。


「あそこよ、ここの街では評判のお店なのよ」


「それは楽しみですね。俺は宿舎以外でご飯を食べたことがないので」


「そうなの、じゃあとっても美味しく感じられるわね」


酒場に入ると、すごい喧噪だ。


「ねえちゃん!酒もってこい!」


「あの時に、ずばっと剣で切り裂かないからいけないのよ!」


「どうして、俺には女が寄り付かないんだ・・・」


色々な人の声も聞こえながら、レイナと席へ座る。

髪はショートで金髪のお姉さんさんがやってくる。


「いっらっしゃいませ、あれ?レイナ~そちらの男性は?」


「宿舎仲間のゼロっていうの」


「宿舎仲間してます、ゼロといいます」


ファンタジーの酒場にいるお姉さんは軽い雰囲気が特徴的だよな。


「はじめまして~、この酒場の看板娘でウェイトレスのミラっていいます~」


「よろしく」


「へぇ~、結構話せそうね。レイナなんて初対面で話す気ないオーラ全開だったから、そういう連れかと」


「レイナは、結構怖いですよね」


レイナがめっちゃ睨んでくる、ここは無礼講じゃないの?!


「とりあえずエール二つと適当につまめるもの。ミラは早く注文通して」


「ええ~、つれないな~」


と言いながら、ミラさんは注文を通しに調理場へ。


「ゼロって初対面は敬語じゃないの?」


「いや、人によってですね。話しやすそうな雰囲気の方にはラフに話しますね。まあ使い分けるほど上手くしゃべれるわけじゃないですけど」


現実では会社の上司や部下とは会話できても、ハイテンションな人やパリピ的なノリで会話するのは得意じゃなかったからな。


「そうなの、私と話すとき敬語ってことは話しにくいってことね」


「そ、そういうわけではないのですが」


やべえ困ったなと思っていると、ミラがエールジョッキ2つとチャーシューみたいなものを運んできた。


「レイナ~、あんまりゼロを困らせないの~。ただでさえ怖いんだから」


「そんなことないでしょ!」


「では、ごゆっくり~」


ここは今までのやり取りをなかったことにして乾杯だ!


「レイナ、コボルトリーダー討伐に乾杯しよう!」


「露骨すぎでしょ、乾杯」


「乾杯!」


「聞きたかったんだけど、レイナはなんでソロ狩りなの?」


「私、パーティーに依存しない自立した冒険者になりたいのよ。そのために、誰よりも強くなる努力を怠れないと思っているわ」


うわー、その考え方はものすごく共感できる。

やっぱりレイナは俺が尊敬するタイプの人間だ、自分の目標のために努力ができる人間は輝いてみえる。


「ゼロは?」


「俺がソロで狩りしているのは、面倒だからですかね?パーティーってみんなの時間が合ったときしか組めないですよね?だから、俺が毎日狩りに行くぞ!と言っても、今日は無理とか予定があるとか休みたいとか言う人がいたときに、狩り場所を変えたりして予定どおりに物事が進まなくなるというか、だからソロ狩りメインです。でも、狩り効率が段違いとか、パーティーでしか狩れないボスなら、もちろんパーティー歓迎です」


「ふーん、なかなか面白い考え方ね」


そのあとは飲みながら、コボルトリーダー戦についてとか魔法やスキルや狩場などを二人で話しあっているとレイナの様子が変わってきた。


「だ~か~ら~、ゼロは他人行儀すぎるのよ!」


「はい・・・」


「そういうところなの。私以外の女性とは簡単に仲良くなるのに、私とは仲良くしようとしないじゃない!ボスも一緒に倒した仲なのに!」


「はい・・・」


「だ~か~ら~、ゼロは~」


レイナはまさかの酒乱だった。

レイナにお酒を飲ませるとやばいことになるという教訓を得た。

そして当然、ここの支払いは俺だ。銀貨6枚の出費で酒癖の悪い女に絡まれたという結果になったが、こういうのもありだと笑えてくる。

レイナはもう寝てしまっており、背負って宿舎まで帰り布団に寝かせる。

ふー。女性を背負うのは香りやら、背中やら色々でドキドキものだ。役得というやつだな。現実ではこんな体験できないから、純粋に嬉しい。

俺も寝よう。



----8日目裏世界----

チュンチュン。


さて、あんなに楽しい夜だったけど、すぐに裏世界の始まりだ。

ウインドブレイドも手にはいったし、コボルトリーダーソロ戦いってみるか!

あの広場から出てこないという情報もあるし、広場から出るすれすれの場所で戦えば撤退も問題はないだろう。


初心者の森の最奥へ行く、途中の邪魔なmobは速攻で倒した。

さあ今回はソロだ、気合いれていくぞ!

最奥の広場へ入ると、すぐにコボルト3体が吠えて走ってくる。

コボルトは広場に入った瞬間に走ってくるため、魔法の射程に入るまで待つ。

この戦法によりコボルトを倒した後にコボルトリーダーが走ってくる時間でクールタイムを稼ぐ。


「お前らに用はねえ!ダブルウインドランス!」


コボルト2体をウインドランスで倒し、すぐダブルウインドカッターを当ててコボルト1体を倒す。


「ガァガァガァヴァァァウ!!!!!」


初戦と同じ通りコボルトが倒されると叫び、こちらへ向かって走ってくる。

今回、レイナという前衛がいないために一方的に勝つ作戦が必要だ。

コボルトリーダーの攻撃は1度だけウインドシールドで防げるが、回避能力のない俺では2度目はないと思ったほうがいい。その条件を含めてコボルトリーダーのHPを削り切るには、ダウンのような状態にさせてウインドカッターを当てる回数を増やすしか勝機はない。


「一手目!ダブルウインドブレイド!」


この2つのウインドブレイドをただ単純に当てても、コボルトリーダーは止まらないだろう。

だから考えた、2つの高火力魔法を片足に集中させて打ち込めば時間を稼ぐことができるんじゃないか。


「ガヴァ!?」


2つの風の刃が、コボルトリーダーの右足脛辺りを水平に切りつけた。結構深手にみえるぐらい抉ってそうだ。

コボルトリーダーは片足を切り裂かれ、片膝をついた。

ここだ!


「ダブルウインドカッター!」


「ダブルウインドカッター!」


コボルトリーダーは立ち上がり、怒りの形相で槍を突き出してくる。


「ダブルウインドシールド!」


コボルトリーダーはシールドに弾かれて体制を崩す。


「ダブルサドゥンウインド!」


ゴーッという突風が吹き荒れ、コボルトリーダーは後ろ向きに倒れる。


「ダブルウインドカッター!」


「ダブルウインドカッター!」


コボルトリーダーがよろよろと立ち上がろうとしてる時に、ウインドランスのクールタイムが戻ってくる。


「ダブルウインドランス!」


「ガヴァァァァァ・・・」


2つの風の槍がコボルトリーダーを倒した。


「よっしゃー!コボルトリーダーを倒したぞー!」


頭に描いたとおりに作戦が上手くいってくれて助かった、別の行動パターンをされたら、パニックになっていたと思う。

結果は、ボスを危なげなくソロで倒した。これは相当大きい。

これでコボルトリーダーを毎日狩れる。


毎日狩るのにも理由がある。

コボルトリーダーのドロップ品に全くでない幻クラスの早足の腕輪という、移動速度が早くなる装備がでると。

移動速度向上アイテムは足装備にしかないそうだが、腕という場所に装備する事で足装備の邪魔にならずに移動速度を上げれるという破格の性能との事。それもコボルトリーダーしかださない。だから本当は大人気ボスになり得るのだが、ならないのには理由がある。それは、LV差がありすぎるとドロップ率が下がるという仕様らしい。という事は適正パーティーで挑むべきだが、あの攻撃力をもつボスの攻撃を受けて立ち回れるタンクがどれほどいるのだろうか?経験の浅い者同士パーティーを組めば間違いなく崩壊する。だったら、コボルトリーダーは諦めてLV上げようってなる。

そのため挑む人がいないという事になる、というような事から超高値で取引されるとの事。売れば大金になるだろうが、手に入れば売らずに装備一択の予定。移動速度は狩りやクエスト、移動に必要なものだ。

ただ、目の前にあるのは木箱だから、間違いなく腕輪は入っていないだろうけどな!

開けると、ボロ切れと銀貨5枚。

これはヒドい。


その後は憂さ晴らしにワイルドドッグ共を狩る。そろそろ次の狩場を探してもいいかもな。

日没だ。


成果はワイルドドッグの牙27本、ボロ切れ9枚、銀貨5枚、銅貨11枚。

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