第12話 別名

さやかは桃ハイ。

みくりは赤のサングリア。

眠人はカルーアを浮羽和にミルク割りにしてもらっている。

私はBARという未知の世界が楽しすぎて浮羽和におすすめのカクテルを貰った。名前はピニャコラーダと言っていた気がする。ココナッツとパインの酸味が絶妙でとてつもなく美味だ。

浮羽和はモヒートを飲んでいる。

飲む姿さえも美しくて軽く見とれていたが気持ちは抑えた。

眠人が議事録係を担っている。

スマホで録音をしながら軽く紙とペンを用意していた。

まず口を開いたのはさやかだ。

「さてさて、ね、!はじめよっか!」

正直私は今回の議題について何か動いたかと言うと何もしてない。

今回主に頑張ってくれたのはみくりと眠人だ。

「一応、さやちゃんに頼まれた通り夢に関する記事を調べたけど…どれも今回とは繋がりがなさそうだよ…」

しゅんってしてしまってるみくりんが可愛すぎる…。あ、いやいや一生懸命探してくれたんだからそんなことを思ってはダメだ。

「そかそか…、、でも、、!新聞に取り上げられなくても…!!」

さやかは眠そうな眠人に目をやる。

眠人は警視庁に勤務しており、そうそう時間を取れる人物ではない。

突然Re:LL(W)を抜け出すこともあるそう。

それでも、Re:LL(W)が好きで時間をできるだけ合わせて来てくれるそう。

浮羽和さんがにこやかに話してくれた。

案外可愛いところがある。

「残念だけど…」

これは警視庁様も該当しそうな事例がなかった様子だ。

そもそも夢を見ただけで警察に通報する人なんか居ないだろう。

これは幸先が悪い。

さやかが重たい雰囲気を変えようと「そういえば…!」と話を切りかえてくれた。

「今日診察したおっさんが言ってたんだけど!診察中なんだから口動かさないでくれって話なんだけど、それが以外にも興味深い話でさ!」

と、さやかが話を始めようとしたところで眠人の席からコール音が鳴った。

「げっ、、、多分呼び出し…ちょっと行ってくるわ、、多分帰れんと思うけど」

眠人はお財布を取りだしお札を数枚置いてく。

彼はこの数分で2、3杯飲んでいる。

彼のどこをどう見れば酔ってると分かるだろうか。いつも通りケロッとしている。

「あらら、眠人くんファイトだ!」

浮羽和が持っていたグラスを高々に掲げてガッツポーズに近しいポーズをしている。

「浮羽和さん、ありがとういっちょ頑張ってくるわ」

「くゆ、ふぁいとぉー!」

「眠人頑張ってこい、事件がお前を呼んでるよ」

「みくりんありがとう、さやかうるせぇ、、ありがとな」

さやかが「うへへぇ!」と意味が分からない笑い声をあげていたが聞かなかったことにする。

「眠人くん頑張って!」

「ん、とわさんもありがとう」

眠人くんとはまだちゃんと話したことは無い。

いつも誰かを通じての会話だったが互いに眠人くん、とわさん、という軽い会話位は成り立つレベルになった。

「おまわりさんは忙しいねぇー」

みくりが軽く「うんうん」と会釈を打ちつつ浮羽和に新たなお酒を作ってもらってる。

「そういえばさぁちゃん、さっき言いかけたことなんだったの?」

「あ、そそ、ライオンってさ百獣の王って言うじゃん!じゃあ、シーラカンスはなんて言うと思う?」

シーラカンスは昔にほとんど絶滅してしまったが今も尚姿形が変わってないで有名な魚だ。

「んー、、あっ!わかった!深海の化石!」

「あーとわしゃ惜しい」

百獣の王を例に出すということは別名を答えさせたいのだろう。

正直深海の化石以外もう何も浮かばない。

「みくりねぇ、実は知ってるんだぁー、えへへ」

あれ、もしやこれは常識説がある。

段々と心に焦りが出始め一生懸命考えるが何も浮かばない。

「タイムアップ!答えは………浮羽和さん!どぞっ!」

「生きてる化石っすよ」

両手を三角形に広げ机に置いている。指先しかついておらずフォームがあまりにも美しかった。

みくりにお酒を作り終え一旦休憩なのだろう。多分一息ついたらお酒のつまみのディップソースでも作り始めるだろう。さっき小さな声で「そういやパンがあったな…」と呟いていた。

「さすが!!!!!」

さやかは思いっきり拍手をする。私もつられて思いっきり拍手をしてしまった。

なるほど、これは常識なのか。今度勉強しよう。

「でも、シーラカンスって結構有名じゃん?」

おいさやかこの言葉はだいぶ刺さるぞ?

「あ、とわしゃごめんね?!!!違うよ?!?!!!!なんか、1部では有名みたいな!知らなくても生きてけれるから大丈夫よ!」

謎に励まされて余計惨めに思えてきた。

「さぁちゃん、、、フォローされる方が辛い、、、」

「ごめ、、とわしゃ、、、、」

「みくりもたまたま知ってただけだよ〜逆にライオンとシーラカンス以外なんも知らないよ?」

さやかは嬉しそうに目を輝かせた。

「じゃあさ俊足の狩人は?」

「えー、チーターとかじゃない?」

「なんで!!!知ってんじゃん!!!!!」

みくりにあっさり答えられてしまってさやかはしょんぼりしてしまった。

それでもめげずにさやかは口を開き続けます。

「じゃあクリオネ!!!」

「流氷の天使っすね」

すかさず浮羽和が答える。回答がとても早かった。今のはクイズ番組でも活躍する勢いだろう。

「シャチ!」

「海の殺し屋」

「密林の王者!!」

「トラ、トラ」

「オランウータァン!!!!」

「森の賢者…とかじゃないっけ」

これは見てる側としてはとっても面白い。

さやかと浮羽和は向き合いになりどちらの知識の方が上かを争っている。

さやかはすっかり撃沈し、両腕を枕にして突っ伏してる。

ちなみにさっきの話で私が知ってたのはシャチのみだった。終始「へぇーーーー」って言うことばかりだった。

これはさやかの惨敗だろう。

「これなら浮羽和さんに勝てたと思ったのに……」

浮羽和は何事もなかったかのようにフランスパンを切り始めた。ディップソースにつけるものだろうか。さっきハンバーグを食べたばかりだがおつまみはまた別腹だ。

「まだまだっすね、自分も浅い知識ですけどまだこまださやかさんに劣るレベルではなかったですわ」

基本的に自分が知ってる事は浮羽和も知ってると思った方が懸命だろう。

突っ伏してるさやかを「そーゆう時もある」と慰める。すぐさやかは起き上がり抱きついてきた。

「とわしゃぁぁぁぁああああああんんん!!!!!!!!!!!!」

「はいはい、すごいすごい、さぁちゃんかしこいねぇーーーー」

「うん、たーたんかしこい、、」

「たーたんはえらいえらい」

「たーたんはえらい、、」

「たーたんはつよいつよい」

「たーたんはつよい、、、、、」

「強いたーたんはこんなことにも屈しないよね?」

「くっしない、、、」

みくりと浮羽和は同時に「洗脳で草」と呟く。

この2人も息がピッタリで大好きな組み合わせだ。

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