第四章 静寂 2

 声が聞こえる

 誰かの声だ

「やはり、同じようにはいかなかったんでしょうか」

 誰かの声

 僕の知らない誰かの声

「さあな、あいつはかなり特殊な反応を見せていたからな」

 白い服の人が何かを話している

 僕のことらしい

「遺伝子的にはほぼ同等のはずなんですが」

「ラストレシピエント、か、あれから成功したのはこの二体だけだったな」

「はい、他の検体は胚の形成段階から生命の可能性は限りなく0に近く、分裂期以上に発展はしませんでした」

 何だか難しい話をしている

「あいつはかなり順調のようだが」

「ええ、ですがこちらの方はほとんど反応しません」

 こちら、は僕だ

 あいつ、はやっぱりあいつのことかな

「そうか、もう少し様子を見よう、このまま処分、というわけにもいかないからな」

 ショブン?

 ショブンってなんだろう

「なぜ、同じ構成であるのにも関わらず反応がこうも違うのでしょうかね」

「こればっかりは分からん」

 白い人が手元にあった紙をめくっている

「フィロリス、フィロリス=シルバーハート、か」

 白い人が可笑しそうな顔をしている。

「誰がつけたんだこの名前」

「ラストレシピエントです」

「フィロリス、『世界を二度作り直した』神か、大層な名前だ」

 フィロリス

 僕の名前だ

 フィロリス=シルバーハート

 あの人がそう呼んでくれた

 お前の名前はフィロリス、いい名前だろう、神様の名前だよ

 フィロリス

 だからそれが僕の名前

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