第94話 魔法使いから接触

 都市ダラムと交易都市バッタンバンを結ぶカオサン街道、ダンドラに乗り突き進んでいる、魔玉のラインナップで、水系の魔獣がほぼゼロという事に気付いたのでした。


 そのため、カオサン街道の真ん中あたりにある、やたらと大きい湖に向かっている、ついでにしばらくご無沙汰していた、バッタンバンへも行く予定。


 海にもいきたいけど、かなり遠いため、とりあえず湖にした。


 カオサン街道は、いつの間にか道が綺麗になり、行き交う行商人の馬車が目立つようになっていた、初めて足を踏み入れたときは、道は私の身長くらいの草でおおわれていた。


 湖の湖岸、ワニとか蛇じゃなくて、お魚魔獣がいないのか上から水中の様子を見降ろしながら、素足で歩く、透き通っていて湖底が見える。


 足の裏に触れている水を伝って、周りの様子が脳内に浮かび上がってくる、この辺は水深が浅い事もあり、それほど大きな生き物はいない、3mほどの大きさ、イルカに角がついたような、魔獣が2匹こっちに向かってきている、背びれだけが水面に。


「 シュミハザ、パルス レーザー 」水中ではなく、水面に出て来たのが運の尽きね。

「 Поразите непријатеља испред себе пулсним ласерским топом Шумихаза 」


 シュミハザのパルスレーザは、頭部を撃ち抜いた。


 サイコキネシスを使い、湖岸まで運ぶ、大型のワニが近づいてきたが、エンケドラスのご飯に変わってしまっている。


 魔獣辞典には、水辺の魔物は乗っているが、水の中の魔物はほとんど乗っていない、角イルカもどきも乗っていなかった。


 1mほどの真っ直ぐな角、何かに使えそう、手のひらを充てトレース、魔物の体に含まれるナノマシンから生体構造を読み取る、魔玉の位置を確認し、取り出す。


 水中呼吸みたいな、魔法方程式を期待していたのに、全く別物、空間系の魔法理論、空気を空間魔法で閉じ込め、呼吸をしていた、面白い。


 湖周辺で活動していると、都市ダラムから交易都市バッタンバンへのキャラン隊が通り過ぎていく、警備の護衛もそれほど多くない、この街道も安全になってきたようだ。


 そろそろ、バッタンバンへ行きますか。


 久しぶりにバッタンバンの城門をくぐり、宿を取る。


 バッタンバンの図書館、個室を借り、従魔についての書物を読みあさる、バスチュームの一件で、中途半端になっていたからだ。


 本に書かれている事が、全てではないが、参考になる。


 図書館を出た所で、エンケドラスがわずかに反応、ナノマシンによるトレース、眼には映っていないのに、人がいた、これって光化学迷彩っていうやつ、姿を消している、マナが大きく揺らいでいるので、マナを感じられると何となくわかるが、感じられないほとんどの人には、効果がありそうだ。


 シャドウウルフの闇に溶け込む方法とは違う、姿を消すだけでも、数通りの方法があるのか。

 興味が出て来た。


 悪い感じはしない、魔法使から接触してくるなんて、ちょっとウキウキしている。


 どうも私を監視しているような、出来る事なら、この魔法教えてもらいたいくらい。


 警戒しながら、図書館の前の通りを歩く、観えないからと自信でもあるのか、堂々と後ろを付いて来る。


 美味しそうな、臭い、串焼きを3本購入、1本はエンケドラス、1本は私、1本を後ろにいる人に、「 どうぞ 」って渡す。


 後ろにいた人は、あっさり受け取って、固まった。 姿は消したままだ。


 宿に戻り、夕食。


 茶色のローブを頭からかぶった、男が声をかけて来る


「 ご一緒させてもらってもよろしいですか 」


 その男は、串をテーブルに置いた。


「 どうぞ 」


 フードを外す、肌の色が黒く、耳の尖った男の顔。


「 ダークエルフのノミジェイと申します 」


「 ご依頼したい、事があります 」

「 ギルドを通して下さい 」


「 それはできません、村のおきてがあり、私が相談したことが知られるだけでも、危険なのです、ですが、私の姉の命がかかっているのです、話だけでも聞いてください 」


 なんか必死そう。

 頷く。


 場所を変えたいという。


 夕食を済ませ、宿から出る。


 裏路地に入る。


「 服は消えないのです 」

「 えっ 」


 いきなり服を脱ぎだした、できものだらけのお尻、のけぞりそうだ。


「 服をお願いします 」前をむくなぁーーーっ


 しっかり、プラプラしているのを見てしまった、無視すべきだった、すっごく後悔している。


 男は姿を消し、着ていた物を私に持たせて、前を歩いている。


 人気のない方向に、30分以上歩いている、何処まで歩くのだろう。


 こんなところに、墓地があったんだ。

 お墓の存在なんて忘れていた、ほとんど日が落ちて暗い、怖くて泣いているはずなのだけれど、どうしたのだろう、まったく怖くない。

 女の子らしくないわ。


 石のお墓の横をドンドン奥に、霊廟みたいな石碑で立ち止まり、姿を現す。


「 結界を張ります 」


 さっさと服を着ろ! 目線がヤバイ、違う方向を向いていても、見られる魔法研究しないと、レディの存在意義にかかわりそうだ。


 よほど聞かれたくないような、嫌な予感、聞いたら断れないような。


 服を着てから、透明化の魔法を解くべきだと思う、なんて失礼な男なのだろう。

 2度目なので、ちょっとだけ観察する余裕が、どす黒くて細長い。


 霊廟に荷物を隠していたようだ、話だけなら、服を着ただけでも、鎧とか剣とか装備している、さっさとしろよって思うのは私だけではない気がする。

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