第59話新職業解禁です(いや、全部微妙……)
「はぁ、なんだかとんでもないことになっちゃったなぁ……」
小鳥遊先輩の彼氏のフリとか、非モテコミュ障の俺にはキツいと言わざるを得ない。
とはいえ世話になった人が困っているなら、助けてあげるべきだろう。
……ま、その時になって考えればいいか。
「それより今はこのガチャチケットだ」
溜まりに溜まったこの十枚、今日こそ使う時である。
コジロウさん曰く、この街にもいるらしいけど。確か場所はあっちの方だっけ。
言われた辺りを探し回ってようやく見つけた。
あれが掘り出し屋ってやつだな多分。
如何にも怪しい彩度の高い建物の中に入ると、バニースーツを着たこれまた派手なお姉さんが出迎えてくる
「いらっしゃーい。特別なチケットを使ってアイテムを掘り出せますよ。よろしければ引いてって下さいな」
「こんにちは。これだけ引きたいんですが」
「おっ、いいですねー! ではルーレットを回しちゃいますがいいですか? いいですね? それっ! コロコロー!」
お姉さんがルーレットの中に銀色の玉を放る。
10個の透明な球が高速回転しながらポケットに落ちていく。
白、白、赤、赤、白、白、赤、白、白……あっという間に全てのボールはポケットへと収まった。
「はいおめでとうございます。こちら商品でございますよ。お持ち帰り下さいな」
「あ、どうも……」
受け取ったアイテムはどうやら全てカードのようだ。
そこに描かれているのは魔術師や剣士のような職業に見える。だが少し、違う……?
「ひよこ魔術師にジャガイモ剣士……なんだこれ?」
どうやら職業のようだ。転職画面には新たにEX職業とやらが追加されている。
スキルを見るが……なんだろうこの微妙感。普通の職業の方が強くないか?
◆
――ガチャ動画キタコレ!
――うおおおお! ついに! そしていきなりの爆死wwww
――ガチャで職業出すとか正直何考えてるんだって思ったけどな。まぁ大半は初期職業を遥かに超えるゴミなんだけど。
――一応優れている部分がないではないんだよな。☆を重ねれば使えないこともない……らしい。
――しかしレア職業はマジで強いんだよな。ユートさんの動画であまりそういうのは見たくないけど……
――てかガチャ運なさすぎん? 八十連でSSRゼロとかある?
――ってまたスカ。俺なら心折れるわ。本人はあまりよくわかってないみたいだけどな。最後の一枚はどうだ……!
◆
「お! ポケットが虹色に光って……?」
突如、眩い光が天へと伸びていく。
その中から現れたのは一枚のカード、そこには道化師の絵が描かれていた。
「おめでとうございます! 大当たりですよ!」
「何これ? ギャンブラー……?」
なんだかピンと来てないが、どうやらどうやらレアな職業が当たったようである。
「またのお越しをお待ちしております」
バニーガールのお姉さんに見送られ、俺は手に入れた職業の特性やスキルをじっくり眺める。
ふむふむ、このひよこ魔術師とかはどうやら本来の職業よりもスキルが少ないようだ。
代わりにダメージ倍率がちょっとだけ高いが、スキルツリーの奥にある最強クラスのスキルは取れないようになっている。
……ま、普通に考えて劣化版かな。ただスキルの取得は本職とは別で、魔術師で取れなかった微妙スキルをカバー出来るようになっている。
まさにEX版というわけか。基本的には使う価値はなさそうだが、特定のポイントで使えなくはない……と思う。
「さて、お次は本命のギャンブラーだな……なになに? 賭博で生計を立てる者。その身に待つのは大勝か破滅か……テキストは碌なこと書いてないな」
スキルツリーは大きく分けて三つのルート。
ダイスを振って出た目によりダメージや状態異常を与え、外すとデメリットがあるギャンブル系。
演奏スキルのようにパーティメンバーのLUKなどを上昇させる支援系。
スロットを目押しで回し、7が揃えば特大ダメージを与えられる一撃必殺系。
「俺のステータス的にはどれも目指せそうだが……ま、今のところはあまり考えなくても良いか」
「その通りだ! それより呪いをどうにかする方法を聞きに行かねばだろう!」
レイモンドの言葉に頷く。
魔術大会で優勝を決めたのはあくまで一流の魔術師の称号を得て呪いを制御する術を手に入れる為なのだ。
俺は呪術専科、サーシャの元へと向かうのだった。
◆
――いや、ギャンブラーはスルーなんかーい!
――まぁはっきり言ってハズレ職業だし、それを長々と検証されても困るけど。
――うんうん、俺たち的には呪いを使ったスキルの方が気になるしねぇ。
――ギャンブラーは使いにくいスキルばっかりあるからなぁ、ユートさんなら変な使い方を編み出すかもだけど。
――LUKに振ってるから使えないことはないかもね。
――後々の楽しみにしておきますか。
◆
「おお、よく来たなユートくん。魔術大会、見させて貰った。見事な戦いぶりだったよ。一流の魔術師と言っても問題あるまい」
「それじゃあ……」
「うん、約束通り、呪いを利用したスキルを覚えさせてあげようじゃないか」
サーシャのモノクルがきらんと光る。
早速とばかりに呪いの刻まれた俺の腕に触れると、何やら呪文を唱え出す。
「黒の紋、闇の縄、夜の縛……須く反転しその力を呪い受けし者へと還元せよ。呪いは祝福となり新たなる力を生み出すべし……」
それと共に俺の腕が怪しい光を発し始める。
黒から緑、青、紫……同時に刻まれた黒縄がうねりを上げながらその形を変えていく。
蛇に纏わりつかれたようだった形はうねうねと形を変え、俺の掌と向かうように剣や槍を思わせるような直線的な形になっていった。
「よし、完成よ。これで闇を纏う呪いは反転し、被呪者への力と変えるよう変形する。名付けて正呪印!」
腕に刻まれた印を見ると、スキル効果が表示される。
正呪印
スキル発動中は10秒ごとにSPの1%を消費させ、攻撃属性が反転する。
一部のスキルには全く別の効果を発揮するものもある。
現在俺は呪いのせいで強制的に闇属性を付与された状態になっている。
魔法などで特定属性に上書きすればいいが、それができる時ばかりでもない。
地味に困っていたからなぁ。確実に戦略の幅が広がるぞ。
それに一部スキルの仕様が変わるというのも面白そうだ。早速色々試さないとな。
◆
――ほーん、属性反転か。一見地味だけどかなり便利よな。
――いやこれめっっちゃチートでしょ。切り替え可能だからやりたい放題じゃん。固定は辛いけど闇属性も光属性もモンスターは美味いのが多いしさ。
――魔術師には転用できるのか? 出来たら鬼だと思うんだが。
――それは無理でしょ。元々出来なかったみたいだし。それにメテオストームで水属性ダメージが出たらなんか萎えるわ。
――狩場の幅はめちゃくちゃ広がりそうだけどね。基本的には闇と光のモンスターを狩る為のスキルと考えるべきか。
◆
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