第三章 シーグル、グレン

第三章 シーグル、グレン 1

「皆さんはここに残っていてください、私が行ってきます」

「俺も行くぜ」

 思いつめ立ち上がったエルフィンにフィロリスが続ける。

「私も行きます」

 ルーイも続ける。

「あなた方には関係のない話です、これは私の問題なんですから」

「関係ないだと?」

 バンッ

 エルフィンの体がフィロリスの拳でぐらつく。それでもあまりダメージは与えていないようだ。

「あんたらが起こしたことに、自分たちの都合で命を創り出していることに、俺が関係ないっていうのかよ!」

「いいでしょう、来なさい、いいえ、来てください、あなたの未来のためにも」

 未来のため、とエルフィンは言い切った。

 アステリスクとのつながりを断つ、そして自らの運命を自分で決めるための。

「ルーイは、レインを頼む」

「私も行きますよ」

 ぴょんとフィロリスの左肩に飛び乗ったルーイ。

「師匠が弟子の世話を見なくてどうするんですか」

 その顔には笑顔が浮かんでいる。

 ルーイは、長く付き合っている人間がイグアナであることを忘れてしまいそうになるほど感情が豊かだ。表情も人間とさほど変わりない、これでどうして他の人間が彼を嫌がったり恐れたりするのかがフィロリスには理解できなった。

 それもフィロリスが生まれてから研究所で過ごし、外に出ることを許されていなかったからかもしれない。もしくはフィロリスの生まれ持った感覚かもしれない。

 フィロリスもそれにあわせるようにふっと口元も緩ませた。

「いい人と出会いましたね、フィロリス」

 エルフィンが優しさと懐かしさを混ぜた顔をして言った。

「行きましょう」

 三人が階段を下りるとき、森の異変に気がついたのかレインが急ぎ足で上がってくるところとはちあわせた。

「森が…」

「分かっています、レインはここに残っていてください」

「でも」

 レインの肩に手を置くフィロリス。

「大丈夫だ、レイン、すぐに戻ってくる」

「はい」

 素直にうなずくレイン。

「レイン」

「なんですか?」

「もし……いいえ、何でもありません、そのペンダント、なくしてはいけませんよ」

「えっ?」

「分かりましたね?」

「あ、はい…」

 エルフィンの真剣な眼差しに、これ以上レインは何も言うことが出来なかった。

 その間にも森のざわめきは増している、明らかに相当数の侵入者に対する警告が入り混じっている。

 森にすむ動物の叫び声も聞こえる。

 レインを教会に残し、三人は中央の広場に出た。

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