第126話 子供の治療

 ファフニールは気絶しているようだけれど、口を閉じているだけではなく、息を吐くとき鼻から炎を噴き出す、吸う時は噴き出さないけれど。


「 口を開いてないと薬がのませられないし、息を吸うタイミングでないと近づけない 」


 ガサゴソ、ガサゴソ、 木の葉まみれのノミジェイが、聖女スワニーをお姫様抱っこして、あらわれた。


「 びっくりしました、俺は肉体強化魔法も使えるのです 」


 人生初のお姫様抱っこで、スワニーは呆けさらしてしまって使い物にならない。


「 ファフニールの口を開けてくれる 」


 ノミジェイは、逃げた。

 魔女エレナの弦にとらえられた。


「 このまま死ぬのと、口を開けて生き延びるのとどっちがいいかしら 」

「 泣くなぁーーーっ! 」

「 怖くてぇ、ファフニールに近づけましぇーーん 」


 魔女エレナの弦が、動きノミジェイをファフニールの口元に、絶叫、鼻から火柱、また絶叫。


「 大きな声を出すと、起きるわよ 」


 両手で口を押え、顔面崩壊、あっ ちびった。


「 殺すしかないわね 」

「 やります! やりますから! 」

「 弦を緩めて下さい、あ、落ちないように支えて下さい 」


 ノミジェイは服を脱ぎ始め全裸。

「 腐っているって言ったら、やりませんからね 」

「 肉体強化魔法、肉体の強化レベルを上げると、体中の筋肉が膨らみ、服が破けてしまうのです 」


 この男、裸にならないと魔法を使えないのか。。。。


 彼の姿を消す魔法、服や持ち物は消せないので、全裸にならないと使えない。


「 裸にならないと使えない魔法って、少しも、カックイクない、私の美学に反する 」

「 とことん、魔法を愚弄しているようですね 」封印の魔女もあきれている。

「 男、露出狂、スケベ、変態、鬼畜、泣き虫、お漏らし野郎だから、魔法も変態なのかしら 」エレナのコメントである。


 上の歯に両手、下の歯に両足、お尻を突き出し踏ん張る、横幅が3倍くらいに膨らんだ男。

 私達は下から見上げている。

 お尻の穴が。。。。 無性に殴りたい、数日何も食べられない気がする。


「 うおおおおおおお! 」

「 うおおおおおおお! 」

「 す、少しだけ、口が開きましたぁ 」


 少しだけ開いた口に、眠り薬を流し込む。

 爆音のようなイビキが響いている、でも息を吐くときは鼻から火を噴く。


 吹き飛ばされて、どこかに行っていた人たちが、チラホラ戻って来だした。


 何もしていない、ついてきただけ、ダムロンや騎士長プラチャコーンに指示を出す。


「 ラマンダベル山の頂上付近まで、運んでくださる 」


 ついてきた、60人くらいでは、ピクリとも動かず。

 都市シュトラウスで、隠れていた冒険者や軍隊まで動員、千人を超える人手が集まってきている、交代しながら、木や岩などの障害物を排除する人、ファフニールを引きずりながら運ぶ人達。


「 俺に任せろ! 肉体強化魔法が使えるんだぁ! 」

 全裸で活躍している筋肉ムキムキの魔法使い。


「 ねぇ、ノミジェイに魔法使いって名乗るの、やめてもらおう 」


 聖魔教会の司祭達

「 眠り薬が少なくなってきました 」

「 クワンソウの花を集めてください 」


 ファフニールは、ドラゴンの威厳なんてかけらもなく、大イビキをかき、鼻から火を噴きながら爆睡状態。


 このまま、眼が覚めないと良いけど。

 眠り薬が効かなくなったら、今度は痺れ薬の準備もしてある。


 ようやく、スワンベル山の頂上付近に、住かである洞窟まであとわずか。

 人間の子供くらいの大きさ、ドラゴンの子供が2匹、洞窟から這うように出てきて、爆睡している母親を守ろうと、唸り声を上げて威嚇行動。


 翼がおかしな方向に曲がり、鱗がはがれ、矢がささったまま、あまりにも痛々しい姿に、眼がしら熱くなる。


 生命力が強い生物だから、まだ生きているけれど、重症なのは間違い無い。


 毎日魔法新聞のカメラマン ラジョーが叫んでいる


「 これが人のすること! 」

「 報道よ、報道、皆に知らせるのよ! 」


「 エレナ 束縛して 」

 植物の弦により、2匹の子供は親と同様、簀巻き状態。

「 麻痺薬を飲ませて 」


 爆睡していた、ファフニールだったが、子供の泣き声で目覚めた。

 ものすごく暴れる。


「 エレナ、封印の魔女、ファフニールを抑え込んで 」私も重力魔法で押さえつける。

「 眠り薬と麻痺薬を飲ませて 」


 簀巻き状態と薬により体は動かない、子供の周りにいる人間から、守ろうと、すさまじい怒りのオーラを発し、唸り声を上げ、なんとか体を動かそうとするファフニール。


「 漆黒の魔女様、子供に薬が効いてきました 」

 トロントした眼、暴れなくなった。


 子供達は鳴き声で母親に助けを求めている。


「 これからが勝負です、司祭達ヒーラーとしてその身を捧げなさい 」スワニーが叫んでいる。


 片方だけ無事な翼に手を添える

 プリント基板の配線が広がるように、翼の構造が子供の体の中にあるナノマシンから伝わってくる。


「 意識をつなぎます 」


 聖魔教会の司祭達、1匹に4人が張り付き、私から伝わる、翼の構造に合わせ、へし折れ、まがり、砕けた骨の修復を開始。


 ドラゴンの子供達が緑色の淡い色に包まれてゆく。


 少しずつ、少しずつ、潰れた翼が伸びる。

 ファフニールからのものすごい怒りのオーラが急激にしぼんでいく。


 私達が子供を癒そうとしている事に、ファフニールは気づいてくれた。

 唸り声が、とてもやさしい唸り声に代わる。


 子供たちの泣き声が止まった。

 ファフニールをここまで運んだだけの事はあった気がする。


 様子を見守っていた、千人を超える人々は、もうガン泣き。


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