第12話アイテム整理(独り占めとかチートや!)


家に帰った俺はさっさと宿題と食事を終え、ゲームにログインする。

今日は本当に色々あったが、それでも俺の頭の片隅にはゲームのことがあった。

俺ってば根っからのゲーマーだったんだなぁ。久しぶりにプレイして、爆発してしまったようである。


「えーとパスワードはKAMIYA1212……と」


十二月十二日は父の命日だ。こうしてパスワードに入れておき、少しでも父のことを忘れないようにしているのである。

……って俺、もしかしてファザコンの気があったりするのだろうか。

ゲーム世界にダイブすると、目の前は宿屋のベッドだった。


「さて、まずは街の探索をしますか」


ベッドから飛び起きて階段を降り、外へ。

来る時は早朝だったからプレイヤーを見なかったが、今の時間なら結構いるに違いない。

そんなことを考えながら外へ出るが……


「……あれ? 他のプレイヤーは?」


道を行くのはNPCキャラクターばかりで、プレイヤーらしき姿は見当たらない。

うーん、もしかしてこのゲーム、過疎ゲーなのかな?



――ユートさん♪───O(≧∇≦)O────♪

――うpおつ。そして相変わらず配信垂れ流しwww

――昨日は途中で寝落ちしたんだよな。あらすじよろ。

――デッドベアーをソロで撃破。街に着いてログアウト。今に至る。

――てか奈落の街って地味に初めて見るかも。貴重な資料になりそうですな。

――これだけ人がいないオルオン初めて見たわ。まじ誰もいねぇのなw

――まだどの廃人も他のスタート地点のある大陸から出れてないもんなー。とりあえず今の所、見た目は普通の街っぽいけど



「とりあえず、まずは収集品を売りに行かないとな」


ゲーム開始からほぼずっと狩りを続けていたからな。所持量が限界である。

あとは武器防具やポーションなんかも買いたい。

サーガだと後半は店売り武具は殆ど使い物にならないが、プレイを始めたばかりだと安価で使いやすい装備もあるのだ。

さて、どう探したもんかと考えていると、おじさんが声をかけてきた。


「やぁ君、買取屋を探しているのかい? それなら北の中央商会に行くといいよ」


何故俺が考えていることがわかったのだろうか。

これが最新のAIというものか。俺の独り言に反応したと。……コミュ障としてはちょっと引く。


「あ、ありがとうございます……」

「どういたしまして。困った時はお互い様さ」


おじさんは朗らかに笑いながら去っていく。

気を取り直して北へ向かうと、中央商会とやらはすぐに見つかった。

どうやら武器屋、防具屋、道具屋、買取屋が一つにまとまっているようだ。

まずは買取屋に向かい、カウンターのお姉さんに声をかける。


「こんにちは。売りたいんですが」

「はーい、買取ですね。品物を見せて頂けますか?」

「少々お待ちを……よいしょ」


手に入れた収集品をどさどさと並べていく。


「これとこれとこれと……」


最初は笑顔だったお姉さんは徐々に顔を引きつらせ始めた。


「これもこれもこれも……」


あっという間にテーブルの置き場がなくなり、仕方なく地面に置こうとして止められた。


「ちょ、ちょちょ、ちょっとお待ちを! ……えー、中々とんでもない量ですので、まずはこれだけの買取ということでお願いしても宜しいでしょうか? お詫びとして多少ですが色は付けさせていただきますのでっ!」

「はぁ……わかりました」


ちなみに買取金額は大体120,000ギルだった。まだゲーム始めたばかりで金の価値はよく分からんが、とりあえずこれが手持ちってことかな。

それにしてもゲームなのに変な制限かかっているんだなぁ。

こりゃアイテム拾いすぎると、売る時にちょっと面倒かもしれないぞ。



――何? 買取制限なんてシステムあったのこのゲーム。

――普通のプレイヤーこんなに貯まる前に売るだろうからなぁ。つか色が付きすぎでしょ。本来なら20,000ギルがいいとこじゃない?

――廃人情報だけど、ある程度まとめ売りをするとおまけが付くってさ。それを繰り返すたびに買取屋がレベルアップしていって、以降は幾らでも買い取れるようになるらしいよ。

――知ってる知ってる。でもそれ確か10回くらいが限度なんだよな。もう他の大陸じゃそんなおまけは受け取れないって。

――この大陸にいるのはユートさんだけだから、おまけは独り占めってわけか。うらやましす。



手に入れた金を持ってまずは道具屋へ。

売られていたのはポーション各種と鑑定メガネ、街へ戻る為の帰還の羽というアイテムだ。

とりあえず鑑定メガネを買って、未鑑定帽子を鑑定。

羽帽子か……いいね。AGIが上がるのは有用だ。とりあえず持っておくか。軽いし。

次は武器屋。

売られていたのは店売りらしく、安いものから高価な武器が並んでいた。


「これ、気になるな」


手に取ったのはバーゼラルエッジというナイフ。

こいつはATKが高いだけでなく、毒、睡眠、混乱、魅了などなど様々な状態異常付与効果が付いている。

確率にもよるが、これめちゃくちゃ欲しいぞ。

高速で連撃を叩き込むスタイルである俺にとっては強敵に挑む際にあると便利な武器である。

でも300,000ギルもするからなぁ。高価過ぎて今は買えない。

……ま、現状ではそこまで困っているわけでもないし、保留だな。

そして防具屋。

本命はここだ。何せ今の俺が装備しているのは最初から所持していた初心者装備とさっき鑑定した羽帽子のみ。

防御力的にはほぼ裸である。


「何かいいアイテムは……お! ダークマント? いいのがあるじゃないか」


高いDEF値に加え、回避値とAGI、更にLUKまで上がるときた。

ただ値段は110,000ギル。これを買うと所持金はほぼゼロだな……ま、買っちゃうか。


「これ下さい」

「あいよ。運が良かったねお客さん。こいつは一点物なんだ。大事に使ってくれよな!」

「? そうなんですか? ありがとうございます」


ダークマントを手渡されると、リストから確かに消滅する。

一点物とか言ってたけど……そんなのあるのか。てことはさっきのバーゼラルエッジもそうかもな。これは他のプレイヤーに買われる前に買っておかねば。



――ちょ!? バーゼラルエッジにダークマントだとぉぉぉ!? そんなレアアイテム売ってるのかよ!?

――どの店にも早い者勝ちで一点物があるってのは聞いていたが……奈落ではこんなモン売ってるのか。洒落にならんでしょ。

――そんなにすごいの?

――どっちも人気ボスのドロップアイテム。しかも低確率。

――うげっ! それを店売りしてるのか……運営エグいな。奈落スタートにはご褒美もちゃんとあるってわけだ。

――ズルくね? ちょっと奈落行ってくる!

――その後、彼を見た者は誰もいない……


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