第2話 地上攻撃型人工衛星
地上に出た、身長より高い草、薄暗い森の中、木々の葉の隙間から、わずかな木漏れ日が差し込んでいる、周りの草をかき分ける。
空気が美味しい。
空気にも、臭いと味がある。 感動。
周りの様子が、頭の中に浮かび上がる、森の中だというのしかわからない。
ようやく一息、自分の状態、右わきから腰にかけ3か所の紐で体に巻き付いている、薄ぺライ布だけ、下着もつけていない、ほとんど裸で、夢にまでみた地上にいる。
独身の若い女性としてはどうかと思える格好、それを観る視線も無いのだが。
この状況、パニックにもならないし、冷静でいられる自分自身、どうなんだろう。
地上に満ち溢れているナノマシンと心がつながっている感覚がある。
裸足であるにも関わらす、そう気にならならない、自分の背より高い草をかき分け移動、大木の近くに幹に腰を下ろす、人類は地上に住める世界を取り戻すナノマシンの開発に成功し、成し遂げたようだ。
私は地毒で動けなくなるまで、お父様であるキアヌ・マジョレーゼ博士の助手をしていた、お父様が開発したナノマシンは、生物の細胞を機械組織に置き換える事ができる。
細胞に寄生し遺伝子情報をコピー、ミトコンドリア、染色体に至るまで、機械細胞に置き換える、不治の病地毒に侵された体でも、再生させることができる、あくまでも理論、生命に対しての冒瀆とも言える研究成果、お父様は、部分的利用を考え、研究成果を封印した。
眼が覚めたとき、サンプルを私の体に注入したとおっしゃっていた、だとすると5000年の時をかけ、機械細胞に置き換わっているという事なのだろうか。
金属製のドアをぶち破れるほどの、腕力、1000mもある、筒を登れる体力、そして、この世界にあるナノマシンと同調できる能力、マジかもしれない。
そんなことを考えながら自分の体を確認。
「 えっ 」 22歳自称それなりに美人、少しだけスタイルに自信ありのはずが、膨らむ兆しがありそうな平原とも表現できる胸、お乳が無い! 乳首しかなかった、小さいおしり、毛がまったく生えてない一本筋。
「 何、何、何なの、冗談? 」 目覚めた時よりパニック。 ガビーーーンていうくらい、混乱、 しばらく放心状態。
こんな時は、他の事を考えるべし、気をしっかり持って、腰を下ろしていた、巨木に登る、木登りなど生まれて初めて、すんなりと登れてしまう、周囲の様子はイメージとして頭の中にあるが、どうなっているか、眼で見てみたかったからだ。
枝をつたい、葉をかき分ける、目の前に広がる緑の絨毯のような、景色。
これが夢に描いていた地上、人って綺麗な景色をみるだけで、涙が出ると知った。
日の光が、暖かい。
体に力がみなぎってくる、これって、光を吸収している、紐をほどき、布をはずす、全身で太陽の光を受ける。
どうやら、飢え死にしなくても済みそうだ。
「 きゃっ 」 視線を感じた、手で胸を隠しうずくまる。木の枝の上よく落ちなかったと思う。
「 誰! 」 周りの状態が頭の中に浮かび上がる、植物と小さな昆虫だけ。
ふと空を見上げる、 ずーーーっ、ずーーーーっ、ずーーーーっ と頭の中のイメージが空に向かって伸びていく。
「 いた、人工衛星? 」
人工衛星と回線がつながるというのか、頭の中に、人口衛星が指示を求めているというのが理解できた。
「 状況を報告して 」
「 待機命令の解除を要求します 」「 ???? 」
頭の中に、モニター 文字が打ち出されていく、全人類抹殺計画、 人工衛星は人類抹殺計画を実行するため作られた、地上攻撃型人工衛星シュミハザ 111号、ホールド命令を受け待機中、ホールド解除を要求される。
地表面から地下約 2000mを完全破壊する武器を装備、破壊後環境整備用のナノマシンを散布、自爆するようプログラムされている。
おそらくお父様の研究を奪おうとした組織が、軍事衛星シュムハザにホールド命令を出したため、研究所上空に留まり、自爆することもなく、攻撃命令を待ち続けていた。
「 私の名前は、レイストリン・マジョレーゼ アクセスを求める 」
「 ホールド解除以外の、アクセス拒否 」
「 なら、 父の名前は キアヌ・マジョレーゼ 認識コード R2215878TG 私は彼の娘だ 」
生体ナノマシンの第一人者である父は、大きな影響力を持っていた。
「 アクセスを許可する 」
「 抹殺プログラム消去、私の護衛を命ずる、今後私以外のアクセスを禁止 」
ありえないような、裸の少女、持ち物は、地上攻撃型軍事衛星。
シュミハザ111号、衛星軌道に残っているのは、1機だけのようだ。それもあり単にシュミハザと呼ぶ、大型の衛星本体と、地上監視用の5機の小型衛星を従えている。
軍事衛星なんて詳しくわかるはずもないが、凄い武器であるには間違いない。
シュミハザとリンクすることにより、宇宙から地表を観察できる。
私が知っている大陸とは形が違う。
頭の中に広がる、青と緑の世界、人類が夢見た地上で生きる事、自然が戻ってきているのを確信した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます