第144話 5000年前のカプセル

 火山活動により新しくできつつ島の上空、衛星軌道から詳しく島の地表を調査していた、シュミハザは金属のカプセルを発見。


 カプセルの張られているタグには

“ Узорак наномашине за побољшање животне средине 426 ” ( 環境改善ナノマシン サンプル426 )

 と刻印されていた。


「 カプセルを回収しよう 」

「 エンケドラス 行くわよ 」


「 新しくできた島に、何か原因があるかもしれません、調査してきます 」

 常に傍にいて、私を支えてくれている封印の魔女に断りを入れて出発。


 海の上をエンケドラスと飛ぶのは初めて、岸壁から眺める海は好きだけれど、たった二人で海の上にいると不安になる。


 落ちたらどうしよう、私って浮くのかしら。。。

 体重は。。。 計った事は無かった、地底で生活していた時は、朝、仕事帰ってから、寝る前、3回は体重計に乗っていたのに、体重計が無いのよ、きっと浮くくらい軽いはずよ。


 水の上は歩いた事はあるけれど、地底で生活していた頃だと、お風呂で泳いだくらいしか思いつかない、実は泳げないのかも。。。


 シュミハザが頭の中に、位置と方向を教えてくれている。

 海原に煙を上げポツンと浮かんでいるように見える、岩と火山灰だらけの小さな島が観えてきた。


 ペアグリアタイトという金属でできたカプセルは、ひどく凹み、亀裂ができていた。

 カプセルに刻印されている印に気付き、体が無様に震えた。


“ омнибус ” 軍事企業 オムニバス 旧世界の軍事企業である。


「 どうして、こんなものが出てくるのよ! 」

「 おまえらわぁーーーっ! 5000年後の世界まで壊すつもりなのかぁーーーっ! 」

「 生命が生存できない世界を作り出し、それでもなお、世界を壊し続ける気かぁーーっ! 」

 私もこいつらと同じ世界で生きていたのだ。

 悔しくて、情けなくて、辛くて、せつない。


「 カプセルの中に、電子チップがあるようです 」

 シュミハザがカプセルをスキャンして教えてくれた。


「 読みだせる 」

「 バッテリーが切れているようです 」


「 えーと、電気の魔法ね 」

「 海にぶち込めば、大丈夫よねぇ、きっとカプセルに与える影響は弱くなるよねぇ 」


 感電したくないので、エンケドラスに乗り宙に浮かび上がる。

「 О магична суштина која ме покорава, трљај и дрхти и постани муња 」

( 我従えし魔素よ 擦れ震動し稲妻となれ )


 パシューッ 海とか新しくできた島とかに、イナズマがのたうちまわるように走り回り消えた。


“ Узорак наномашине за побољшање животне средине 426 ”

( 環境改善ナノマシン サンプル426 )

“ Пролиферација : 426 ” (増殖 : 426 )

“ Обустава активности : 427 ” (停止 : 427 )

“ Изумирање : 428 ” (消滅 : 428 )


「 読み出せたぁ! 」

 消滅コードを用意してくれていたことに、ほっとした。


 比較的この場所から近い亀魚人のピットケイアン島に移動。

 赤と青の亀魚人を合わせると2000人が暮らしていた面影は無く、集落はBobbit wormに破壊つくされていた。


 島の魔物を食い荒らしている、Bobbit wormが 数十匹はまだ残っている。

「 シュミハザ 電波望遠鏡の照準をBobbit wormに 」

「 消滅コード送信 」


 Bobbit wormは体中に取り込んでいる、サンプル426 型ナノマシンが破裂したことにより、爆発したように粉々に飛び散った。


「 これで、なんとかできる 」


 まずは、急ぎ都市スメデロボ周辺、近隣の岸壁にいる Bobbit worm を処理してからだ。


 海底深く、地下深くまで消滅コードは届かないが、少なくとも地表に存在する、環境改善ナノマシン サンプル426 は消滅させる事ができるはずだ。


 必要に応じて何度でも対応しなければならないかもしれない。


 やっと目途がついた。

 都市スメデロボに戻ろう。


 岸壁から湾岸沿い、都市スメデロボまでの街道、にいおてBobbit wormは存在していた。

 なんという増殖率。


 1匹1匹の攻撃力はそれほどでもないため、駆け付けてくれた人達により、都市はまだ守れているが、このままだとすぐに限界が来る。


 呼びかけを実施。

「 全員、都市スメデロボに戻って下さい! 」

「 Bobbit worm 専用に消滅魔法を開発しました、攻撃を始めます、早く戻って下さい 」


「 シュミハザ! 超巨大な魔法陣を空一杯に書いて 」

「 電波望遠鏡の準備は良いかしら 」

「 Слање кода за изумирање за побољшање животне средине наномашине 426 типа „Изумирање: 428“ 」

( 環境用改善用ナノマシン426タイプの消滅コード送信 “ 消滅 : 428 “ )


 Bobbit wormの体が爆発、30mほどの細長い蟲である、1匹で結構な爆発力がある。

 衛星軌道から惑星の周りをまわりながら、消滅コード送信も考えていたが、ちょっと危険かも。。。


「 魔石にコードを封印して、投げつけるとか。。。 」

「 くふふふふ、商売できるかもね 」


 とりあえず、周辺からBobbit wormは一掃した、後は私なしでも、効率よく処理できる方法ね。


 都市スメデロボに戻ると、皆疲れているはずなのに、お祭り騒ぎで迎えられた。

 ブラディン・ラピセビック 伯爵、カックイイ老紳士って感じだったのに、ボロボロ。


 両脇から支えてもらわないと立っていられないほどのガン泣き、大泣きしながら、駆け付けたくれた、人達に頭を下げて回っている。


 もらい泣きする、男冒険者や男領主。


「 男はぁ! ダメだわ 」とか言って納得しあっている、女領主や女冒険者。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る