第155話 アルティモラック 護衛戦車
私は、魔界の奥地に入り込むのを待っていた、やるだけやってみるつもりだ、こっちにも半物質転換砲がある、衛生起動から打ち出す、シュミハザの予想では、破壊力はこちらの半分以下、としても、超破壊兵器打ち合ったら、ムアール大陸にも大きな影響が出るかもしれない。
サテライトビームや、パルスレーザ、超荷電子砲では、コスモナイト鋼のボディは破壊できない、半物質転換砲しかないのだ。
「 シュミハザ、反物質転換砲準備 」
「 光化学照準、妨害、電波照準妨害、熱誘導システム妨害、 M1-PP3型超破壊兵器、バリアー展開 」
「 シュミハザ、攻撃準備解除 」
「 監視モードに移行 」
どうやら、衛生起動にまで、攻撃手段は持ってなさそうだが、イージスシステムは装備している。
反物質転換砲の着弾をそらされる可能性がある。
シュミハザは地底から出て来たばかりの私とリンクができた、シュミハザのほうから、接触してきた。
待機命令を受けて、待機していたからだ。
戦車はどうなのだろう。
「 シュミハザ どうして私に接触してきたの 」
「 ID カードを確認、ヒーマン族は私の創造主 」
「 ID カード 」存在を忘れていたが、体に埋め込まれている。
他人に見せる事は絶対に無い、他人に観られたら最大級のプライバシーの侵害だ。
文明の発展と共に、公害、環境破壊、戦争技術なども発展、それ以外にも、化粧についても驚異的に発展、整形手術などする必要もなくなった、20分も化粧をすれば、原型など全くわからない別人に代わる。
私は最低でも1時間以上化粧に時間をかけていた、化粧後の私を知っている人は、すっぴんの私に気付くことなどありえないのだ。
ところが、IDカードに保存されている、顔データはスッピン、誰にも知られてはならない、超機密事項である。
一応、すっぴんでも、それなりだったと自負している。
女性にとってスッピンは墓場まで持っていくような秘密事項なのだ。
相手は、戦車、IDカードを使いたくは無いが、仕方がない。
「 ID OPEN 」
左腕のくるぶしあたりに浮かび上がる半透明のパネル。
「 えへへへへへ 」
今の私の顔が表示されていた、化粧の必要性を感じないほど、自分で言うのも何だが可愛い。
これだったら、誰かにみられてもかまわないかも。
ID カードを堂々と表示させられる女性なんて、数えるほどしかいなかった。
自信が出て来た。
プラン1 : IDカードを表示させながら戦車に近づく。
アクセスできるなら、停止命令など何とかなるかもしれない。
プラン2 : 戦車に私が取りつき、私に向かって反物質転換砲を撃ちこむ。
私というマーキングがあれば、戦車の防御機能を突破できる。
そのときは、私も消え去る。
魔界の深部にいるうちに、消滅させたい、覚悟はあっさりとついた。
本来なら、とっくに死んでいた、5000年も眠りつづけていたのだ、終止符を下ろす時がきたのかも。
これもいいかも、全身ナノマシンでできた体、生きる事にも未練はないのか、感情の揺らぎはなかった。
夜の砂亭、手紙を書いた、その割には未練があるのかも、関わりがあった人達を思い、短いお礼。
「 エンケドラス 行くよ 」
宿から直接空に舞い上がる。
プラン2の場合、半物質転換砲を打ち込んで、空間魔法を展開自分が作った、異空間に避難、どうなるのかわからないが、もしかしたら、助かるかもしれない。
最後の最後まで、あがく、いくら冷めていても、生きる事を、あきらめたりしない。
エンケドラスと私は、戦車の直ぐ近くに降りる。
「 ID OPEN 」
「 シュミハザ、私のIDを戦車に送信して 」
戦車は破壊攻撃を中段、私のほうに向かってくる。
戦車のAIから、通信が入ってきた。
個体名 ’ アルティモラック 303345 護衛戦車 ’
創造主たるヒューマン族を探していたようだ。
何かの理由でスリープ状態、突然スリープ状態が解除になり、優先命令順位1、ヒューマン族の護衛。
護衛対象消滅した場合、報復行動、人工物の破壊。
私のIDを確認したので、私の護衛任務をするようだ。
それって、私が死んだら、ムアール大陸を破壊しつくすって事、予想外過ぎる!
頭が痛くなるような大問題を抱えてしまった。
人間ってなんて愚かなの、過去に生きた人々も、リセットして新しくなった世界の人達も、同じようなことを繰り返す。
私は魔界にいる、例の廃墟遺跡である、この遺跡のダンジョン化は進んでいるようだ。
私と封印の魔女の拠点としての快適なお家。
私の護衛をしているのは、軍事衛星シュミハザと、軍用戦車、そしてダンジョンを守るため生み出された魔物達。
周りは自然に満ち溢れた環境。
封印の魔女は、人と関わるのをやめて、この場所で、彼女の魔法研究のすべてを引き継いでほしいと言っている。
戦車のAIと対話して何か考えるか。
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