第10話 キャラバンと遭遇

 頭の中には、シュミハザからの画像が写っている、5Kほど先の様子、キャラバン隊というのだろうか。


 馬車が1台、引いているのは馬ではなく、ダンドラと呼ばれる動物、その周りに、武装した人が10人以上。


 間違いなく人間、耳の形と尻尾が気になるところではあるが、おそらくダンドラという動物に乗り、軽装の鎧、武器を持った人が、馬車を取り囲み、隊列を組み進んでいる。


 オークやゴブリンみたいに、いきなり襲ってきたらどうしよう。


 ファーストコンタクトに悩み中。 見た目美少女だから、襲われないということは無い、嫌程経験してきた、ピック・ゴブリンと遭遇したとき、可愛くほほ笑んでウインクまでしたのに、奇声を上げて襲ってきた。 狼なんか、いきなりとびかかってきた。


 身なりを整える、スッピンだけど、プルプルつるつるお肌、問題無いはず。


「 どうしよう 」 あの人たちの前に出る勇気が湧いてこない。

 モタモタしていたら通り過ぎてしまう。


「 んっ 狼? 」 デンジャラス・ハイスピード・ウルフの群れ、3匹じゃない、20 匹もいる、どうやって離れた場所に獲物がいる事をかぎつけるのだろう、考えている間に、ドンドン近づきキャラバンに襲い掛かる、狼、魔獣なので魔浪とでもいうのか。


 綺麗に並んでいた、隊列は一瞬でグチャグチャ、一方的に狼に蹂躙されている。

 助けないと、全滅する。


 距離を取って観察というか、モジモジしていたのが、悔やまれる、森の中を風のように駆け抜け、狼が眼に入る、認識できた 8匹、顔に火をつける、ほんの一瞬だが、突然顔が燃えたら、誰だってパニックになるはずだ。


 キャン、キャン、犬のような悲鳴、ウルフの動きが止まる、何が起こったのか警戒しているのだ、勢いをつけすぎて走り込んだため、止まれない、群れの中に飛び込んでしまった。


 サイコキネシスで、ぶっ飛ばし、地面にたたきつけ、それでも襲ってくる奴は、シュミハザのパルス・レーザで脳天をぶち抜く。


 私が暴れたのは、飛び込んでから、ほんの10sec ほど、ウルフの群れは息絶えていた。

 棒立ちというのか、放心状態のキャラバン隊の人達、 少し間をおいて


「 魔女だーーーっ! 」

「 魔女だーーーっ! 」

「 魔女だーーーっ! 」


 ウルフには、一応応戦しようとした、人達、大声でわめきながら、逃げていく。

 体を食いちぎられた死体が転がっている。


 逃げたのは全員ではない、腰を地面につけている人もいる、それにしても、こんな可愛い美少女を観て逃げる、裸にひん剥いて逆さ刷りにでもしなければ、気が収まらない。


 地面にうずくまっている人に近づく、猫のような耳が気になるけど、30歳くらいのおじさん、一歩一歩、おじさんの顔が引きつる、「 ひっ、ひっ、ひっ 」 泡を噴いて気絶、股の所から染みが広がる。


 沸点が無いほど低い、私の心にも限界というものがある、超美少女を観て失神お漏らし、万死に値する行為だ。


 一人の女性が、叫ぶ 「 お許し下さい! 命だけは! 」 「 へっ 」


 これもナノマシンの影響なのか、耳から入って来る言葉はわからないが、頭の中に言っている事が理解できる、音声多重2か国語を同時に聴いているようだ、会話ができそうなので少しほっとした。


 私は殺しに来たのではなく、助けに来たのだが。


 私は女性を観る、そのとたん、涙が滝のようにアフレ、その人も漏らした、体が痙攣しびくびくと震え、ガチガチと歯が音を立てる。


「 デンジャラス・スピード・ウルフに襲われていたようなので、助けたつもりなのだが。。。。 」 言葉が尻すぼみになる、悪い事でもしたのだろうか。

 頭を振っている、この人も音声多重2か国語の感じに戸惑っている。


 女の人 「 わ、わ、わ、私達を助けに、殺したり、食べたりしないと 」 返事に困るような質問


「 殺さないし、食べないけど。。。 」


 馬車の下に潜り込んでいた、男の人が這い出て来る

「 お許しください 」


「 はぁーっ 」


 その人は、そのままうずくまり泣き出した。


 うめき声をあげ、転がっている人もいる、「 治療してあげたら 」


 女の人は、震える足で、よろよろと動き、瓶に入った液体を傷口にかけている。

 ゲームの世界にある、ポーションなのだろうか。


 逃げた人達が、戻って来た。


 女の人 「 ウルフから助けてくださったのよ、お礼を言いなさい 」


 流石は女性、もう立ち直っている、うずくまっている男の人は、未だに震えている。


 私はローブのフードかぶり、顔を隠し、倒れた馬車の近くにある岩に腰を下ろす。


 早く言葉を覚えなければならない、それまでは、出来るだけ話さないほうが良い。


 女の人がおそるおそる近づいて来る、私は、都市ダラムの行商人、シンディ、あそこにうずくまって、オシッコチビッテ泣いているのが、夫、 泡を噴いて漏らしているのが、護衛に雇った冒険者のリーダーらしい。


 マッシュ村から、クサラ村へ向かう途中に、魔獣に襲われたという。


 女性の言葉から、都市ダラム、冒険者という二つの言葉が気になった。


「 ダラムへは、戻るのか 」

「 はい、クサラ村を経由したら、ダラムまで一直線です 」

「 私は、都市ダラムに用がある、同行させてもらってもかまわないだろうか 」


 女の人は、一瞬呆けた顔をするが、魔女様の思うがままにしてくださいと返事が返ってきた。 一応受け入れられたと判断していいのだろうか。


「 あの、お礼は 」

「 いらない、私が勝手についていくだけだ 」ほっとしたような顔。


 逃げた冒険者は3人、3人とも女性、男3人、一人は泡を噴きお漏らし、残り二人は、怪我をして動けず、すでにポーションで治療済み。


 女冒険者達は、私が殺す気も無く、食べる気も無いと理解すると、早速動きだす。


「 ほら、ほら、馬車起こすよ 」

「 わっせのわっせい! 」 威勢のいい掛け声、未だ男、震えている。


 観ていても仕方が無いので、ウルフの魔玉の取り出しを始める。


 女冒険者 「 あの、魔女様、手伝いましょうか 」

「 頼む 」 ニコリと微笑。

 冒険者達は固まった、外したのか。。。


「 マナムヌット です 」名前を名乗る、他のふたりも スラック、カイバオと名乗った。


 見事な手さばきで、ウルフを解体していく、肉は美味しく、毛皮、尻尾、爪、牙は高く売れるという


「 魔玉以外は好きにしてくれていい 」


 女冒険者達の顔が輝く、「 いいんですか、こりゃ凄い儲けになる 」


 蹲っていた男、シンディさんのご主人が、やっと起き上がり、ウルフの解体をやっている、女冒険者達に声をかける


「 早く出発しないと、また、襲われるかもしれない 」


 スラック 「 魔女様がいるんだ、魔獣はお金だ 」流石に女性。


 それにしても男の冒険者は、いまだに棒立ち。 私からできるだけ離れようとしている。


 2 時間ほどで 20 匹を解体したのは、圧巻だった、私の前には 20 個魔玉がある、世界の箱に収容。


 カイバオ 「 荷物が無いと思ったら、アイテムボックス持ちか、流石に魔女だけのことはある 」 何故か感心している。


 世界の箱という袋、このような機能がある物をアイテムボックスというのか、まさにゲームの世界。


 キャラバンは動きだした、私とシンディさんは、馬車の中、御者は旦那さん、6 人の冒険者はダンドラに乗り、周りを取り囲む。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る