第30話仲間の手がかり、次の目的地は(どこでも転職チートすぎぃ!)
「美味いっ!」
「ほっぺたが落ちそうだ!」
「まこと、見事な料理だったぞユートよ!」
そして今日もまたレイモンドの為に料理を作る。
だって作るたびにめっちゃ褒めてくれて、見事なまでに平らげてくれるんだもの。
最初は満腹度の管理とか面倒くさいと思っていたが、今では大して腹も空いてない状態で食べさせている始末である。
なんだかつい、作って上げたくなるんだよなぁ。
◆
――わかるなぁ。ペットとかに餌をねだられたら、食べ過ぎじゃないかと思っててもつい……ね?
――ペットの体調を観れるのは飼い主だけだぞ。
――まぁゲームだし、問題ないとは思うけどな。デブにはなるかもな。
――それはそれで可愛い気がする。私もレイモンドたんを飼いたい!
――てかユートさんレベル上げすぎじゃね? 5までじゃなかったのかよ。
◆
「料理レベル7取得……と」
そして草刈りを続けること三日。
なんだか楽しくてつい、レベル30まで上げてしまった。
草だけでこんなに上げるとか我ながら暇人にも程がある。
変なところ、凝り性なんだよな我ながら。だってレイモンドがやたらと喜んでくれるからさぁ。もっと美味しいものを作ってあげたくなるじゃないか。
「とはいえそろそろ移動したいな」
レイモンドの空腹対策として保存食を作れる料理レベル5まであげたしな。
流石に移動してもいい頃合いだ。
「ふむ……西か東か、どっちに向かう?」
草を刈りながらもある程度探索は行なっていた。
北の方から来て、南方面には山が連なっている。そうなれば自然と向かう先は西か東のいずれかとなるだろう。
西は海、東は砂漠。本来なら海沿いを進むのが正解だろうが……
「なぁレイモンド、もしかして砂漠の方に仲間がいるかもしれないのか?」
「!」
俺の問いにビクッと肩を振るわせる。
「なな、何を言っているのだユートよ。ボクは別にそんな……」
慌てふためくその様は、図星と言っているも同然だった。
「いいよ。別に隠さなくって」
「……ふっ、バレバレであったか。これを見よ」
草の生い茂る中、中央にポツンと立つ樹木を指差す。
見れば枝の一部が人が手を入れたかのようにささくれていた。
「これは仲間が刻んだサインだ。我々の教義は自然と共存しつつもそれに流されないこと。その印として木々や石などの自然物を刻むのだ。枝と反対側に入れられた切り込みはその方角に行ったというメッセージ」
「そうなのか。そういうことなら早く言ってくれよ」
「気付いたのは丁度今しがただ。ここへ長く止まってなければ気づかなかっただろう。ユートのおかげだ。……とはいえ切り口からしてかなり時間が経っている。まだいるかはわからぬから無駄足になるやもしれん。世話になっている身としてはあまり迷惑をかけるわけにもいかんし……わぷっ!」
何やら言いかけたその頭をわしわしと撫でる。
ひとしきりそうした後、不安そうなレイモンドに言う。
「気にしないでくれ。俺も君の家族に会ってみたいしさ」
「ユートぉ……」
うるうると目を潤ませるレイモンド。
全く、子供なのに意外と遠慮しいだよな。
そんな健気なこと言われるとつい協力したくなってしまうじゃないか。
◆
――うっ……いい子や……それにユートさんもいい奴や……心が浄化されていく……
――いや、ただのゲームのイベントだし。……まぁいい話だけどさ!
――でもこれイベント的には結構シビアだよね。レイモンドたんの変化に気づかないと、家族の元へ行けないってことじゃない?
――しかしユートさんよくわかったな。巻き戻して見てても全然気づかないわ。確かにちょっと憂いを帯びた顔をしていたかもしれんが。
――心の機微に聡いんだろうね。さぞかしモテるんだろうなぁ。
◆
「転職だ。剣士に戻してくれ」
「うむ」
淡い光に包まれ、剣士へと転職する。
未知のエリアである砂漠を越えるには一番レベルの高い剣士で行くのが最善だろう。
最近は他職に浮気していたが、久しぶりの剣はやはり馴染む。
「それにしても……こりゃキツそうだな……」
目の前に広がる砂漠を前に俺は呟く。
照りつける日差しを見ているだけでウンザリしそうだ。
とはいえ足を止めるわけにも行かず、俺は自分とレイモンドに帽子を被せて砂漠へと入っていく。
複数持ってた羽帽子がこんなところで役立つとは思わなかったな。
「ユート、魔物だぞ!」
「スコーピオンか」
わかりやすく砂漠の蠍型モンスターだ。
手にしたバーゼラルエッジでスコーピオンに斬り掛かる。
狙うは鎧のような外殻の繋ぎ目、鑑定メガネを使うまでもなく弱点を突くと、緑色の液体を吹き出しながら足が千切れ飛んだ。
「ギィィィィッ!?」
「悪いけど暑いからさっさと終わらせて貰うよ」
ざん! と状態異常もクソもなく普通に倒す。
……ふぅ、それにしてもちょっと動いただけで汗だくだ。
モリガンの呪いのせいで光耐性が落ちているせいもあるだろうな。レイモンドもしんどそうにしている。
「しかし神官さんたちも、よくこんな場所に逃げ込んだものだな……」
「陽の光を嫌うモリガンから逃げる為だろう」
あぁなるほど。夜の女帝モリガンといえど、砂漠なら追ってこれないというわけか。
それにしてもキツい。一歩歩くたびに体力が削られる。
VR故のリアルさをそこまで追求しなくてもいいのになぁ。
「も、もうだめだ。休憩しよう」
「賛成だ……」
砂漠の陰で腰を下ろす。
料理人に転職し、『ウォーター』で水分補給だ。
いやー、料理人のレベルを上げておいてよかったな。そうじゃなかったら今頃カラカラだ。
出てくるモンスターも料理のバフでステータスが上げているからそんなに時間はかからないし、料理人って意外と便利かもな。
◆
――実は料理人て今作ではかなり評価を上げてるんだよね。VRのおかげか恩恵が得やすい。
――あーわかる。必須なフィールドが増えたよな。俺も砂漠エリア踏破しようとしたけど普通に死んだわ。
――変なところ拘りすぎだろ。……いや、そうでもしないと料理人みたいな微妙職は輝く場面がなかったと思うけど。
――料理によるバフも地味に強くなってるよね。使い魔も腹が減るようになったし、パーティ重要も上がってるっぽい。
――なるほど何気に火力上がってると思ったら、料理のせいか。ソロで使えるのはいつでも転職できるからこそだよな。
――料理のバフは支援魔法とは別枠だから、昔は2PCで別垢の料理人とか揃えて本垢のレベル上げしたもんよ。それを一人で出来るとかマジチートすぎる。
◆
またまたギフトをいただきました! 本当にありがとうございます!
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