第153話 海の底から
夜の砂亭に向かって、ゆっくりと歩いていると、スッチン伯爵がやってきた。
「 ま、ま、魔女様ぁぁ 」
突然涙ポロポロしだす。
「 何かあったのですかぁ 」
「 誰かに、いじめられたの 」首を縦に振りながらガン泣き。
宿に向かっていたのに、しかたなく領主の館にいる、人がいる所だと、こういった付き合いがめんどうでもある。
執事のプッティポンさんから説明を聞いている。
私がダラムに最近いないのも、別の場所に拠点を作っているのも、すべて領主であるスッチンが原因だと、ここ最近責め立てられている。
「 どうして、私の事でスッチン伯爵が責められているの 」
「 それは、彼が、ダメな領主だから、魔女様のご負担が増えるからです 」
執事がダメ領主と言ったらいけない気がする。
「 私は自由よ、冒険者だし、私の事で関係ない人が巻き込まれたようなフリをしないで 」
「 そうねぇ、存在が大きすぎるから、こうなっているのよ 」
封印の魔女に言われた。
「 良い方法を思いついたわ、貴女の事で騒ぐことがないよう、魔界の森で暮らしましょう 」
封印の魔女、魔界の拠点がメッチャ気に入っている。
「 そんなことになったら、ダラムの民に殺されてしまう 」
私達にはどうでもよいというのか、どうして領主が泣くのか今一つ理解できなかったので、さっさと宿に向かう。
家具や街を周り、気に入った物を購入し、世界の箱の中に入れ込む。
「 私の家にある小物も持っていきたいわ 」
「 では、チャエブ村にも寄りましょう 」
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海の都サンマルゼ、ムアール大陸でもっとも大きな海の拠点でもある、サンマルゼでは、巨大な帆船が作られ、海に出ていき、巨大な海の生き物でさえ捕獲できる船を持っていた。
サンマルゼ港、最大の帆船、カティサーク丸が、海底の底から鉄の塊を引き上げた。
どう見ても鉄、しかし錆は無い、海の底から引き上げたにも関わらず、貝の付着さえない、
どのような、武器を持ってしても、傷一つ付ける事ができない、神の遺物ではないかと、毎日魔法新聞が取り上げた。
「 レイスト、海の底から変な物が見つかったようだね 」封印の魔女は、2人だけのとき、漆黒の魔女の事を、’レイスト’と愛情を込めて呼ぶようになっていた。
漆黒の魔女のほうは、’ お婆ちゃん’ と呼んでいる。
その記事に写っていた神の遺物? の写真を見て、体が震えた、戦車が写っていた。
軍事企業オムニムス社のマークが入ってる、ナノマシンの開発研究社として過ごしていた頃の記憶がフラッシュバックする、 世界中の国にオムニス社は兵器を販売し、国々はその武器を使い戦争、環境破壊が一気に進行した。
「 レイスト、 レイスト どうしたの 」
意識を空に集中、シュミハザに海の都サンマルゼに向かう用指示、シュミハザなら、どんな物なのか、調べらるかと思ったからだ。
直ぐに、ダラムのスッチン伯爵に連絡を入れる、通信用の魔石を渡しておいてよかった。
「 聞こえますか、スッチン伯爵、レイストリンです 」
「 漆黒の魔女様ぁあああーーっ 」
「 毎日魔法新聞は、近くにありますか、神の遺物が乗っている記事です 」
指示を出している声が入る。
「 今、見ている 」
「 神の遺物なんかじゃありません、 この世界の前の支配者、ヒューマン族の事はご存じですね 」
「 勿論だ、」
「 ヒューマン族の武器です、金属の塊の刻印、間違いありません 」
「 いますぐ、海の底深く、2度と見つからない所に廃棄してください 」
「 急いで! 」
「 漆黒の魔女様、 国家元首のエンリコです。 スッチン伯爵の横にいる 」
( 何故だか、二人はお互いの傷を舐め合い、私は悪く無いのだと言い訳をしていた )
「 私も、それが、どのような物かまではわかりません、ですが、我が父より、人の眼に触れさせてはならない物、この世界にあってはならない物であると教えられています 」
「 手を振れてはなりません 」
「 速やかに処分してください 」
「 わ、わかった、手配しよう 」
「 漆黒の魔女がここまで恐れるのだ、一刻も早く処分しろ! 」
「 海の底から、人が触れてはならない物を、引き上げてしまったというのか 」
「 レイスト、それほど恐ろしい物なの 」
「 何なのかもわからないですが、触れてはならない物である事だけは間違いないです 」
漆黒の魔女は、あわてていた、冷静でなかった、スッチン伯爵達もそうである、人祓いという事を忘れていた。
漆黒の魔女の言葉は、いっきにムアール大陸に広がりを見せた、旧世界の支配者だった、ヒューマン族の武器、 あらゆるものを支配し、空に輝く星さえも行くことができ、空も支配していという伝説の存在。
海底から引き揚げられた、鉄の塊は、破棄される前に盗まれてしまった。
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