第128話 炭焼き集落の男

 学園都市ジィエィノバ


 連邦の代表、エンリコ閣下の政策により 100年ほど前に、作られた都市である。

 各都市バラバラで教育するのではなく、教育拠点の一極集中(人材不足)、学習意欲のある生徒とレベルの高い教育者を一カ所に集め、切磋琢磨させよりレベルを上げる。


 学園都市で学んだ生徒は各都市に戻る、都市間で知り合いができ交流しやすくなる。

 さらに、誘惑に満ちた世界から切り離し、若人を記憶正しく育てる。


 娼婦の館、男娼(だんしょう)の館 をはじめ、夜お酒を出す店なども、学園都市には存在しない。

( 闇営業店があることをエンリコ閣下は知らない )

 店も夜 8:00には閉店としている。

 隔離された山の中につくられた、学生を育てる為だけの理想郷。


 崇高な理念を掲げ、学園都市を作り上げた。

 そして、まぁまぁの成功。

 次の段階に進める時が来た、今期の眼玉政策である。


 魔法学科の設立である、近年漆黒の魔女様の影響により、魔女や魔法使いは悪ではないという、考えが徐々に広まってきている。

 魔法を使える者を育成し、魔獣に対抗できる人材とする。

「 くふふふふふふ 完璧な政策 」

 力のある魔女を育てる事ができれば、魔獣の脅威におびえないで生活できる日がやってくる。


 打ち出したまでは、良かった、大きな壁にぶち当たっていた。

 生徒に誰が魔法を教えるのか。


 ナンダラン筆頭宮廷魔法使、論外、現在行方不明。


 漆黒の魔女様へ正式依頼、 無視

 封印の魔女様へ正式依頼、 無視

 魔女エレナ様へ正式依頼、 無視


 もう一人宛はある、宛はあるのだが、全裸魔法が広がるのは避けたいし、戦闘力については微妙。


 いきなり目玉政策が頓挫。

「 研究費を必要なだけ、研究室も望む規模の物を準備するという条件を付けても相手にしてくれない、何故私の思いを理解してくれないのだぁーーーっ! 」


 学園都市ジィエィノバは、そんなわけで、山奥にある、その山奥からさらに山奥に、大魔獣が出現したという、一報がエンリコ閣下の元に。


 報告を持ってきた者は、山奥の奥に住んでいる、炭焼きが集まっている名も無き村の男であった。


 即座にムアール連邦軍を向かわせた、学園都市に冒険者ギルドは無い、エンターテインメントが無いので、寄り付かないからだ、おかげで治安がすこぶる良い。


 漆黒の魔女様にギルド経由で討伐依頼。


 私はダラムの冒険者ギルドで借りた部屋で、魔玉の解析と魔法の研究に取り組み中。


 国家元首エンリコ閣下からの討伐依頼を受け取った、よくわからない大魔獣が山奥で発見されたからといって、何故に討伐しなければならないのだ。


 人里に降りてきたわけでもなく、この先魔界に戻るかもしれない、人間に何かしたわけでもない、これからするかもしれないけれど、私の知った事では無い。


 断った。


 マイクロ波通信ができる機能を持たせた魔石を、エレナとスワニーにも渡してある。

 シュミハザが衛星軌道から電波を中継する仕組みである。


 封印の魔女、魔女エレナにも依頼が来たそうで、彼女達は無視したようだ、二人は冒険者に所属もしていない。


 私は霧の魔法を研究中なのだ。

 アマンダベル山の山頂付近から見下ろすと、朝方霧がかかっていて幻想的でとっても素敵だった。


 ギルドの酒場、冒険者グループ風の渚の女性冒険者と世間話、ドアをぶち壊すような勢いで開いた。


「 漆黒の魔女様ぁぁーーっ ここにおられませんかぁーーーーーっ! 」


 耳を抑えなきゃいけないほどの、怒鳴り声。

 薄汚れ、涙の跡がくっきりついた顔、3m近い黒い巨漢、体も服も、煤汚れすぎて黒い。


 周りは一斉に私を観た。


 酒場のテーブルも椅子もはじき飛ばし、こっちに向かってくる。

 3人の女冒険者は臨戦態勢、あっさり弾き飛ばし、私の足元に土下座。


「 だじゅけてくだちゃぁい 」それだけ言葉に、大号泣。


 耳栓しないと耐えられないほどの大声。


 マリカが個室に案内しようとしたので、断った、こんな変な男と個室で二人っきり、話をするまえに、殺しているかもしれない。


「 落ち着いて、話してみて 」


「 こ、こ、これを 」

「 み、水ぅ 」


 黒くなるほど汚れたお男は、私の水、風の渚3人分の水、さらに、近くのテーブルの上にあった水までも、がぶ飲み中。


「 水飲んでないで、説明しなさい! 」


 大男の名前は “ ポウボエブ ”

 ボウボエブは炭焼き集落から来た、炭焼き集落は、学園都市ジィエィノバがある、ホッケ山、その奥に、トッテ山、ムッケ山、ヘッケ山、クッテ山、メッテ山、フッテ山が連なっていて、炭焼き集落はクッテ山にある。


 同じような山の名前を聞かされてもまったくわからないけれど、学園都市ジィエィノバから連なった山奥だというのは理解できたのでうなずいておく。


 ポウボエブは、フッテ山で狩をしていた、そのとき、森の巨大な木々ですら、膝程度の高さの大魔獣を見かけた、それで学園都市ジィエィノバまで知らせに。

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