第13話 思い出話

さやかが落ち着いたところで一旦雑談タイムといく。各々の職場のこと、私は大学のこと、先程会った桃のこと。桃の存在はさやかとみくりは既知の情報らしい。

眺と眠人2人も居ないので話を続けるか迷いどころだ。

「そうだ、せっかくだし。とわさんいい事教えてあげようか?」

次に会話の舵を取ったのはパンを切り終わり予想通りディップソースを作っている浮羽和だ。

「え、なんですなんです?」

彼はにっこりと微笑み昔を懐かしむようにまつ毛を伏せる。

まつ毛を伏せ続けながら「あの2人が居ると話すの嫌がりそうだからね。本当2週間くらい前のことだねぇ」と話を切り出した。




いつも通り僕とみくりさんとこまださやかと眺くんの4人だった。いつも通り4人楽しくわちゃわちゃ会話してて。眺くんはこのお店を見つけてくれたのが最近だけど女性陣とは昔からの付き合いだから正直僕自身の店の居心地は最高だった。

昼は仕事し、帰って家事をしたら不定期でこっち。僕には不定期位がほどよかった。

ある日、眺くんがうちに通い始めて2週間位の時に彼の職場の生徒の話をし始めてくれた。

自分のプライベートを話してくれて少しは信用されたかなと安心したのをよく覚えてる。

「僕の職場に永和さんっていう生徒がいるんだけどさ、何故か僕にだけ冷たいんだよね」

最初聞いた時はツンデレさんなのかな。とか清楚でお淑やかな人なのかな。と思っていた。

話をどんどん聞いてくとすぐ勘違いに気付いた。

多分その子は面白い子なのだろう。

なぜ眺くんに冷たいのかまでは分からないけど悪い子じゃないのはよく分かる。

「ながめんさーその子になにかしちゃったとかじゃない?いくら教師だってさ生徒全員に好かれる訳じゃないじゃんー」

明日仕事が休みなのをいい事に程よく酔ってるさぁちゃんが眺くんにだる絡みし始めた。

「なんかしたかなぁーーー、、ってさやかさんちょっと酔いすぎだよ」

眺くんはさぁちゃんの立場を理解しつつ程よい距離感を保つ。男性の鏡だろう。

さぁちゃんは眺くんのことをよく尊敬している。「いつも私の話をちゃんと聞いてくれる」と。

さぁちゃんはおしゃべりさんだ。色々な話を僕達にしてくれる。たまに度が過ぎだ話題センスをしているがしっかり彼女の性格を理解しているのでその位では嫌いにならない。ただ抑制はするが。

「ながめくんさぁ、そのとわ、ちゃん?って子の事どう思ってるのぉ?」

「どう思ってるかぁ、、、難しいなぁ…。んー、、そうだなぁ」

腕を組み一生懸命考えている。

多分眺くんにとってその子は生徒の1人として大切な存在なのだろう。

眺くんはきっとスポーツか何かをしている。

あまりにも綺麗な筋肉質な腕をしている。

どうやったらあんなに綺麗な筋肉がつくのか美術解剖学を知ってる身としては気になるばかりだ。

「とわさんは、そうだね、ちょっと距離が近い生徒かな」

と微笑みながら言っていた眺くん。

その子の事を話した1週間後には例の件の話になっていた。

「とわさんがさ、僕と同じ夢を見たって言うんだよ。そんなことあると思う?」

「へぇー、どんな夢なのぉ??」

みくりさんは明日も仕事らしいのでアルコールではなく僕が作ったココアをずっと飲んでいる。

「美しい長髪を持った女性が深海で助けを求めてるんだよ。とわさんが言うには夢を見た時刻も何もかも全てが僕とリンクしているらしい。全く不思議な話だよ」

話を聞く分にはその子が言っている話は信ぴょう性が高いと感じた。これは本当に僕の勘だ。

「へぇー」

本日珍しく休みの眠人くゆはカシスオレンジを飲んでいる。いつもは静かに話を聞いてるが今日は相槌多め。ちょっと酔っている証拠だ。

「なんかただただ、偶然が重なっただけにも聞こえるけどねぇー、たしかにそんな事が起こったら気になるは気になるけど」

「僕ほそんな深く考えないけどね」

「夢かあ」

本当に不思議な話ではあるがその子は調べたくて仕方がないんだろう。

僕から見たら眺くんは本当に気になるって言うわけでは無さそうだった。

「なんかただ同じ夢を見ただけ、だけど言葉にしたら簡単だけど事的には珍しい話なんじゃないの?」

どう思うか、感じるかは人それぞれだ。

こまださやかが静かにシャンディガフを頼んできた。まずはお酒でテンション上がるが酔い始めるとどんどん静かに落ち着き始める。

医療系の職種をやっている人だからこそ毎日不安とストレスは過大だろう。この場所くらいガス抜きとして使って欲しい。

シャンディガフはビールとジンジャーエールを混ぜるだけの簡単なビアカクテルの代表だ。

「いやいや眠人さん、そう簡単に言うけどね僕と彼女の立場的にそんな裏で親密な関係に易々となれないんですよ」

あくまで彼らは生徒と先生の関係性なのだ。そこら辺は難しいだろう。

「禁断の関係ってことぉ?!?すみません、黙ります」

「生徒と先生ってえっちだよね、、」

「もうさやかお前黙れよ」

この位緩くていいのだ。僕もにっこりしてしまう。

「眺くん、その子ここに連れてきなよ」

「えぇ、?とわさんを??それこそ親密すぎない?」

シャンディガフを作り終えグラスを洗い拭く。

シェイカーなど様々な道具もついでに洗ってしまう。この感じ今日はまだまだいるパターンだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

同じ夢を見る僕らは 永和 @towa1023

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る