第151話 新しい拠点

 少し予定がずれてしまったが、封印の魔女と一緒に、ダンジョンコアを設置する候補地にやって来た。


「 素晴らしい場所ね 」

 山があって、湖があって、平原があって、川があり、魔界の植物に飲み込まれている遺跡の残骸。

 エンケドラスが周辺の魔獣狩りを始めている。


 ダンジョンコアを世界の箱から取り出すと、遺跡の壁に吸い込まれるようにして消えた。

「 何処にいるの? 」


 遺跡の岩と岩の隙間から生えている、雑草が揺れる、どうやら近くにいるようだ。

「 ここにいたいの? 」

 雑草がゆれる。


 周りの雰囲気は最高なのだけど、魔物が近寄ってきている。


「 エンケドラス 食べ物確保してきて 」

 周辺の生態系に住む魔物には悪いけれど、ここは私達が使うのよ、弱肉強食の世界、文句は言わせない。

 エンケドラスが調達してくれた魔物を火であぶり、塩をふりかける。


 しばらくここで、生活してみよう。

 封印の魔女と一緒だし、問題ない、私一人だと長期間魔界にいると野生化してしまう傾向がある。


 エンケドラスが狩ってきた魔物、冒険者の依頼書のランクだとSランクに匹敵するような、強い魔物、火で焼くだけでも、超美味しい、それに塩があれば、大満足。


「 これほどの魔物だと、素材の味だけで十分、味付けするのがもったいないわねぇ 」

 封印の魔女も同意見である。


 10匹ほど狩ってきてくれていたのに、1夜あけると消えていた。

 完全に瓦礫だった遺跡、ダンジョンコアが溶け込んだあたりだけが、修復されているような。


 それらしき建造物。

 魔物を吸い込んだの? 遺跡がダンジョン化し始めている。


「 面白いわねぇ 」

「 エンケドラス、もう少し魔物を狩ってきて 」


 修復された部分に魔物を置くと、床に吸い込まれていった。

 魔物気配が近くに、骨だけの魔物スケルトンがお辞儀している、襲ってくる気配はない。

 なんとなくこいつが何者なのかわかった。

 この遺跡を取り仕切っていた、メイド長がスケルトンとして復活したような。


「 料理作れる、道具はしっかりとあるから 」


 スケルトンは、綺麗なお辞儀をした、いつの間にかスケルトンが数匹に増えているし、料理を作っている。

 ぉおーーーーっ! 私ここで生きていけるかもしれない。


 ダラムに戻って、ベッドとか抱き枕とか、安眠枕とか羽毛布団とか、調達してこなくちゃ。

「 雑用はスケルトンがやってくれるみたいだし、ここなら落ち着いて魔法の研究に取り組めるね 」

「 そうねぇ、引っ越そうかしら 」

 封印の魔女も乗る気のようだ。


 冒険者ギルド

「 ダムロンさん、食い意地がはっているなんて言うから嫌われたんですよ 」

「 あやまったほうがいいですよ 」男冒険者達

「 もう手遅れ、女性に食い意地が張っているなんて、私だったら殺しているよ 」


「 そうかぁ、そうか、超笑顔なギルマスと領主 」

「 ダムロンが嫌われたか、とても素晴らしい 」


 して、我らの魔女様は?


「 なにぃーーーっ! 」

「 ベッド、羽毛布団、安眠枕、抱き枕を、店で買ってどこかに消えたぁ。。。 」


 ダムロンが復活、「 一大事だ 」

「 し、しばらく前に、調理道具一式そろえたぁ。。。 」

「 それはおかしい、火で焼いて塩ふって食べるだけだぞ、調理道具なんていらないはずだ 」

 漆黒の魔女本人は料理上手と思われているつもりだが、誰もが実態を知っている。


「 あいつは、超高火力で周りを破壊するだけだ、寝具とか調理道具とか、絶対におかしいぞ 」

「 もしかして、女に目覚めた。。。。 」

「 もしかして、男ができたぁ。。。 」

「 なにぃーーーっ! 」

「 魔女様もお年頃だしねぇ 」

 挙動不審になってしまったダラムの男冒険者。


「 その依頼、受けないなら、あたしがもらっとくよ 」


「 ダムロンさん、自慢の魔石使って下さい! 」

「 お願いします 」

「 これを緊急事態と言わずに、何を緊急事態というのですか 」


「 チョット待てぃ 」

「 なんでもかんでも魔女様に頼るから、本来の目的である、魔玉や魔法の研究ができなくなって、拠点の移動かもしれない 」

「 事は慎重に進めねばならない 」


「 ダムロンなんかに連絡させたら、余計にややこしくなる 」

 激しく同意する冒険者達。

「 ここは聖女様にお願いするしか 」


 冒険者一同、200人くらいが、聖魔教会におしかけた。

 聖魔教会入口では、神殿騎士が剣を抜き、半泣きで、冒険者を押しとどめている。


「 聖女様を、お前らのような不純物の塊に渡しはしません! 」

「 話を聞けってぇ! 」

「 聖女様は魔女様がギルドにおられるときは、ほぼ毎日冒険者ギルドに一人で来ているから 」

「 いまさらだろう 」


 聖女スワニーが出て来た。

「 あぁその事ね、すっごく良いところ見つけたとか言っていたわよ 」


「 なぁーーーっ! 」

「 ど、何処だぁ 」

「 知らないわよ 」


「 状況だけでも聞いていただけないでしょうか 」


「 いいわよ 」


「 スワニーよ、今どこにいるの 」

「 魔界中層の入り口あたりかなぁ、地名ないし説明できないわ 」

「 何しているの 」

「 拠点作りよ 」


「 それじゃぁ 」「 じゃぁね 」


「 おしまいだぁーーーーっ! 」

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